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4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

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最終更新日:2010年10月5日

4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

2010年10月

調査情報部

◆ブラジル◆ 〜主産地の降雨不足によりさとうきび生産量下方修正〜

(1)2010年9月における見通し

 主産地中南部の圧搾は8月にピークを迎え、乾燥した天候により前月に引き続き順調となった。4月から8月16日までの同地域におけるさとうきび生産量は前年同期比17.1%増の3億3790万トン、砂糖生産量は同26.6%増の1950万トン、エタノール生産量は同19.4%増の1480万キロリットルといずれも前年度を大幅に上回ったとみられる。
 
 前年度の砂糖価格高騰により作付けが増加したことから、2010/11ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)のさとうきび収穫面積は809万ヘクタール(前年度比8.3%増)に増加するとみられるが、主産地中南部では乾燥した天候が続いており、このことが今年度後半に収穫される晩熟性のさとうきびの単収低下をもたらす懸念が強まっていることから、LMCはさとうきび生産量を前月から2110万トン減の6億4300万トン(同7.3%増)に下方修正した(9月5日)。
 
 その一方、乾燥した天候はさとうきびの糖度を高め、さとうきび1トン当たりの回収糖分(ATR)は2010年4月の予測(139.5キログラム)から141.0キログラムに増加すると見込まれることから、砂糖生産量は前月から40万トン増の4260万トン(粗糖換算、同18.0%増)に上方修正された(注)。エタノール生産量は2870万キロリットル(同13.0%増)とみられる。
 
注:ブラジルの国家食糧供給公社(Conab)は、9月2日公表の生産予測で2010/11年度のさとうきび生産量を下方修正したことに伴い、砂糖生産量も4月の予測から50万トン減の3800万トン(粗糖換算、前年度比15.4%増)に下方修正しており、LMCの見通しと異なる。
 
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 砂糖生産量の上方修正を受け、2010/11年度の輸出量は前月から20万トン増の3000万トン(粗糖換算、前年度比16.3%増)に上方修正されたが、港湾の混雑による船積み作業の遅れで輸出ペースが鈍る可能性もあり、動向が注目される。
 
 2010年6月中旬以降のブラジルにおける砂糖輸出の遅延は依然解消されず、国際砂糖価格上昇の一因となっている。港湾における船積み設備の能力を上回る砂糖の流入が遅延の主因とされており、砂糖出荷が平年を上回るペースで行われる背景には、前年度に主産地の中南部において大雨により生産が停滞し、一部の出荷が2010/11年度に持ち越されたこと、国際市場において過去2年間に砂糖需給がひっ迫した結果、在庫が低水準となっている上、北半球の生産は10月以降に開始されるためブラジル産砂糖の引き合いが高まっていることがある。政府統計によれば、2010年8月の砂糖輸出量は過去最高の330万トンに達した。
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, September 2010”
   国家食糧供給公社(Conab) “Acompanhamento da Safra Brasileira Cana-de-A??car” 2010/9/2
   ブラジルさとうきび産業協会(UNICA) “Media Center” 2010/8/26記事
   ブラジル開発商工省貿易局(SECEX) “Brazilian Trade Balance-Monthly”
 
 
 
 

◆インド◆ 〜2010/11年度の砂糖生産量は2660万トンに回復の見込み〜

(1)2010年9月における見通し

 2010/11インド砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、前年度のさとうきび価格高騰を受け主産地のマハーラーシュトラ州を中心に作付けが増えたことから、前年度から大幅増加の473万ヘクタール(前年度比20.4%増)と見込まれる。
 
 モンスーン期の雨不足によるさとうきびの単収低下が懸念されていたが、7月以降モンスーンの勢いが強まり、8月の降水量は平年を上回ったことから、2010/11年度のさとうきび生産量は3億3230万トン(同22.0%増)と予測される。さとうきびの増産により、砂糖生産量は2660万トン(粗糖換算、同31.0%増)に回復すると見込まれる

(2)粗糖・白糖貿易状況

 2010/11年度の砂糖生産量は2660万トン(粗糖換算、前年度比31.0%増)、消費量は2550万トン(粗糖換算、同2.0%増)と予測されることから、インドは3年ぶりに砂糖自給が可能になるとみられ、輸入量は120万トン(粗糖換算、同68.4%減)と前年度から大幅な減少が見込まれる。余剰砂糖は過去2年間に減少した在庫の積み増しに回すとみられるが、生産量が予測をさらに上回れば輸出を行う可能性もある。
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, September 2010”
 
 
 

◆中 国◆ 〜2010/11年度の砂糖生産量1300万トンに下方修正〜

(1)2010年9月における見通し

 中国における砂糖生産の約9割は南部で生産されるさとうきびを原料とし、残りは北部のてん菜に由来する。2010/11中国砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、前年度の砂糖価格高騰を受け作付けが増えたことから156万ヘクタール(前年度比4.7%増)に増加するとみられるが、さとうきび生産量については、多量の水を必要とする生育期に乾燥した天候となり、またその後の集中豪雨で肥料が流出し単収の低下が懸念されたため、9350万トン(同8.8%増)と前月から540万トン下方修正された。
 
 2010/11年度のてん菜収穫面積は、年初の低温で作付けに遅れが生じた影響を受け、前月から7万ヘクタール減の21万ヘクタール(前年度比40.0%増)に下方修正された。このため、てん菜生産量は前月から230万トン減の740万トン(同48.0%増)に下方修正された。原料作物生産量の下方修正により、中国全体の砂糖生産量は1300万トン(粗糖換算、同15.3%増)と前月から60万トン下方修正された。
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 2009/10年度において、政府は減産による国内需給のひっ迫を緩和するためこれまでに7回砂糖の国家備蓄を放出しており、合計放出量は146万トン(白糖換算)となった。
 
 前述の通り、2010/11年度の砂糖生産量は下方修正され、消費量は1600万トン(粗糖換算、前年度比5.3%増)とこれを大幅に上回るとみられる上、前年度の放出により国家備蓄が枯渇することから、輸入量は前年度比約2倍の310万トン(粗糖換算)とみられる。ただし、中国では異性化糖の生産が増加しており、需要が砂糖から異性化糖へシフトし、砂糖輸入量が予測を下回る可能性もある。
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, September 2010”
 
 
 
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
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