5. 日本の主要輸入先国の動向
最終更新日:2012年1月10日
5. 日本の主要輸入先国の動向
2012年1月
調査情報部
2010年における砂糖輸入量のうち、甘しゃ糖・分みつ糖(HSコード1701.11‐190)は118万4848トンと、全体の97.1%を占める。そのうち、タイ(43.7%)、豪州(41.5%)、南アフリカ(8.6%)と、この3ヵ国で93.8%を占める。(財務省「貿易統計」)
タイ
(1)2011年12月における生産見通し
〜洪水被害による2011/12年度砂糖生産への影響は限定的〜
2011/12タイ砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、大増産された前年度よりさらに作付面積が増加したことで、140万ヘクタール(前年度比8.1%増)に達すると見込まれる。
しかし、タイでは過去50年で最悪の洪水被害に見舞われ、さとうきび主産地である北部および東北部でも被害が出ている。現在は水が引きつつあり、産地の被害状況が次第に明らかになりつつある。さとうきび・砂糖委員会事務局(OCSB)は11月24日時点で、深刻な被害を受けたほ場は3200ヘクタール程度(さとうきび20万トン相当)とみており、2011/12年度の生産には大きな影響を及ぼさないとしている。このため、さとうきび生産量は前年度を上回る9900万トン(同3.8%増)と見込まれる。
2010/11年度の大増産の影響で製糖終了が大幅に遅延したため、製糖工場は2011/12年度の製糖開始を例年よりも早めることとしている。一時は、洪水の影響で11月中の製糖開始も危ぶまれたが、最も早い製糖工場で前年度より2週間早い11月15日から開始し、23日までに10工場が順次製糖を開始した。
さとうきびへの被害が限定的であることに加え、製糖開始時期の大幅な遅延もないことから、砂糖生産量は1060万トン(同5.8%増、粗糖換算)と、過去最高の1000万トン台に達すると見込まれる。
(2)貿易状況
〜輸出量は前年度を上回る790万トンの見込み〜
2010/11年度は冷夏の影響で飲料向けを中心に砂糖の消費が低迷し、さらに洪水のため砂糖が遅配されるなどで在庫が積み増された。現在も洪水の影響で物流に支障を来していることから、2011/12年度の消費量は大きく伸びず、前年度据え置きの270万トン(粗糖換算)となる見通しである。一方、輸出については、生産量の増加と国内消費の低迷により過去最高の790万トン(粗糖換算、前年度比28.5%増)となる見込みである。このうち粗糖の輸出が540万トン(同33.7%増)と大幅に増加すると見込まれる。
10月の粗糖・白糖輸出量は、28万9000トン(前月比22.9%減)となった。この時点では洪水の被害による輸出への影響は確認されておらず、砂糖生産端境期のための減少とみられる。主要輸出先は韓国、日本、カンボジアなどのアジア諸国であった。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, December 2011”
豪州
(1)2011年12月における生産見通し
〜さとうきび生産量、砂糖生産量はともに前年度から増加の見込み〜
2011/12豪州砂糖年度(7月〜翌6月)のさとうきび収穫作業は、12月に入り終盤を迎えている。12月時点におけるさとうきびの生産見通しについては、さとうきび収穫面積が38万ヘクタール(前年度比24.2%増)と、収穫期後半の大雨によって大量の刈り残しが発生した前年度から大幅増が見込まれる。さとうきびの生育状況をみると、今年2月に主産地を襲ったサイクロン「ヤシ」による折損被害などから、十分な生長に至らなかった。このため、単収は前年度より低下するものとみられ、さとうきび生産量は前年度からやや増加の2850万トン(同3.9%増)にとどまるとみられる。
砂糖生産量は、登熟期に乾燥した好天に恵まれ、さとうきびの糖度が上昇していることから、前年度比9.4%増の390万トンと見込まれるものの、400万トン台で推移していた2009/10年度以前と比較すると、依然として低水準である。
さとうきび生産者団体のCanegrowersが先ごろ発表した2012/13年度の生産見通しによると、さとうきび生産量は3000万トン以上、砂糖生産量は450万トンに達するとみられる。豪州気象庁は来年1月から夏の終り頃にかけてラニーニャ現象が活発化すると予測しており、クイーンズランド州では今後平均以上の降雨が予測される。主産地の一つである同州北部のマッカイ西部では12月11日、嵐が発生し木がなぎ倒されるなどの被害が生じたが、数週間ぶりのまとまった降雨はさとうきびにとって恵みの雨となったようである。このように、今後予測される降雨はさとうきびの単収増加につながる可能性があるものの、降雨量によっては、2011年前半に発生したようなさとうきびの冠水被害なども起こり得ることから、今後の天候が注目される。
(2)貿易状況
〜砂糖生産量の増加を反映し、輸出量も増加〜
2011/12年度の砂糖消費量は110万トン(粗糖換算、前年度比1.5%増)と、わずかに増加が見込まれる。輸出量は、砂糖生産量の増加を反映して280万トン(粗糖換算、同10.6%増)と増加が見込まれるものの、過去5年平均(340万トン)と比較すると低水準である。
豪州の製糖業界では外国企業による合併・吸収の動きが活発化している。国内製糖5位のProserpine社は12月9日、国内製糖最大手Sucrogen社に1億2000万豪ドル(96億7千万円;1豪ドル=80.6円)で買収されることが決定した。同社をめぐっては、中国国営企業の穀物大手COFCOや豪州資本で国内製糖2位のMackay Sugar社も買収提案を行っていた。Sucrogen社は上記の買収金額に加え運転資金などの拠出も提案し、COFCOの1億2800万豪ドル(103億2千万円)の提案を退けた形で決定した。
Sucrogen社は昨年7月、シンガポールのパーム油大手Wilmar社に買収され、外国資本となっている。Proserpine社の買収によって、所有する製糖工場は8工場、総圧搾能力は約1700万トンになる。また、今回の買収によって、外国資本は豪州の製糖シェアの6割近くを占めることとなった。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, December 2011
南アフリカ
(1)2011年12月における生産見通し
〜砂糖生産量は前年度比4.4%減の200万トンの見込み〜
2011/12南アフリカ砂糖年度(4月〜翌3月)の生産は終了しつつある。同年度のさとうきび収穫面積は前年度をわずかに下回る28万ヘクタール(前年度比1.1%減)と予測されているが、単収は1ヘクタール当たり61.4トンと前年度(57.3トン)から増加が見込まれるため、さとうきび生産量は1700万トン(同6.1%増)に増加の見通しである。さとうきびの増産が見込まれるものの、糖度の低下により砂糖生産量は200万トン(同4.4%減)と、深刻な干ばつの影響で砂糖生産量が過去15年間で最低水準に落ち込んだ前年度をさらに下回る見通しである。糖度の低下は、前年度の干ばつで2011/12年度に収穫されるさとうきびが生育不良となり、一部のほ場でさとうきびの植え替えが行われた結果、収穫までの生育期間が通常よりも短くなったためとされる。
大手砂糖企業のIllovo Sugar社は、国内さとうきび生産が2009/10年度以前の水準に比べ低いことから、今年度においては保有する4つの工場のうちクワズール・ナタール州にあるUmzimkulu工場を稼働せず、通常、同工場で圧搾するさとうきびをSezela工場およびEston工場に仕向けることで工場稼働率の向上を図っている。
(2)貿易状況
〜輸出量は30万トンにとどまる見通し〜
2011/12年度の砂糖消費量は前年度並みの180万トン(粗糖換算、前年度比0.6%増)と見込まれている。砂糖生産量は前年度をさらに下回るとの見通しから、輸出量は30万トン(粗糖換算、同22.8%減)に減少すると予測されている。これは、歴史的にみても非常に低い水準である。なお、南アフリカは、2011/12年度において米国の関税割当制度に基づき同国向けに砂糖2万4687トンの特恵アクセスが認められている。
2011年10月の粗糖・白糖輸出量は前年同月比12.5%増の3万2000トンとなり、主要輸出先はモザンビーク、アンゴラ、マダガスカルなどのアフリカ諸国であった。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, December 2011”
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