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海外情報 フランス 畜産の情報 2026年3月号

フランスにおける酪農経営安定に向けた取り組みと乳製品の生産動向

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調査情報部
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【要約】

 フランス酪農家戸数および生乳生産量は近年、減少傾向で推移しており、経営安定が課題となっている。
 酪農経営安定に向けた取り組みとして、政策面ではEUの共通農業政策による財政的な支援に加え、生産コストを反映した価格交渉などを義務付けるエガリム法によるサプライチェーン内で公平な価格が支払われる仕組みづくりを図っている。また、乳業や酪農家は、より高い乳価を得るため、原産地呼称制度によるブランド化や、消費者へのコスト負担を訴求する取り組みなどを行っている。
 今後の乳製品生産は、生乳生産の増産余地が限られるため、高付加化価値製品へ注力する傾向が強まるとみられる。

1 はじめに

 フランスは伝統的な乳製品の主要生産国であり、国際市場でも一定のシェアを占める。このため国際需給を見る上で、同国の動向を把握することは重要となっている。
 生乳生産に目を向けると、同国の生産量は日本の約3倍であるものの、1戸当たり乳牛飼養頭数(75頭〈2022年〉)は、わが国(65頭)と大きな差はなく、この点で他地域の主要輸出国の米国(337頭)、豪州(314頭)やニュージーランド(449頭)とは異なる(注1)。また、近年話題となった、農畜産物の生産コストを反映した価格交渉などを義務付けるエガリム法(後述)により、生産者の収入確保に取り組むなど、EU内でも農業保護に積極的な国の一つである。
 一方で、同国の酪農家戸数および生乳生産量は近年減少傾向で推移しており、経営安定が課題となっている。
 そこで本稿では、フランスの酪農経営安定に向けた取り組みについて紹介するとともに、今後の乳製品の生産動向について報告する。
 なお、本文中の為替相場は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」2026年1月末TTS相場の1ユーロ=184.86円を使用した。
 
(注1)本項における1戸当たり乳牛飼養頭数は、国際酪農連盟日本国内委員会「世界の酪農状況」から算出。

2 フランスの生乳生産動向

(1)フランスの位置付け

〜世界有数のチーズ、バターの輸出国〜
 世界最大の生乳生産地域であるEUにおいて、フランスはドイツに次ぐ第2位の生乳生産国であり、域内生産量の約6分の1を占める。
 2023年、フランスは世界のチーズ生産量の8%、バター生産量の7%を占めた。また、高い輸出力を誇り、生乳生産量の約4割が輸出に仕向けられている。輸出余力を評価するため、生乳生産量を人口で除した国民一人当たりの生乳生産量を試算すると、ニュージーランド、オランダなどに次ぐ第5位となる。(図1)。
 

(2)生乳生産の推移

ア 酪農家戸数
〜戸数は減少傾向で推移、大規模化が進む〜
 フランスではほぼ全地域で一定の生乳生産が行われているが、特に生産シェアが高いのは北西部地域であり、最大の生産地域であるブルターニュは同国の生乳生産量の約5分の1を占める。また、隣接するノルマンディーとペイ・ド・ラ・ロワール地方を加えると、その生産シェアは5割を超える(図2)。
 
 
 
 酪農家戸数は、多くの先進国と同様、減少傾向で推移する一方で規模拡大が進んでいる。欧州農業会計データネットワーク(EU FADN)によると、酪農家戸数は2004年の5万8000戸から23年までに4割減少し、3万4000戸となった。規模拡大は進み、1戸当たり乳牛飼養頭数は04年の43頭から23年の75頭に増加している。また、23年には生乳販売収入(名目ベース)10万ユーロ(1848万6000円)以上の農家が全体の9割を占めるに至った。インフレによる名目額の増加もあるが、これは04年の4割から大幅な増加となる(図3)。
 

 
イ 生乳集荷量
〜2014年以降、減少傾向で推移〜
 フランスの2001年以降の生乳集荷量は、220億から250億リットルの範囲で推移している。14年に246億リットルを記録して以降、減少傾向で推移しており、23年および24年は230億リットルを下回った(図4)。
 

 
 フランスでは酪農経営の大規模化が進むとともに、1頭当たり乳量も増加傾向で推移してきたが、2021年以降その伸びが鈍化している。一方で離農による乳牛頭数の減少は進んだ(図5)。これが生乳集荷量減少の要因であり、背景には、環境規制の厳格化、酪農家の高齢化による担い手の減少などがある。
 

3 国際情勢に伴う経営状況の変化

〜物価高で記録的な乳価となるも、生産コストも上昇〜
 近年の物価高は、フランスの酪農経営においてもコスト上昇という結果をもたらした。生乳生産コストは、2019年の1リットル当たり36.7セント(68円)から、22年に同43.5セント(80円)まで約2割増加し、23年もさらに前年比6.2%増となる同46.2セント(85円)となった。しかしながら乳価も上昇したため、22年の所得(収入から生産コストを除いたもの、家族労働費を含む)は、近年で最高となる同15.6セント(29円)となった(図6)。乳価の上昇は、乳製品の国際価格の上昇などによるものである。ただし、所得は22年以降、コスト増が収入増を上回っているため、減少傾向にある。
 
 
 
 フランスでは濃厚飼料の大半を自給し、飼料生産に合わせた季節生産を行いつつ、生乳のほとんどを加工に仕向けている。飲用向けの約9割が超高温瞬間殺菌(UHT)という特徴もある。これに対して日本は、飲用向けが約5割であり、一定数の飼料を諸外国から輸入し給餌しているという違いがある。
 参考までに日本とフランスの酪農経営収支(20年〈物価高前〉および23年〈物価高後、最新数値〉を図7で比較した。両国では、生産コストのうち飼料費に大きな差が見られる。これはフランスの高い飼料自給率によるものである。所得を比較すると、20年は生乳1キログラム当たりの所得に大きな差は見られない。23年は、フランスでは、乳価が上昇したことにより、20年と比較して所得は大幅に増加している。一方、日本は物価高などの影響で飼料費が大幅に増加したことや、乳価改定が年当初ではなく途中で行われたことから、年間を通した所得としては大幅に減少した。なお、20年の公費による支援水準に日仏間で大きな差は見られない。
 次章では、このような状況にあるフランスで実施されている酪農経営安定に向けた施策や取り組みについて紹介する。

 

4 政府や業界団体などによる経営安定への取り組み

(1)政策的な支援

 フランス政府が実施している農家の経営安定のための主な取り組みは、EUの共通農業政策(CAP)を通じた所得支援とエガリム法による生産者への支払い価格の公正化に大別できる。
 
ア 共通農業政策(CAP)
 CAPは、1)農業者の所得を保障するための「所得・価格政策」(第1の柱)、2)各加盟国が農業部門の構造改革や農業環境施策などの農村振興プログラムを実施する「農村振興政策」(第2の柱)−の2本の柱から成る(図8)。CAPの基本枠組みはEU加盟27カ国共通となっているが、詳細な運用は、加盟国が自らの農業・農村課題に対応する上で必要な措置を特定した「CAP戦略計画」で決定されるため、支援額などは加盟国間で異なる。
 
 
 
 図6で生産コストと収益の推移を示したが、補助金による収入に注目して整理したものが図9である。収益全体に占める補助金の割合は約1割である。このことは、補助金による収入が経営安定に一定の役割を果たしていることも示している。ただし、インフレが進む中(注2)においても支援水準に変更はなく、絶対額が変わっていないため、収益および所得に占める補助金の割合は低下傾向にある(図9)。
 なお、EUでは、2028年以降のCAPの提案が欧州委員会からなされ、加盟国や欧州議会で審議が行われている。農業団体はインフレ分を考慮した農業予算の増額を求めていたが、25年12月現在の提案では予算額の積み増しは行われておらず、農業団体の納得は得られていない。
 
(注2)ここ最近のフランスのインフレ率は、21年2.1%、22年5.9%、23年5.7%、24年2.3%と、24年以外は日本を上回っている(図10)。
 
 


 
 また、CAPの課題として、中小規模生産者への的確な支援が挙げられる。現行のCAPでは、再分配所得支持という仕組みが設定されており、加盟国は直接支払い予算のうち、10%以上を中小規模の農家への所得支援として予算措置することが義務付けられている。具体的な例としてフランスでは、農地が100ヘクタール以下の中小規模農家に対して、最大52ヘクタール分の追加支給を行っている。
 図11は、2024年のCAPでの交付額と受給者数の累積分布である。実線は実績を、点線は交付額と受給者数の割合が一致する場合(例えば交付額の50%を交付対象者の50%が受給)をそれぞれ示している。下位75%の受給者が受け取った補助金は総額の約4割にとどまる一方、上位10%の受給者は総額の3分の1以上を受給した。
 
 
 
 フランスのみならずEU全体として、農家の高齢化と世代交代への対応が課題となっており、若手農業者や新規就農者への支援強化が方針として掲げられている。これらの者は中小規模農家であることも多い。このため、28年からの次期CAPでは、直接支払いに累進的な減額や上限を設け、余剰となった資金を若手、小規模経営、条件不利地域の支援に再配分することなどが提案されている。
 
イ エガリム法
(ア) エガリム法の立法経緯と内容
 フランスの食品小売市場は、大手小売業者6者が90%以上のシェアを占める寡占市場であり、付加価値が農業者に適正に還元されていないとの認識から、小売業者などの間の価格競争を規制すべきとの議論が開始された。
 その結果、2018年に農業者と取引相手との適正な取引関係(原価割れ販売の禁止の強化など)を定めた「農業および食料分野における商業関係の均衡ならびに健康で持続可能で誰もがアクセスできる食料のための法律」(エガリム〈EGalim〉法)が公布された(図12)。21年にエガリム法を改善する「農家の報酬保護のための法」(エガリムU法)が公布され、価格交渉の際の生産コスト指標の作成や書面契約締結の義務化などが定められた。23年には供給側の保護をさらに強化(交渉が期限までに不成立の場合、供給業者が取引関係の終了を通知できるなど)するため、エガリムV法が公布されている。
 これら一連の立法措置は、サプライチェーン上の生産者の立場を強化し、生産者への公平かつ適正な価格の支払い確保を目的としたものである。
 
 
(イ) エガリム法による効果はあったのか
 エガリム法が公布されて以降の乳価の推移を見ると、2018年11月の1キログラム当たり36.7セント(68円)から、25年11月に同49.7セント(92円)となり、上昇傾向で推移している。ただし、この乳価の上昇におけるエガリム法の寄与度の測定は難しいというのが、一般的な見解である。
 図13で、フランスとEU主要4生乳生産国の12年以降の乳価の推移を比較した。18年11月のエガリム法導入以降の乳価を比較すると、フランスだけでなく、他の主要生産国も同様に上昇傾向で推移している。そのため、乳価の上昇についてはEU全体の傾向と見ることもできる。
 

 
 また、エガリム法の施行とほぼ同時期に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID−19)による食品サプライチェーンへの影響や、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギーコストなどの大幅増による記録的なインフレの影響は無視できず、乳価の上昇をこれらと切り離して考えることは難しい。こうした状況を踏まえ、25年2月にフランス議会の経済委員会が公表したエガリムU法の影響に関する調査では、「同法が、掲げた目標達成に寄与したかどうかを断定的に述べることは不可能」と結論付けている。
 ただし、酪農関係団体からは、従来のように大手小売り・流通企業が価格を決めるような状況を変え、価値の配分が適切に行われるようになったとエガリム法を評価する声が聞かれる。また、同団体への聞き取りによると、エガリム法には、乳価上昇効果よりも、生産コストを指標とすることで、乳価に下げ圧力がかかった際の下落幅を抑える効果が期待できるという見方も示された。折しも本稿執筆時点の26年1月では乳製品の国際価格が下落基調となっており、これに伴い今後のEUの乳価下落を多くの関係者が予測している。仮に乳価が下落した場合にフランスの乳価が他国と比較してどう推移するのか、エガリム法の効果を測定する機会となる可能性がある。
 

(2)乳業や生産者の取り組み

 フランスでは、経営安定のために乳価をいかに高くするか、という取り組みがなされている。以下にその概要を紹介する。
 
ア 「原産地呼称保護」制度
 EU産チーズが評価される点として、その特性や品質が挙げられるが、それらの一部には地理的表示(GI:Geographical Indication)制度により保証されているものがある。GI制度の代表的なものには、規則(EU)1151/2012に基づく原産地呼称保護(PDO)と地理的表示保護(PGI)がある(表1)。GI制度で保護を受けるためには、生産者団体などが各加盟国の政府を通じて欧州委員会に申請し、欧州委員会により要件に適合していると認証される必要がある。
 
 
 この制度は、製品の評判が模倣品との混同によって希薄化されるのを防ぎ、製品差別化を図り、ブランド価値を高めるものである。結果として、生産者の収入の保護にも寄与する。
 EUのGI制度は1992年から開始されているが、フランスでは独自の原産地呼称統制制度(Appellation d’Origine Contrôlée、AOC)を1935年から実施していることもあり、多数のフランス産PDO、PGI登録製品がある。26年1月時点で、EUで登録されている製品数約3600品目のうち、フランス産は約800品目を占める。
 このうちフランス産の乳製品(牛のほかヤギ、羊由来の乳製品を含む)は、63のチーズ、バター、クリームが登録されており(24年)、うち57がコンテ、ルブロションなどのチーズである。24年は、牛由来生乳の13%がこれらGI乳製品に仕向けられた。
 地理的表示の認証を受けたチーズ(GIチーズ)の販売数量は増加傾向で推移しており、24年のPDOチーズ(牛由来、28製品)の販売数量は17万7000トンと、14年比6.7%増となった。また、PGIチーズ(牛由来、10製品)の24年の販売数量は3万2000トンと、17年比31.7%増となっている。
 地理的表示の認証を受けたチーズ(GIチーズ)生乳生産の経済性は、おおむね従来品を上回るとされている。フランス政府が22年に公表した調査結果では、産地によってばらつきがあるものの、GIチーズ向け生乳を生産する経営の労働単位当たりの税引き前純利益は、非GIチーズのそれよりも9000ユーロ(166万3740円)高いと結論付けている(図14)。
 
 
 
 また、フランス畜産研究所(IDELE)による別の研究では、09年から17年のデータを用い、酪農経営を次の三つのカテゴリーに分類し、その利益性を比較した。カテゴリーは、1)GI製品向け生乳や有機生乳など付加価値を重視する経営(付加価値重視型)、2)乳量より生産コスト低減を重視する経営(コスト重視型)、3)高コストでも乳量を重視する経営(生産量重視型)である。研究結果は、それぞれの経営型の利益性の優位さは年によってばらつきがあるものの、付加価値重視型の推移は安定していた(図15)。特に乳価が急落した15〜16年時(注3)にこの傾向が顕著に見られた。これは、GI制度による製品差別化がコモディティ化を抑制し、生産者に経済的安定をもたらす効果的な手段であると見ることもできる。
 
(注3)2015年の生乳生産量の割当制度(クォータ制度)の廃止による供給過剰に国際乳製品市場の低迷なども相まって、15年から16年の乳価は生産コストを下回る水準まで低迷した。
 
 
 
 今回、PDOチーズの一つであるマロワール(Maroilles)の産地を訪問する機会を得た。マロワールはフランス北部で生産され、24年の販売数量は、地元からの根強い需要などを反映し、4500トンと14年比9.0%の伸びを見せている(図16、写真1)。マロワール向けに生乳を供給する酪農家は、通常乳価にプラスされるプレミアムが比較的安定していることを評価する一方で、放牧要件や飼料要件をクリアするための生産コスト増を課題として挙げた。放牧要件や飼料要件を満たすハードルは、所有する農地の状況や従来から放牧を取り入れていたかなどの乳牛の飼養方法に左右されるとのことであった。
 


 
イ 消費者へのコスト負担の訴求の取り組み
 生産コストの負担を消費者へ訴求する取り組みとして、生産者主導で立ち上げたブランド「C’est qui le patron?(誰がボス?)」がある。
 このブランドは2015年から16年にかけての乳価大幅下落時に設立された。ブランドを運営する酪農協同組合サン・ドニ・ド・ロテル(LSDH)は、一般消費者を組合員として迎え入れ、乳価についてアンケートを実施した。アンケートの手法は、まず1リットルの牛乳の標準価格を設定し、「産地はどこがよいか」、「飼料はGMO(遺伝子組み換え)でもよいか」、「飼料の産地はどこがよいか」、「酪農家が手にする報酬はどのくらいがよいか」などの設問に解答する。選択肢を選ぶと、その条件に見合った分だけ価格が上昇する。「飼料はフランス産」など厳しい条件を選ぶと価格は高くなる。消費者はネット画面上で自分の選んだ選択肢が価格をいくら上昇させるかを確認しながら、条件を選んで投票した。
 結果として現在まで「乳牛は最低4カ月間放牧」、「牧草は産地から100キロメートル以内で生産」、「飼料はGMOが0.9%未満でパーム油不使用」が採用され、パッケージにはその条件と生産者への支払い乳価など小売価格を構成する内訳が明記されている(図17)。
 これはフランス人の消費行動ともマッチし、また草の根プロモーション活動も功を奏し、市場平均よりも高価であったが、販売量は急速に拡大した。24年時点で、設立10年未満ながらフランス国内で販売される全牛乳の約3%を占める規模に成長している。
 FNPLが公表した24年の企業別乳価において、フランス平均1リットル当たり43.5セント(80円)に対し、LSDHの平均の乳価は48.0セント(89円)と1割上回り、最も高かった。現在、このブランドの取り扱いは飲用乳だけでなくヨーグルトやバター、さらに卵や野菜などにも拡大している。
 



 
 
ウ 有機生乳の生産
 高付加価値化の方法として、有機生乳の取り組みも挙げられる。EUは欧州グリーンディールの中で2030年までに有機農業面積を全体の25%まで引き上げる目標を掲げており、フランスも27年までに同面積18%までの引き上げを目指している。
 こうした政策的な支援と環境に親和的な有機農業への需要増が相まって、有機生乳は慣行生乳よりも高い乳価を得てきた。有機生乳への価格プレミアは、22年まではおおむね1キログラム当たり10セント(18円)以上を維持してきた。しかしながら、コロナ禍後の物価高が経済に影響を与え始めた22年以降、慣行生乳乳価の上昇幅が有機生乳のそれを大幅に上回ったため、価格プレミアは大幅に減少し、直近3年間では、プレミアは同2セント(4円)程度まで落ち込んでいる(図18)。これは物価高により消費者の節約志向が強まり、有機製品への需要が減少したことが要因であると考えられる。
 
 
 
 乳価動向を反映して、有機生乳の全体に占める生産量の割合は、14年の約2%から22年にまで堅調に推移し約6%まで増加したものの、22年以降は減速している(図19)。
 

5 今後の乳製品生産動向の見通し

〜生乳の増産余地が限られる中、高付加価値製品に注力する傾向〜
 フランス国立酪農産業連盟(FNIL)がフランス銀行に委託して行われた2025年調査では、乳製品企業の財務データを分析し、食品企業全体と比較している。報告書は、乳製品企業の付加価値率が食品企業全体のそれを下回っていることを指摘した。20年以降、乳製品企業の付加価値率は、食品企業全体の値を約4〜5ポイント下回って推移している(図20)。
 

 
 営業総利益率についても同様に、乳製品企業は食品企業全体を下回って推移した。(図21)。これは、乳製品企業の原料(生乳)調達範囲がほかの食品企業よりも限られており、原料となる生乳の不作や価格上昇の影響を受けやすいことも影響していると考えられる。


 
 このような状況と、生乳が減産傾向で推移し今後も環境規制などで増産が見込み難い状況であることから、乳製品企業は高単価な高付加価値製品に注力する傾向が見られる(注4)
 ここ5年間のフランスの牛乳・乳製品生産量の推移を見ると、チーズやカゼインが堅調に推移している一方で、飲用乳や粉乳(脱脂粉乳および全粉乳)は減産傾向である(表2)。2024年は、生乳生産量が00年比で3.3%減となった一方で、チーズは同0.2%増、カゼインは25.0%増となった。カゼインやホエイたんぱく濃縮物は、ここ数年のEUや米国、アジアにおける機能性乳製品の需要拡大に伴い、注力されている代表的な乳製品である。
 すでに高たんぱく市場は競争が激化しており、生乳由来製品は豆類由来製品などの代替品とも市場シェアを争っている。一方で、生産には資本集約的な分画技術と多額の投資が必要となる。こうした状況下で、乳製品企業は、一層の差別化や付加価値向上を図るため、模索を続けているとみられる。
 
(注4)この傾向は、EU全体の傾向として、欧州委員会が2025年12月に公表したEUの35年までの中期見通しでも言及されている。詳細は、海外情報「欧州委員会の中期需給見通し、生乳は横ばい、牛肉・豚肉は減産と予測(EU)「https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_004260.html」を参照ください。
 
 

6 おわりに

 3の図6で示した生産コストと収益の推移からは、フランスの酪農経営は飼料自給率が高いため、生産コストの変動幅を一定程度抑えることが可能である一方で、収益に関しては、輸出割合が高いことから国際市場の影響などを受けやすいということが分かる。そのため、いかに乳価を高くするかという取り組みが重要であり、高付加価値製品への注力や、コモディティ商品に関しての消費者へのコスト負担の訴求などさまざまな取り組みが行われている。
 前述の通り、足元の乳製品国際価格の下落基調に伴って、今後、EUの乳価下落が予測されている。仮にそのような事態となった場合、フランスのこれまで紹介してきた取り組みがどのような効果をもたらすのか、他国の動向を踏まえつつフランス乳価の推移を今後も注視していきたい。
 
前田 昌宏 (JETROブリュッセル)