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海外需給【牛肉/豪州】畜産の情報 2026年1月号

25年第3四半期の牛肉生産量は過去最高、と畜頭数も約半世紀ぶりの高水準

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25年11月若齢牛価格は再び900セント台まで上昇、今後も強含み予測
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、直近2025年11月27日時点で1キログラム当たり893豪セント(932円:1豪ドル=104.36円(注1))と、その前週に記録した今年最高値909豪セント(949円)から若干下落したものの、高値で推移している(図1)。
 現地報道によると、主要肉用牛生産地域であるクイーンズランド(QLD)州およびニューサウスウェールズ(NSW)州北部の広範囲の降雨で牧草の生育状況が改善されたことから、牧草肥育農家による若齢牛の購買意欲が高まっているとされている。また、今後の見通しについて、現地アナリストによると、市場における若齢牛の供給不足感は継続することから、年末まで価格の下落圧力がかかる可能性は低いと見ている。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年11月末TTS相場。
 



 
牛肉生産量は四半期ベースで過去最高、と畜頭数も過去最高水準
 豪州統計局(ABS)が2025年11月に公表した統計によると、25年7〜9月期の牛と畜頭数は1978年以来最多となる248万頭(前年同期比10.4%増)、牛肉生産量は過去最高の75万9300トン(同9.9%増)を記録した(図2)。現地アナリストは、穀物肥育牛の出荷増が、枝肉重量の小さい繁殖雌牛や干ばつが発生した豪州南部地域(ビクトリア〈VIC〉州など)由来の若齢牛の出荷増を相殺し、枝肉重量を安定させたことが記録更新の要因と分析している。繁殖雌牛の出荷増は、雌牛と畜割合(FSR)の推移にも現れている(図3)。
 




 
 一方、食肉加工処理の主要地域であるQLD州、NSW州、VIC州の食肉処理施設における25年第3四半期の稼働率は、干ばつにより牛群淘汰とうたが大きく増加した年を含む過去10年間の平均稼働率と同等となっており、今後干ばつが長期化した場合などの処理能力不足が懸念されている。
 
米国の関税措置の変更による影響は不透明、日本向け輸出は好調
 豪州農林水産省(DAFF)によると、2025年10月の牛肉輸出量は13万9286トン(前年同月比7.1%増)とかなりの程度増加し、7月の15万435トンに次ぐ過去2番目の数量となった(表)。
 



 
 10月の輸出量を輸出先別に見ると、米国向けは4万1572トン(同8.3%減)とかなりの程度減少したが、依然として輸出先の約30%を占めている。現地報道によると、11月15日に米国のトランプ大統領が署名した相互関税範囲の修正により、豪州を含む各国の相互関税が撤廃された一方で、米国市場で競合するブラジル産牛肉は40%の追加関税分が残ることから、豪州産牛肉の競争優位性は維持されるとしていた(注2)。しかし、その翌週の11月21日には、ブラジル産牛肉に課されていた追加関税の即時撤廃が発表された。ブラジルは25年末までは複数国枠の枠外税率である26.4%の関税が課せられるものの、26年1月からは6万5005トンの低関税枠が再び利用可能となる。現地の輸出事業者によると、26年の低関税枠の利用を想定して事前に米国の保税倉庫に輸送・保管されているブラジル産牛肉が、今回の関税撤廃を契機に25年中に市場に放出されることで、短期的に豪州産牛肉の対米輸出は減速する可能性があるとされている。
 また、日本向けは2万6883トン(同79.0%増)と大幅に増加した。豪州産牛肉が米国産との価格競争で優位となっていることに加え、MLAによると、日本の牛肉在庫水準はここ数カ月間減少傾向にあり、国内の供給不足と旺盛な牛肉需要が相まって、豪州産牛肉の輸出を後押ししているとされている。
 
(注2)海外情報「米国の相互関税見直しを肉用牛業界は歓迎、牛肉輸出の更なる追い風か(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_004237.html)をご参照ください。
 
(調査情報部 国際調査グループ)