米国の養豚生産は、飼料の原料となるトウモロコシや大豆の主要な生産地域であるグレートプレーンズ東部
(注1)において盛んである。米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によれば、2025年12月1日時点で、アイオワ州では2530万頭(前年比4.1%増)、ミネソタ州では940万頭(同1.1%増)、イリノイ州では545万頭(同0.9%減)の豚が飼養されている。また、米国で最大規模の飼養頭数を誇る養豚生産企業が所在するノースカロライナ州では790万頭(同3.7%減)が飼養されており、これら4州だけで全米の豚飼養頭数の6割超を占めている(図1)。
(注1)北アメリカ大陸の内陸部を南北に延びる大平原地帯。平たんで広大な地形を背景に、大規模農業が発展している。
(1)米国における豚肉の生産動向と販売状況
米国国内での豚肉生産量は、ここ数年、年間1250万トン程度で推移している(図2)。安定した生産量は生産効率の向上に支えられており、特に母豚1頭当たりの子豚生産頭数は、ほぼ一貫して増加している。2026年の母豚1頭当たりの子豚生産頭数は11.8頭となっており、前年比で0.9%増加した(図3)。米国の豚肉輸入量(枝肉重量ベース)は年間50万トン程度であり、米国内の豚肉需要のほとんどは米国産で賄われている。
米国の豚肉生産量のうち需要量は、年間おおよそ1000万トン程度で推移しており、残りの300万トン程度が輸出されている。輸出は米国産豚肉の需要を支える重要な市場であり、輸出量が全て米国産とすれば
(注2)、国内生産量の約4分の1程度が輸出に向けられていることとなる(図4)。
(注2)米国で生産される豚肉には、カナダから生体豚が輸入され、米国で肥育、と畜されるものがある。
豚肉の米国内の消費形態について、スペアリブなどはバーベキューシーズンなど季節的な需要の変動があるが、ベーコンやソーセージのような豚肉加工品やポークチョップなどに使用されるロイン系部位は年間を通じた需要がある(写真1、2)。
豚肉の卸売価格は、豚の出荷頭数や生産量の増減に伴い変動しているが、枝肉の食肉処理場出荷時のカットアウトバリュー(各部分肉の卸売価格を1頭分の枝肉に再構築した卸売指標価格)は、100ポンド当たり100米ドル(1キログラム当たり360.2円)前後で推移している(図5)。
部位ごとの状況としては、ロイン系部位の価格は、カットアウトバリューと同様の傾向で推移しているものの、スペアリブやベリー系部位については、他の部位よりも高値で推移している。これは、もともと米国内の需要が高い中で、近年は特に米国内の消費者が自宅で調理する際に手軽さを求めており、ベーコンやソーセージなどの加工品の需要が伸びていることなどが影響していると考えられる。
また、最近は、米国内における牛肉価格の高騰により牛ひき肉についても価格が高騰しており、代替として豚ひき肉の販売量も増加傾向にある。豚肉は牛肉と異なり、ソーセージやサラミ、冷凍食品などの加工品において、脂肪分が多い商品も多く製造・販売される。このため、牛肉ではひき肉の赤身率調整のため、赤身を中心としたトリミング材を他国・地域から輸入する必要があるところ、豚肉ではその必要がないことも、米国が国内需要のほとんどを国産豚肉で満たせる一因と考えられる。
(2)米国からの豚肉の輸出概要
米国の養豚産業にとって輸出市場は重要であり、豚肉およびタンなどを含む内臓肉(バラエティミート)を合計した輸出量は、全体の生産量の約3割を占めている。
豚肉の輸出先は、主に北米地域やアジア地域である。2025年の豚肉総輸出量(216万9000トン、製品重量ベース)を国別に見ると、メキシコ向けが100万トン(総輸出量の47.0%)を超える最大の市場となっている(図6)。同国向けは増加傾向が続いており、さらなる輸出拡大の余地がある。その他の主な輸出先としては、日本(同12.2%)、韓国(同9.1%)などがある。中国向けは20年に73万トンを超え同年の総輸出量の31.9%を占めたが、その後は減少し、25年の輸出量は10万8000トンと全体の5.0%を占めるにとどまっている。
豚のバラエティミート(内臓肉・副産物)の輸出先については、中国向けが最大であり、25年の輸出量は23万3000トンと、バラエティミート総輸出量の46.9%を占めている(図7)。また、メキシコ向けも25年は16万7000トンとなり、総輸出量の33.7%を占めている。米国内では、アジア系やヒスパニック系、そして、一部のヨーロッパ系の料理でバラエティミートが喫食されるが、豚肉と比べて需要は低い。そのため、付加価値商品として輸出することで需要を拡大している。
米国食肉輸出連合会(USMEF)は、豚肉の部位ごとの生産量に対する輸出量を算出しており、それによると、カタやモモ・スネの部位が多く輸出されている一方で、バラやリブの輸出割合は低いとされている(図8)。これは、米国内においてはベーコンなどに使われるバラやリブの需要が大きく、反対にアジア地域では赤身を主とする部位の需要が大きいことが要因と考えられる。米国において、豚肉と言えばベーコンという印象が強く、ホテルの朝食においても、ほぼ必ずと言ってよいほど提供される。全米豚肉委員会(NPB:National Pork Board)による豚肉チェックオフ資金を活用した消費需要喚起の取り組みにおいても、ロイン系部位を活用したステーキや、牛肉に代わるひき材としてハンバーガー用パティなどのプロモーションが行われているが、バラやリブを中心とした米国内の需要の構造は継続していくものと考えられる。一方、バラエティミートについては、日本向けのタンのように、特定のカテゴリーに対する需要がある場合を除き、中国やメキシコへ幅広い部位が輸出されている(図9)。