畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 世界に羽ばたく日本のナチュラルチーズ!

話題(2) 畜産の情報 2026年2月号

世界に羽ばたく日本のナチュラルチーズ!

印刷ページ
酪農乳業部 生乳課
(回答フォームに遷移します。)

1 ワールド・チーズ・アワード(欧州)

 2025年11月13〜15日、スイスの首都ベルンにおいて、ワールド・チーズ・アワード(World Cheese Awards:WCA)が開催された。
 WCAは、欧州の都市で開催される世界最大級のチーズの国際コンテストで、1988年に英国で始まり、毎年、世界各国からチーズが出品される。
 第37回目となる2025年の出品数は、世界46カ国から5244品と過去最大規模となった。日本からは40工房48品が出品され、22品が表彰(注1)されるなど、チーズの本場の欧州においても高い評価を受けている。
 また、22品のうち3品がゴールド賞を獲得し、このうち養沢ヤギ牧場チーズ工房(東京都)が出品した「養沢ヤギチーズ」と、チーズ工房乳ぃーずの物語。(広島県)が出品した「雪子」の2品がスーパーゴールド賞を受賞した(写真1、2)。さらに「養沢ヤギチーズ」は、この大会で日本のチーズ最高順位である14位となり、BEST JAPANESE CHEESE賞に選ばれた。
 
(注1) 表彰結果詳細については、NPO法人チーズプロフェッショナル協会ウェブサイト(https://cheese-fun.jp/world/wca2025/#awards)をご参照ください。
 



 
 WCAでは、一次審査、二次審査を経た後、最終審査により最優秀賞1品が決定される(図1)。
 一次審査は、全出品チーズを110のテーブルにランダムに割り振り、世界46カ国から選抜された著名なチーズメーカーの職員、小売業者、バイヤー、フードライターなどの審査員2〜3人が1チームになり、「ビジュアル、ボディ&テクスチャー、アロマ、風味と口当たり」を評価する。テーブルごとにゴールド賞、シルバー賞、ブロンズ賞を選定(各受賞数に制限はない)し、1テーブル内のゴールド賞の中から、1品だけスーパーゴールド賞を選定する。
 二次審査では、WCA主催者が国やキャリアを基準にチーズ業界のエキスパートから選出した特別審査員14人が、110品のスーパーゴールド賞の中からそれぞれ1品のチーズを最終審査へと推薦する。
 最終審査では、14人の特別審査員が、それぞれ推薦したチーズについてその良さをプレゼンテーションし、特別審査員同士による協議を経て最優秀賞1品が決定される。
 



 
 日本から出品されたチーズについて、WCAの特別審査員から、次のようなコメントがあった。
 
○Joost van Nijinatten氏(オランダ)
 養沢ヤギチーズを別の審査員に勧められて試食したが、その時は日本のチーズとは知らなかった。試してみると、テクスチャー(食感)や外皮の美しさ、シルキーでクリーミーな質感、酸味の絶妙なバランスにより、とても華やかな印象があって衝撃を受けた。日本のチーズはまだ広く知られていないかもしれないが、この品質はもっと高く評価されるべきである。今回は、チャンピオンには惜しくも届かなかったが、新鮮さが重要なチーズにとって、日本からの距離は大きなハンデだった。その中でこの結果は見事であるし、また食べたいので、ぜひ欧州でも販売してほしい。
 
○Paul Thomas氏(ドイツ)
 日本のチーズはすでに世界水準に達しており、海外の模倣から脱して、次の段階へ進んでいる。これから求められるのは、日本ならではの感性や文化を活かした独自性の追求である。セオリーを踏まえながらも、日本らしさを織り交ぜたチーズづくりに移行するフェーズに入っている。今後、ますます面白いチーズが生まれてくることを期待している。

2 ワールド・チャンピオンシップ・チーズ・コンテスト(米国)

 2024年3月5〜7日、米国ウィスコンシン州において、ワールド・チャンピオンシップ・チーズ・コンテスト(World Championship Cheese Contest:WCCC)が開催された。
 WCCCは、ウィスコンシン州チーズメーカー協会の主催で1957年に米国で始まり、隔年で開催される。2024年のコンテストには、世界25カ国から3302品が出品されるなど、こちらも規模の大きい国際チーズコンテストである。
 日本から28工房34品が出品され、川瀬チーズ工房(北海道)の「長万部ラクレット」、一般社団法人葛巻町畜産開発公社くずまき高原牧場(岩手県)の「プチ・カチョカヴァロ」、加藤牧場バッフィ(埼玉県)の「加藤牧場濃厚カマンベール」の3品がゴールド賞を受賞するなど、日本のチーズは、欧州だけでなく米国においても高い評価を得ている(写真3〜5)。






 

3 モンディアル・デュ・フロマージュ(フランス)

 2025年9月14〜15日、フランス・トゥールにおいて、モンディアル・デュ・フロマージュ(Mondial du Fromage:MF)が開催された。
 MFは、2013年にフランスで始まり、隔年で開催される。2025年には、世界60カ国から1985品が出品され、こちらも世界の数多くの国々からさまざまチーズが出品される国際チーズコンテストとなっている。日本からは6工房6品が出品され、このうちチーズ工房【千】(千葉県)の「鼓動」と大田原チーズステーション(栃木県)の「大田原」がゴールド賞を受賞した(写真6、7)。他にもCHEESE STAND(東京都)の「東京セミハードチーズ」がシルバー賞を、TOYO Cheese Factory(北海道)の「age 07 Hard」がブロンズ賞を受賞するなど、日本のチーズが高い評価を得ていることがうかがえる。
 なお、MFに出品されたチーズは、ギルド・クラブ・ジャポン(注2)の選考を経たものとなっている。
 
(注2)国際的な非営利団体の日本支部。乳業関係の幅広い関係者が連携し、情報交換及び交流により、チーズを取り巻く課題の解決を目的としている。




4 最近の受賞動向

 海外チーズコンテストへの出品は、国内で開催されるチーズコンテストにおいて優秀な成績を収めたチーズが選ばれることが主流となっている。
 代表的な国産チーズコンテストには、特定非営利活動法人チーズプロフェッショナル協会(以下「CPA」という)主催のジャパン・チーズ・アワード、そして一般社団法人中央酪農会議主催のALL JAPANナチュラルチーズコンテストなどがある。
 これらの日本国内で行われるコンテストなどを経て海外のコンテストに出品された国産チーズは、安定的に上位入賞を果たしている(表1)。


 

5 期待される日本のナチュラルチーズ

 欧米のコンテストに出品される国産チーズは、はるかに遠い距離やそれに伴うさまざまな不利な条件の中でも、高い評価を受けている。これは、チーズを製造する方々の日々の研さんの賜物であり、当機構としても、チーズ製造の技術研修会、国内チーズコンテストの開催、国際チーズコンテストへの参加など国産チーズの品質向上・ブランド化に向けた取り組みに対し支援してまいりたい。
 また、今後の展望として、CPA会長の坂上氏は「日本のチーズは、国際コンテストへの本格的な出品が始まると多くの上位入賞があり、存在感を高めてきた。当初は技術力が評価の中心であったが、近年では日本ならではの繊細さや旨みが理解され、高品質で希少性の高いチーズとしての評価が定着している。世界各国から輸入を望むチーズ専門家の声も多く、今後はアジアにとどまらず、欧米のハイエンド市場への展開も大いに期待される」と語った。
 チーズの国内生産量および1人当たり消費量は、ここ20年で増加傾向にあるものの、消費の多くは外国産で賄われている(図2、3)。こうした中で、国内で製造されるチーズのうち国産生乳を使用したチーズの占める割合は、少しずつではあるが伸びており、これを裏付けるように国内のチーズ工房の数は年々増加し、2024年には347カ所と、20年前の3倍以上となっている(表2)。







 
 
 今回紹介したチーズは、わが国の優れたナチュラルチーズの一例であり、国内では多彩なチーズが製造されている。これは近年増加しているチーズ工房などの日々の努力の成果によるものであり、製造されたチーズは、これらの工房や専門店などの店頭はもちろんのこと、ECサイトやオンラインショップなどでも簡単に購入することができる。国内外のコンテストの受賞チーズだけでなく、全国各地のさまざまな国産ナチュラルチーズを手にとり、味わうことで、日本の酪農・乳業を応援していただければ幸いである。