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海外情報 EU 畜産の情報 2026年7月号

拡大するEU向け牛肉輸出の成長要因と課題〜課題となる関連規制の概要と動向〜

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調査情報部

【要約】

  2025年のEU向け日本産牛肉輸出額は、前年から約3割増となる76億円と大幅に増加した。成長要因として、和牛肉特有の味・風味や各加盟国での認知度の向上などが考えられる。一方、ロイン系以外の部位のプロモーションやカッティング・料理など取扱方法の教育が今後取り組むべき課題の一つである。
 また、EU向け食品輸出の課題として、厳格な輸入・環境規制が挙げられる。牛肉輸出に関連する主な現行規制の内容および今後適用予定の森林減少防止に関する規則(EUDR)や包装・包装廃棄物規則(PPWR)に関する動向を把握することも重要である。

1 はじめに

 日本の牛肉輸出は堅調に推移しており、2025年の同輸出額は前年比12.8%増の731億円と過去最高を記録した。このうちEU向けは全体の約1割に当たる76億円と、アジアや北米向けと比較してシェアは小さいものの、前年比28.7%増と全体を上回る伸びを示し、有望な市場の一つとなっている。
 そこで本稿では、EU向け牛肉輸出について、事業分析などで用いられる「SWOT(スウォット)分析」により、筆者の視点から、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の四つの項目で整理・分析を行い、輸出増加の要因や今後の課題について考察する。
 また、EU向けの食品輸出で課題となるのは、その厳格な食品関係規制である。そこで、牛肉輸出に関係する規制の概要や動向についても概説する。これは、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)が2025年度農林水産物・食品輸出支援プラットフォ−ム事業で作成した「EUへの農林水産物・食品の輸出に関するカントリーレポート【EU規制編】」の一部を抜粋・加筆したものである。
 なお、本稿中の為替相場は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」2026年5月末TTS相場の1ユーロ=187.16円および1米ドル=160.39円を使用した。

2 EU向け牛肉輸出のSWOT分析

 EU向け牛肉輸出について、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を図1の通り整理した。以下でそれぞれの内容について述べる。
 
 

 

(1)強み

 和牛肉特有の味や風味、霜降りの入った外観は、EUにおいても他の牛肉にはない全く異なる特徴として認識されており、現地産と明確な差別化が図れる点は、取扱事業者にとって大きな強みである。近年、EU域内で生産されたWagyu肉の販売を目にする機会もあるが、必ずしも和牛遺伝子100%ではないこと(注1)や、濃厚飼料による肥育が仕上げ期の約半年間に限られるケースが多いことなどから、脂肪交雑の面で和牛肉とは差異が見られる。
 また、和牛肉は「最も高価な牛肉」という高級品としてのブランドイメージを持たれている。プロモーションを実施する際は、このイメージを損なわないよう配慮することが重要と考える。

(注1)聞き取りなどによれば、域内で流通しているWagyu肉には、日本産和牛の血統遺伝子100%(フルブラッド)由来のものが存在する一方で、フルブラッドWagyuの種雄牛に他品種の雌牛を掛け合わせたいわゆる交雑種由来のものも多く流通している。
 

(2)機会

 EU27カ国は4億5000万人の人口を有し、国民一人当たり名目GDP(2026年:国際通貨基金(IMF)による予測値)は5万1000米ドル(818万円、日本は3万5700米ドル(573万円))と高く、購買力の面で有望な市場である。ただし、加盟国ごとに独自の食文化を持つ市場であることには留意が必要である。
 日本食の普及が進んでいることも利点である。すし(SUSHI)は一般的なスーパーで販売されており、最近ではおにぎりも注目され大都市では専門店もできている。漫画やアニメなどの日本のコンテンツ人気も高い。こうした背景から、日本食への関心は高い状況にあるといえる。
 EU向け輸出量が増加傾向で推移する要因の一つに、和牛肉の認知度が多くの加盟国で向上していることがある。2025年のEU向け輸出量は前年比約3割増の849トンとなったが、これは特定の国に偏った増加ではなく、各国での堅調な伸びによるものである。図2で牛肉輸出量の加盟国別の推移を整理したが、15年以降、オランダ、ドイツ、イタリア、フランスなど輸出先国の大半でほぼ右肩上がりで推移していることが分かる。特に最近ではスペインの伸びが著しく、25年の同国向け輸出量は、前年の3倍となった。26年3〜4月にスペインおよびイタリアで開催された食品見本市では、現地系事業者が和牛肉を取り扱う事例も確認された(写真1)。輸出量の増加と展示会などを通じた露出の拡大が、さらなる関心の喚起につながる好循環を生み出している可能性がある。
 



 
 EU域内の牛肉価格の上昇も、機会の一つと捉えられる。EUの牛枝肉価格は、20年1月には1キログラム当たり約4ユーロ(749円)であったが、26年4月には同約7ユーロ(1310円)と、ここ数年で大幅に価格が上昇している(図3)。この要因は、環境規制の厳格化などによる供給減や生産コストの増加である。欧州委員会が25年12月に公表した「EUの農畜産物中期需給見通し」によると、牛肉価格の上昇は、継続する可能性が高い。他方、貿易統計で20〜25年の日本のEU向け牛肉輸出単価(ロイン系)を見ると、1キログラム当たり9800〜1万800円の間で推移し、EU域内の枝肉価格と比較して変動幅が小さい。後述するように、EUでの和牛の価格は現地産牛肉の数倍程度と、大きな価格差が存在するものの、過去と比較すれば縮小しており、さらに、円安の進行も相まって、和牛肉輸出の追い風となっていると考えられる。
 

 
 また、国際的な政治情勢の不確実性が高まっている中、EUは比較的安定した政治体制となっている点や、25年以降、インド、インドネシア、豪州との自由貿易協定(FTA)締結に合意するなど、自由貿易を推進する立場をとっている点も、EUに仕向けるインセンティブの一つとなる。
 

(3)弱み

 弱みとしては、販売価格が高いことが挙げられる。EU域内での和牛肉小売価格を見ると、例えば2026年4月に訪問したパリ市内の店舗では、1キログラム当たり230〜350ユーロ(4万3000〜6万6000円)の価格帯で販売されており、これは現地産の一般的な牛肉小売価格の5〜9倍程度に相当している(表1、写真2)。日本のEU向け牛肉は冷蔵品が95%を占め、かつ現地消費地までの距離が遠いため、必然的に空輸となり輸送コストが高いことなども価格を押し上げる要因になっている。



 
 
 EU向け牛肉輸出の約8割がロイン系と、特定部位の比率が高いことも課題の一つである。25年の牛肉輸出に占めるロイン系の割合は、全体で43%であったのに対し、EU向けは77%であった。
 赤身肉と比べて一度に多くの量を食べられないという声も聞かれ、一部の小売店では、赤身肉に慣れた客層が初めて和牛肉を購入する際、ステーキ用では一人当たり100グラム(通常は200グラム程度)を勧めているという。この点は、少量でも満足感が得られるという和牛肉の長所として評価できるが、ロイン系以外の比較的サシが少ない部位を選択肢として示し、販路を拡大していくことも今後は重要である。
 

(4)脅威

 EUは世界的に見ても輸入規制および環境規制が厳格であり、和牛に限らず食品輸出全般にとって考慮すべき点が多い。
 輸入規制の例として、牛肉では、牛に対して生涯にわたって使用が禁止されている動物用医薬品などが定められていることや、特定の抗菌剤を使用した製品の輸入禁止措置が2026年9月3日から適用されることなどが挙げられる。
 また、環境規制に基づく新たな要件設定も、輸出側として懸念材料となる。主な例として、製品の生産過程において森林減少を引き起こしていないことの確認などを義務付ける「森林減少防止に関する規則(EUDR)」や、包装にリサイクル要件などを課す「包装及び包装廃棄物規則(PPWR)」などが挙げられる。
 さらに、EU域内の農薬使用やアニマルウェルフェア(AW)などの基準を、輸入品にも求める動きもある。
 これら牛肉輸出に関係する規制の内容などに関しては、4で後述する。
 消費面では、EUの一人当たり年間牛肉消費量の減少が見込まれている。欧州委員会の中期需給見通しによれば、同消費量は、食肉全体の消費減少に加え、豚肉や家きん肉への切り替えなどから、23〜25年平均の6.7キログラムから35年には6.1キログラムまで減少すると予測されている(図4)。ただし、日本産和牛肉は高級品に分類され、一般的な牛肉の消費形態とは異なり、EUの牛肉消費量に占める割合も少ないため、直ちに影響が出る可能性は低いと考えられる。

3 弱み、脅威への対応のための取り組み

 前章では「弱み」や「脅威」といった課題について述べたが、「弱み」に対応する取り組みの一例として、JETROがフランスやベルギーで実施する和牛肉に関する知識向上やカッティング技術向上のための授業について、紹介したい。
 同授業は、将来的に和牛肉の取り扱い業者となることが期待される専門学校の学生などを対象に行うもので、公益社団法人全国食肉学校の先生を講師に迎え実施した。その目的としては、(1)若い世代における和牛肉の認知度向上と将来的な顧客層の開拓、(2)「Wagyu」と比較した日本産の優位性の普及、(3)ロイン系よりも安価なセカンダリーパーツの活用による販売価格抑制のためのカッティング方法の伝達−などが挙げられる。
 フランスでは精肉店の開業に国家資格が必要で、その取得には専門学校で必要な技術・知識を得る必要がある。こうした専門学校の一つであるパリの精肉学校の講師・生徒を対象に、2024年度から和牛肉の授業を開始した(写真3)。この学校の卒業生の9割が精肉関係の仕事に就く。
 25年度にはベルギーで、ホテル・レストランなど食関連のサービス業界に特化したナミュール州立専門学校でも同様の授業を実施した(写真4)。この学校は、「ミシュランガイド」で星付きに選ばれたレストランのシェフを多く輩出している。
 将来が期待される生徒に和牛肉の魅力やカッティングなどの取扱方法を伝えることで、和牛肉が食材の選択肢の一つとして関係者に認識され、和牛肉の導入拡大につながることが期待される。
 
 


 
 また、「脅威」である複雑化するEU規制に対応するため、JETROが構成員として参画する輸出支援プラットフォーム(注2)のEU拠点では、各種規制に関する調査の実施や、メールマガジンなどでの情報発信を行っている。次章では、JETROが2025年度農林水産物・食品輸出支援プラットフォ−ム事業で作成した「EUへの農林水産物・食品の輸出に関するカントリーレポート【EU規制編】」などから、牛肉輸出に関する部分を抜粋・加筆して紹介する。

(注2)「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」に基づき、輸出先国・地域において輸出事業者を包括的・専門的・継続的に支援するため設立。在外公館、JETRO海外事務所、日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)海外駐在員が主な構成員。

4 EUへの牛肉輸出に関連する規制

(1) 輸出の前提条件

 EUへ動物由来製品を輸出するには、(T)輸出国の当該動物種がEUの定める管理計画承認リストに掲載されること、(U)輸出可能な動物由来品目としてEUの定める第三国リストに掲載されること、(V)要件を満たす生産農場で生産され、EUの基準(HACCP計画など)を満たした認定施設で処理され、食肉衛生証明書の発行を受けていること―が必要となる。
 日本から牛肉を輸出するに当たっては、(T)および(U)はすでに要件を満たしており、輸出者が個別に(V)の要件を満たす必要がある。
 (V)の生産農場が満たすべき要件は、表2の通りである。ここで留意すべきは、日本で動物医薬品として承認されているエストラジオール安息香酸エステルを有効成分とする製剤およびホスホン酸誘導体(ホスホマイシン、26年9月3日以降に通関する牛肉から適用)が、使用禁止薬剤に該当することである。
また、(V)のEU向け認定施設(輸出食肉取扱施設(牛肉および牛内臓))は、2026年4月末現在、14施設がある(注3)

(注3)農林水産省のウェブサイト(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/hq/i-4/yusyutu_shinsei_ousyu.html)をご参照ください。
 
 なお、肉エキスについても、生鮮肉と同様に、一次生産(と畜場および食肉処理施設)から加工に至るまでEUの衛生基準を満たし、認定された施設から調達する必要がある。牛を含むすべての畜種の肉エキスに関して、26年4月末現在、日本国内に認定施設がないため、日本産の肉エキスを使用した食品のEUへの輸出は不可となっている。

(2)牛肉に関係するEU食品関係規制

 本項では、HSコード第2類に該当する生鮮牛肉(冷蔵・冷凍)の輸出に関連する主なEU食品規制について概説する。

ア 残留農薬に関する規制
 EUでは、使用可能な農薬についてポジティブリスト制を採用し、食品の種類ごとに許容される残留農薬の残留基準値(Maximum Residue Limits:MRLs)が規定されている(規則(EC)396/2005)。MRLsは当該食品1キログラム当たりに許容される農薬量として示され、MRLsが設定されていない農薬と食品の組み合わせに対しては、一律1キログラム当たり0.01ミリグラムの上限値が適用される。牛肉に関する残留農薬のMRLsは、「EUの農薬データベース(EU Pesticides Database)」の「動物由来製品(牛:bovine)」で確認できる。

イ 動物用医薬品に関する規制
 動物由来製品向けに使用可能な「薬理活性物質(pharmacologically active substances)」についても、ポジティブリスト制が採用され、MRLsが規定されている。このMRLsは、規則(EU)37/2010の附属表で確認できる。日本の残留基準値を超過していなくても、EUの残留基準値を超過した場合は輸出できないため、休薬期間などに注意が必要である。
 また、成長促進作用のあるホルモン剤の使用が禁止されるほか、薬剤耐性対策強化のため、生涯にわたって使用を禁止する動物医薬品などが定められている。その内容は、表2のカおよびキの通りである。




 
ウ 残留重金属・汚染物質に関する規制
 規則(EU)2023/915により、食品カテゴリーごとに食品中の汚染物質のMRLsも規定されている。ここでの「汚染物質」とは、意図的に食品に添加されたものではなく、食品の生産(家畜の飼養、獣医療の作業を含む)、製造、加工、調理、処理、包装、梱包、輸送および保管などのプロセスまたは生育環境に由来して、食品中に存在する物質を指す。MRLsを超過したものは、上市することも、原料として使用することも不可となる。

エ 表示に関する規制
 牛肉には、個体識別番号、処理施設の認定番号、原産国表示、不正防止の観点からの検印と封印シールおよび検査済証などが必要となる。
 また、EUでは、規則(EU)1169/2011(FIC規則(Food Information to Consumers))により、事前包装食品の表示義務項目と条件付き表示項目が定められている。牛肉の表示項目は、「EU食品ラベル表示規則検索ツール(Food Labelling Information System)」の牛肉(H.1.1 Meat of bovine animals)で検索できる。
 なお、規則(EC)1333/2008により、未加工品である生鮮肉への食品添加物の使用が禁止されているが、一部、マークなど印字用の「適量」の添加は許可されている。ただし、認可された着色料以外は使用できないため、注意が必要である。使用可能な食品添加物(着色料)は、欧州委員会のウェブサイト「食品添加物検索データベース」で確認できる。

オ 有機(Organic)製品に関する規制
 日本は、「有機畜産物及び有機畜産物を原料とした有機加工食品」を含む一部の有機JAS製品を、有機同等性制度を適用してEUでも有機(Organic)製品として販売することが可能である。この場合、EU向け登録認証機関(Control bodies)に検査証明書(COI)の発行を依頼する必要がある。
 この有機同等性制度は、2026年12月31日までの移行措置として適用されているが、25年12月、欧州委員会はこの期限を36年12月31日まで延長することを提案した。なお、この提案には、有機同等性が認められた域外産品へのEU有機ロゴ(ユーロリーフ、写真5)の使用をEUの基準をクリアしたものに限る(日本の有機ロゴの使用は可)とする内容なども含まれており、今後の承認プロセスの動向を注視する必要がある。
 
 
 
カ 容器・包装に関する規制
 EUでは、食品と接触するすべての材料を「食品接触材(Food Contact Material:FCM)」と呼び、これに関する包括的な一般原則を定めた枠組み規則((EC)1935/2004)をはじめとする複数の規則にまたがって、容器・包装が規制されている(図5)。一部のFCMの素材はポジティブリストで規定され(表3)、輸出業者は、輸入者が、FCMが規則を順守していることを示す適合宣言書を作成し提示できるよう、輸入者への情報提供が必要となる。
 

 

(3)今後注意すべき関係規制

 ここでは今後適用が予定され、日本からの牛肉輸出においても何らかの対応が必要になると見込まれる、または可能性があるEUの規制の内容と最近の動向を整理する。

ア 森林減少防止に関する規則(EUDR)
 EUDRは、牛など7品目およびその派生製品について、これらの生産が森林破壊を引き起こしていないことの調査(デューデリジェンス、DD)と報告(デューデリジェンスステートメント、DDS)を義務付ける規則である。事業者は、(@)森林減少を伴わないこと(森林減少フリー要件)および(A)生産国の関連法規に従って生産されていること(合法性要件)―を調査し、対象製品が森林破壊に該当しないことをDDSにより証明できなければ、当該製品のEU域内での流通は認められない。
 EUDRは当初2024年12月30日から適用される予定であったが、DDSの提出を受け付けるITシステムの整備の問題などから、現時点では26年12月30日(小規模事業者は27年6月30日)からの適用に延期されている。
 牛肉はEUDRの対象製品となっているため、EU市場に日本産牛肉を供給する事業者(輸入業者など)は、DDSを作成、提出する必要がある。そのため、日本側としては、(T)出生からと畜までの飼養施設の地点情報(農場名、住所、緯度経度の情報)、(U)飼養地において21年以降、森林減少がないことの情報(衛星画像など)を整備し、輸入業者などからの求めに応じて提供する必要がある。また、輸入業者などに対して、どのような対応を求めるか確認することも重要である。

イ 包装および包装廃棄物規則(PPWR)
 PPWRは、域内の包装全般の廃棄物の削減などを目的に、廃棄削減・再利用・リサイクルを強力に推進する内容となっており、2025年2月に発効した。食品に限らず、すべての包装および包装廃棄物が対象である。目的達成のため、七つの持続可能性要件(図6)などを定め、当該要件を満たさない包装の上市は禁止される。
  これらの要件は、要件ごとに発効のタイミングが設定され、26年8月12日から順次適用が開始される。スケジュールは図7の通りである。
 





 
 要件のうち特に影響が大きいと考えられるのは、「2.リサイクル可能な包装」および「3.プラスチック包装の最低リサイクル含有割合」である。この詳細は、今後下位規則で定められる予定である。
 EU向け牛肉の輸出形態は、正肉(ブロック肉)を多層フィルムでバキュームパックしたものが主流であるが、この多層フィルムに関する各要件の取り扱いについて、今後継続的な情報収集が必要となる。

ウ EU生産基準の輸入品への適用厳格化
 欧州委員会は2025年2月に、40年までの域内農業・食品産業の将来的な方向性などを示す「農業と食のビジョン」を公表し、その中で、農薬やAWに関するEU生産基準の輸入品への適用の厳格化を図る方針が示された。これは、域内の生産者の間で、「EUの生産基準が輸入品には課されていない」との不満が高まっていることが背景にある。
 足元では、EU基準の適用による影響評価が行われており、今後どのような形で具体化されるか注視が必要である。

5 おわりに

 本稿前段で紹介したSWOT分析は、あくまで筆者個人の視点に基づくものであり、本稿をお読みいただいた関係者の中には、ここで挙げたもの以外にも、強みや機会が存在すると感じられた方もいらっしゃるかもしれない。そのようなプラス要素こそが、販路拡大に向けた重要なツールであり、ぜひ今後の輸出拡大に向けて、それぞれの強みを活用していただきたいと考えている。
 EUは、規制対応などの面でハードルの高い市場でもあるが、そのハードルを乗り越えるための一助となれるよう、今後も微力ながら貢献していきたい。
なお、本稿で引用したEU規制に関する各種サイトやレポートを以下に記載するので、ご活用いただきたい。

 
前田 昌宏 (JETROブリュッセル)

【規制全般】
「EUへの農林水産物・食品の輸出に関するカントリーレポート【EU規制編】」
2026年3月 EU輸出支援プラットフォーム
https://www.jetro.go.jp/ext_images/agriportal/platform/eu/2026/pf_prs-2.pdf

JETRO 「農林水産物・食品の輸出支援ポータルサイト【欧州: EU 牛肉】」
https://www.jetro.go.jp/world/europe/eu/foods/exportguide/beef.html#03_04

【動物医薬品関係】
EUの新たな動物用医薬品規則への対応
2025年6月11日更新 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/eu_amr.html

【容器・包装関係】
EU及びEU主要加盟国の容器・包装規制について
農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_process/k_packaging.html

EUの食品包装プラスチック規制の概要
令和7年1月更新 EU輸出支援プラットフォームブリュッセル事務局
https://www.EU.emb-japan.go.jp/files/100786829.pdf

PPWRにより包装に課される要件等に関する調査
令和7年3月 みずほリサーチ&テクノロジーズ
農林水産省輸出・国際局規制対策グループ令和6年度輸出環境整備推進委託事業
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_process/attach/pdf/k_packaging-38.pdf

PPWRに関する国内・欧州域内の動向等に関する調査
2026年3月13日 みずほリサーチ&テクノロジーズ
農林水産省輸出・国際局規制対策グループ令和7年度輸出環境整備推進委託事業
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_process/attach/pdf/k_packaging-39.pdf

【EUDR関係】
EUの森林減少防止に関する規則への対応について
令和7年12月23日更新 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/EUDR.html

EUのEUDR(森林減少防止に関する規則)の概要
令和8年4月 EU輸出支援プラットフォームブリュッセル事務局
https://www.EU.emb-japan.go.jp/files/101018299.pdf