4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向
最終更新日:2011年12月15日
4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向
2011年12月
ブラジル
(1)2011年11月における生産見通し
〜砂糖生産量の予測値は、前年度比5.5%減少と依然、低調の見通し〜
2011/12ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)のさとうきびの収穫面積は780万ヘクタール(前年度比0.1%減)、単収は1ヘクタール当たり69.7トン(同11.9%減)と見込まれたため、生産量は5億4600万トン(同11.9%減)と前年度を大きく下回ると予測される。また、砂糖の生産量は3840万トン(同5.5%減)と前年度を下回ると見込まれる。9月の砂糖生産は、非常に乾燥した気候により、さとうきびの糖度が上昇し、英国の調査会社LMCの予想以上の成績となったものの、この状況は長くは続かず、10月に入り雨が降り始め、さとうきびの品質が低下し、さとうきびおよび砂糖の生産量の見通しは先月に引き続き前年度を下回る見通しとなった。
11月10日のブラジルさとうきび産業協会(UNICA)の発表によると、中南部における2011/12年度(4〜10月)の生産量は、さとうきび4億5960万トン(前年同期比8.3%減)、砂糖2920万トン(同4.3%減)、エタノール191億6610万リットル(同16.5%減)といずれも前年度に比べ減少となった。同発表によると、10月下半期の生産量については、さとうきび2300万トン(同23.5%減)、砂糖150万トン(同23.5%減)およびエタノール9620万リットル(同30.0%減)となり、前年同期の生産量を大幅に下回った。原料のさとうきび不足や糖度低下などから、310ある製糖工場のうち、89工場は10月前半までに生産を終了しており、今後、186の工場が11月中に生産を終了するものとみられる。
今年度のさとうきびの新植割合は、理想とされる14〜15%を下回る12%と低調であり、ほ場のさとうきびが長年にわたって株出しを重ねた状態にある。株出しが長期化したほ場では、病害虫の被害が出やすく、単収の減少の要因の一つとなる。来年度以降の生産に関して、今後数カ月の天候が単収や株出しから新植へのさとうきびの株の新植面積に影響を与える。生産者は、さとうきびの単収の減少を抑制するため、来年度はほ場の16〜17%で新植が行われるとみられるが、収穫までに15〜18カ月かかるため、2011/12年度の収穫には間に合わないとされることから、来年度の生産の大きな増加は見込めない。
(2)貿易状況
〜砂糖減産により、輸出量は前年度比11.2%減の見込み〜
2011/12年度における砂糖の消費量は1270万トン(粗糖換算、前年度比1.9%増)と前年度からわずかに増加するとみられる。また、砂糖輸出量は前月に引き続き予測値(同調査会社)が上方修正されたものの、さとうきびの生産量の減少から砂糖生産量も減少が見込まれ、2570万トン(粗糖換算、同11.2%減)と依然として、昨年度よりも減少すると予測される。
10月の砂糖輸出量は、前月(280万トン)より10.2%減、前年同月(300万トン)より16.3%減の250万トンとなった。主要輸出先は、中国、エジプトおよびカナダなどであり、中国向けは、前月(48万4000トン)よりは減少したものの、42万8000トンと7月以降、高い水準で推移している。
資料:LMC“Monthly Sugar Report, November 2011”
ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)プレスリリース(2011/11/10)
インド
(1)2011年11月における生産見通し
〜さとうきびの良好な生育により、砂糖生産量は2750万トンとなる見込み〜
2011/12インド砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は510万ヘクタール(前年度比5.9%増)に増加すると予測される。インド気象庁によると、今年のモンスーン期の降雨量は過去50年間の平均(長期平均)並みとされ、これによりさとうきびの単収は昨年と同水準となる見通しである。収穫面積の増加と高水準の単収により、さとうきび生産量は前年度を上回る3億5350万トン(同6.5%)となる見込みである。
最大生産地マハーラーシュトラ州では、モンスーン期の降雨が長引いたことにより、収穫作業に遅れが生じている。さらに、収穫量の増大に伴い労働力不足が予想されることに加え、生産者と製糖工場間でさとうきび価格の交渉が妥決しないことから、圧搾の開始も遅れる見込みである。
また、ウッタル・プラデーシュ州でも、生産者と製糖工場間でさとうきび価格になかなか折り合いがつかず、製糖開始が遅れている。このため、生産者側は、州政府に対してSAP(州政府勧告価格)は肥料価格の上昇を考慮して上げるよう要求した。州政府は、州知事選を控えていることもあり、さとうきび生産者の反発を防ぐため、SAPの引き上げを決定した。
一方、製糖工場側は、現状の国内砂糖価格水準ではコスト割れとなり生産者への支払いが困難になると引き上げには反発している。このため、両州では資金力のある一部の製糖工場のみが製糖を開始している。
(2)貿易状況
〜2011/12年度はOGL方式により100万トンの砂糖輸出が許可〜
2011/12年度の砂糖消費量は、国内価格が落ち着いてきているため、2500万トン(粗糖換算、同7.0%増)と、2009/10年度と同水準まで回復すると予測される。砂糖の生産量と消費量見込みの差から250万トンの砂糖が輸出可能と考えられる一方、輸出は政府が管理しており、その可否は政府の判断によるが、政府は食料品価格の上昇による国内のインフレを懸念し、輸出許可には前年度から慎重である。さらに、インドの砂糖生産量は周期的に変動しており、政府は2012/13年度に作付面積が減少に転ずると見込んでいる。このため、政府としては生産量の減少に備えて十分な在庫を確保しつつ、インフレ対策を行いたいという思惑がある。
一方、製糖業界はタイの洪水被害などによる国際価格の上昇を見込んでおり、OGL方式*注による400万トンの輸出を認めるよう政府に要求している。製糖工場にとっては、国内価格が下落すれば資金繰りが困難となり、工場から生産者への支払いが遅延することとなる。十分な支払いがなされなければ生産者の生産意欲が低下し、2012/13年度には作付面積の減少につながると考えられる。
これを受けて、政府は11月23日、OGL方式による国産原料由来の砂糖について100万トンの輸出を許可した。マハーラーシュトラ州、ウッタル・プラデーシュ州の両州で製糖開始時期が遅れているため、輸出可否の判断は当初より1カ月程度遅れたが、今後の追加輸出については同方式により前年度と同様、段階的に許可されるものと思われる。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, November 2011”他
*注:OGL(Open General License)とは、登録を行った業者に対し、個別のライセンスを取得せずに輸出を許可する制度。
中国
(1)2011年11月における生産見通し
〜砂糖生産量は1260万トンと前年度比11.4%増の見込み〜
2011/12中国砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび生産量については、2か月連続で予測値が下方修正されたものの、8790万トン(前年度比8.5%増)と前年度を上回る見込みである。今年前半の生育期における少雨と日照不足に加え、一部で台風通過によるさとうきびへのダメージが生じたことから、単収は気象被害を受けた前年度と同水準と見込まれるものの、作付面積が増加していることにより生産量は増加している。南部諸省では11月から既に収穫が開始されている。
甘しゃ糖の生産量は、さとうきび生産量の増加から1157万トン(同10.9%増)と前年度より増加するものとみられる。 てん菜の生産量は、作付面積と単収の増加により795万トン(同16.0%増)と前年度より大きく増加しており、てん菜糖生産量は101万トン(同17.3%増)と見込まれている。11月に入り今年度の製糖が本格化している。
今年度の砂糖生産量は、甘しゃ糖とてん菜糖の両方の生産量が増加するため1260万トン(同11.3%増)と予測される。
(2)貿易状況
〜9月輸入量は50万トン近くへ増加〜
中国政府は9月中旬、需給ひっ迫に対応するため、2010/11年度において9回目の国家備蓄砂糖の放出を行った。これにより、同年度の総放出量は188万トン(白糖換算)となり、国家備蓄は大幅に減少したものと考えられる。また、今年度の砂糖生産量が増加する見込みであるものの、依然消費量が、生産量を上回る見込みであるため、中国国内の需給はさらにひっ迫する見通しである。このようなことから、2011/12年度の輸入量は過去5年間で最大になる330万トンに達すると予測される。
例年9月は中国国内の製糖シーズン直前で砂糖が不足する時期のため、輸入が増加する傾向にあるが、今年9月における輸入量は46.9万トン(前年同月比33.1%増)、1〜9月の輸入量をみても前年度同期比22.3%増と大幅に増加した。9月の主な輸入先はブラジル(43.2万トン)、韓国(2.0万トン)、フィリピン(1.0万トン)であった。
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