株式会社ビーフソムリエが目指すのは、「みえるおいしさ」を起点に、畜産の価値づくりそのものをアップデートしていくことです。B-som診断による「血清タンパク質情報×AI予測×SaaS(注2)」サービスは、肥育牛の生体情報を科学的に読み解き、肥育状態や枝肉品質、さらには嗜好(しこう)特性・品質特性の総合的価値概念である「おいしさ」を可視化して、現場の意思決定に結び付けるための基盤になります。
現在、国内の肥育現場において、血清採取・前処理の標準化、質量分析からAI予測までの解析基盤、農家向けダッシュボードを一体として提供し、飼養管理や出荷判断を「経験と勘」から「データに基づく再現可能な判断」へ移行させています。これにより、日々の給餌設計や環境管理、出荷適期の見極めといった現場の工夫が、最終的にどのような品質や味わいとして結実しているのかを、客観的に説明できるようになります。生産者が積み重ねてきた努力が「見える化」されることは、現場の改善を加速させるだけでなく、その価値を正しく伝えるための新しい言語をつくることでもあります。
今後は、B-som診断のサービスで蓄積されたデータを元にAIモデルを継続的に高度化し、産地・品種・季節・飼養条件の違いを含めた「おいしさの多様性」をより精緻に表現できるようにしていきます。従来の「サシが多いか赤身か」といった二軸の評価だけでなく、香り、うま味、食感といった複雑な風味を含む多面的な価値へ拡張することで、消費者にとっては選ぶ楽しさを、生産者にとっては差別化と適正な価値還元をもたらす市場環境の形成を目指します。
「みえるおいしさ」は単なるワードではなく、生産現場の努力を正しく伝え、産地ブランドの価値を育て、消費者の理解を広げるための共通言語です。B-som診断の展開を通じて、この共通言語を社会に実装し、畜産の高付加価値化と持続可能性を同時に前進させる―それが私たちの今後の展望です。
(注2)Software as a Serviceの略。クラウド上のソフトウェアをインターネット経由で利用するサービスであり、ソフトウェアのインストールを必要とせず、ウェブブラウザやアプリを通じて利用するもの。