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5.日本の主要輸入先国の動向

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最終更新日:2010年6月3日

5.日本の主要輸入先国の動向

2010年6月

調査情報部

 2009年における砂糖輸入量のうち、甘しゃ糖・分みつ糖(HSコード1701.11−190)が128万3443トンと全体の98.8%を占め、そのうち57.8%をタイ、27.3%を豪州、11.7%を南アフリカと、この3カ国で96.8%を占める(財務省通関統計)。

◆タイ◆ 〜2010/11年度の輸出量は520万トンに増加の見込み〜

(1)2010年5月における見通し

 2009/10年度(注)のさとうきび生産量は、主産地の乾燥気候により、前回予測(2009年9月)から6900万トン(前年度比3.8%増)に下方修正された。作付面積の増加により、さとうきび生産量は前年度から増加したものの、気温差が縮小し、ショ糖含有率が低下したことから、さとうきび1トン当たりの産糖量は前年度から7%減少の100.6キログラムと見込まれる。このため、砂糖生産量は前年度比3.6%減の690万トンにとどまるとみられる。
 
 2010/11年度のさとうきび作付面積は、さとうきび価格の上昇により、北東部を中心にさとうきび栽培へのシフトが進むことなどから、108万ヘクタール(前年度比2.9%増)、さとうきび生産量は7100万トン(同3%増)とみられる。2010/11年度のさとうきび価格は、1トン当たり900バーツ(2691円:1バーツ=2.99円)と予測される。
 
 国際価格の下落を受け、前年度の同965バーツ(2885円)から低下するものの、過去10年間の平均675バーツを依然上回る。一方で、エルニーニョ現象による乾燥気候の影響を受け、ショ糖含有率は前年度並みとみられることから、砂糖生産量は720万トン(前年度比3%増)とみられる。
 
 
 
 さとうきびの大半は砂糖生産に仕向けられ、エタノールへの仕向け割合はわずか0.1%程度である。ガソホール(ガソリンとエタノールの混合燃料)の消費量が増加しているものの、生産者にとって、砂糖価格がエタノール価格に比べ魅力的であるためである。現在、国内にエタノール工場は17あり、1日当たりの生産能力は合計で290万リットルである。
 
注:USDAのレポートにおいて、さとうきびについてはさとうきび年度(1月〜12月)、砂糖については砂糖年度(12月〜翌11月)が適用されている。
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 2009/10年度の砂糖輸出量は、生産量の減少を受け、前回予測の580万トンから500万トン(前年度比6%減)に下方修正された。白糖・精製糖輸出量は、2008/09年度において主要国の輸出が減少したため、前年度比35%増と大幅に増加したが、2009/10年度は主要輸出国の生産回復により、急減するとみられる。
 
 2010/11年度の砂糖輸出量は、さとうきびの増産を受け、前年度比4%増の520万トンとみられる。主要輸出先はアジア諸国であり、なかでも東南アジア最大の輸入国インドネシアの比率が高い。これは、タイが豪州に比べ輸送コストで優位性があるためである。また、貿易協定の締結により韓国およびマレーシアでタイからの砂糖輸入関税が撤廃され、今後これらの国向けの輸出も増加すると見込まれる。
 
資料:USDA GAIN Report “Thailand Sugar Annual” 2010/04/9
 
 
 

◆豪州◆ 〜収穫面積の増加と天候回復により、2010/11年度は増産の見込み〜

(1)2010年5月における見通し

 2009/10豪州砂糖年度(7月〜翌6月)のさとうきび収穫面積は、さとうきび価格の低迷や干ばつの影響により、前回予測(2009年9月)から36万5000ヘクタール(前年度比6.6%減)に下方修正された。これは1994/95年度以来、最も低い水準であり、さとうきび生産量は3000万トン(同4.8%減)にとどまるとみられる。このため、砂糖生産量も前回予測の473万トンから下方修正され、453万トン(同2.4%減、粗糖換算)と予測される。
 
 2010/11年度のさとうきび収穫面積は、国際価格高騰による国内価格の上昇と天候回復を受け、39万1000ヘクタール(前年度比7.1%増)になると見込まれる。豪州農業資源経済局(ABARE)によれば、2009/10年度のさとうきび価格は1トン当たり51豪ドル(4563円:1豪ドル=89.48円)と、前年度の同32.5豪ドル(2908円)から大幅に上昇した。
 
 また、複数の製糖工場がさとうきびの新規作付に奨励金を交付したことも、収穫面積の増加に寄与した。さとうきび生産量は、収穫面積が増加したこと、天候回復と肥料使用の増加により、平均単収が増加したことから3350万トン(同11.7%増)と、6年ぶりの増加が見込まれる。砂糖生産量は前年度比6.0%増の480万トン(粗糖換算)とみられる。
 
 
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 豪州では2005/06年度以降、さとうきび価格の低下や干ばつ、洪水の影響を受け砂糖生産が低迷し、それに伴い輸出も減少傾向にあった。しかし、2010/11年度の輸出量は、生産回復を受け、前年度から2.8%増加の370万トンとみられる。主要輸出先は韓国、インドネシアなどのアジア諸国である。
 
資料:USDA GAIN Report “Australia Sugar Annual 2010” 2010/4/15
 
 
 

◆南アフリカ◆ 〜2010/11年度も生産低迷の見通し〜

(1)2010年5月における見通し

さとうきびの生産動向
 
 2009/10南アフリカ砂糖年度(4月〜翌3月)のさとうきび作付面積は40万5000ヘクタール(前年度比2.2%減)、生産量(粗糖換算)は度重なる異常気象の影響により、前回予測(2009年10月)から100万トン下方修正され、1866万トン(同3.1%減)とみられる。生産の80%を占めるクワズール・ナタール州のズールーランドでは過去最悪の干ばつが発生し、生産が伸び悩んだ。また、同州ミッドランドではひょうにより、約6000ヘクタールが影響を受けた。2010/11年度のさとうきび作付面積は40万5000ヘクタール、生産量は1867万トンと、前年度並みとみられる。
 
 さとうきび生産はここ数年低迷しており、その原因として生産コストの増加による収益性の低下、土地の再配分問題、都市化に伴うさとうきび作付面積の減少が挙げられ、なかでも、土地の再配分問題の影響が大きいとされる。政府は、農地所有権の黒人農民への移転について、2014年までに全体の30%を目指しているが、これまでのところ、6%しか完了していない。さとうきびを生産する白人農場主は、今後、土地の再配分がどのように進むか不透明なため、農地への投資に慎重になっており、このことが生産低迷を招いている。
 
砂糖の需給動向
 
 さとうきびの減産により、2009/10年度の砂糖生産量(粗糖換算)は前年度比3.5%減の225万トン、2010/11年度は前年度と同じ225万トンにとどまるとみられる。
 
 一方、2009/10年度の砂糖消費量は156万トン(前年度比2.3%増)、2010/11年度は159万トン(同1.9%増)と予測される。消費量は過去数年間にわたり増加傾向で推移しており、長期的にも増加が続くとみられる。現在の一人当たりの消費量は約35.8キログラムである。ただし、2008年の世界金融危機後の景気回復が緩やかであること、国際価格の高騰により小売価格が過去3年間の平均を上回ることから、短期的には消費の増加ペースは鈍るとみられる。
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 南アフリカは毎年、砂糖生産量の約40%を輸出する。砂糖の減産を受け、2009/10年度の輸出量(粗糖換算)は前年度比26.6%減の87万トン、2010/11年度は80万トンと予測される。粗糖の主要輸出先はインドネシア、日本、バングラデシュなどのアジア諸国、精製糖の主要輸出先はSADC(注1)加盟国である。また、米国市場への特恵アクセスが認められており、2009/10年度の割当は、追加分を合わせると2万5004トンであった。
 
 砂糖の国際価格が上昇したものの、南アフリカ通貨ランドが米ドルに対し高い水準にあるため、生産者はその恩恵を十分には受けられない状況となっている。
 
注1:南部アフリカ開発共同体(SADC: Southern African Development Community)。加盟国はSACU(注2)加盟国とアンゴラ、コンゴ、マラウイ、モーリシャス、モザンビーク、セイシェル、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ、マダガスカルの15カ国。SADCの自由貿易協定締結に従い結ばれたSADC砂糖協力合意により、砂糖は貿易の自由化から例外扱いされた一方、SACU加盟国は砂糖の生産量が消費量を上回るSADC加盟国に、SACU市場への非互恵的なアクセスを与えている。
 
注2:南部アフリカ関税同盟(SACU: Southern African Customs Union)。加盟国は南アフリカ、ボツワナ、レソト、ナミビア、スワジランド。
 
資料:USDA GAIN Report “South Africa-Republic of SUGAR ANNUAL” 2010/4/12 独立行政法人農畜産業振興機構「砂糖類情報」2007年7月号
 
 
 
 
 
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