本調査では、量販店における和牛の販売のための取り組みについて回答を得たので紹介する。
量販店における和牛の販売のための取り組み(複数回答)については、1位(最多)が同率で「ハレの日需要の訴求」および「焼肉セット(複数部位、畜種)販売」(89.5%)、3位が同率で「低価格部位や切り落としを増やす」および「特売の実施」(78.9%)などとなった(コラム−図1)。
1位の「ハレの日需要の訴求」の具体的なイベント(複数回答)の内訳を見ると、「年末年始」(100.0%)が最も多く、次いで「ゴールデンウイーク」および「クリスマス」(82.4%)、「父の日」および「お盆」(76.5%)、「母の日」(70.6%)などとなった。また、5位となった「等級を指定する」の等級(複数回答)の内訳を見ると、「5等級」(58.3%)が最も多く、次いで「4等級」(50.0%)、「3等級」(16.7%)となった。
また、量販店が実施している和牛の販売拡大の取り組みについて、販売数量は「数量増加」、「数量維持」、販売単価は「単価上昇」、「単価維持」、「単価低下」として実施方針をスコア化した。散布図(コラム−図2)の上に寄るほど販売単価の上昇を、右に寄るほど販売数量の増加を意図した取り組みとなる。これによると、1位(最多)の「ハレの日需要の訴求」および「焼肉セット(複数部位、畜種)販売」は、ともに販売数量の増加と販売単価の上昇の両方に期待する取り組みと位置付けられる。前回調査と比較して、販売数量の分散が小さくなっている一方、販売単価の維持または販売単価の低下を意図する傾向が強まっているように見受けられ、物価の上昇による消費者の生活防衛意識の高まりに対応しながら販売している状況がうかがえる。
和牛の販売に対する消費者のニーズや課題については、以下の回答があった。
・和牛の販売強化を目的に価格据え置きで4等級から5等級へ取扱いランクを上げ、売上拡大を果たしたが、利益面では苦戦をしている。
・価値訴求により展開したい黒毛和牛が、消費者の実質賃金が伸び悩んでいるため、価格訴求性を求められている。
・経産和牛も含め、切り落としや安価な部位の特売により頻度品に近い位置付けになってきている。
・低単価ニーズのため、切り落とし主体の売場となり、ハレの日需要の訴求やチラシ掲載を高額部位と一緒に実施してもその傾向は変わらない。
・クーポンや割引企画での販売構成が増えており、利益が取りづらい環境が続いているため、通常価格での販売率を増やす取り組みを実施。
・高額商品は見た目の華やかさが必要なのか、賞味期限延長のスキンパックや安価な味付け商品は販売数が伸び切らない。
・高齢者世帯には支持されているが、若年層には価格が高いため、なかなか手にとってもらえない。
・和牛肉需要拡大緊急対策事業を活用する時には販売価格を引き下げ、消費者の購買意欲を高めている。やはり、販売価格を引き下げた時には効果があるので、普段から消費者が購買頻度を増やせる価格で和牛を販売したい。
・ロースなど高級部位の販売が難しくなってきている。ウデなど従来スライス中心の部位について焼肉スペック化を進めている。
・高級品については、ハレの日などでしか売れない状況なので、今後は豚肉などをうまく組み入れたセット商品を強化する。1頭買いにより、年間を通して売りづらい部位を切り落とし用で販売。
・顧客の赤身志向は変わらず、サーロイン、バラの需要が減少している。