4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向
最終更新日:2012年3月9日
4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向
2012年3月
ブラジル
(1)2012年2月における生産見通し
〜砂糖生産量の予測値は、前年度比4.3%減少と依然、低調の見通し〜
2011/12ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)のさとうきびの生産量は、5億6000万トン(前年度比9.7%減)と、前年度をかなりの程度下回ると見込まれる。これは、さとうきびの収穫面積が前年度並みの780万ヘクタールとなるものの、単収が1ヘクタール当たり71.3トン(同9.9%減)と前年度をかなり下回ると見込まれるためである。さとうきびの減産が響き、砂糖の生産量は3890万トン(同4.3%減)と前年度を下回る見通しである。
主産地である中南部における2011/12年度の砂糖生産は、ほぼ終了した。乾燥した気候の影響で、10月および11月初旬のさとうきび生産量は当初予測より微増したものの、前年度の生産量には達しなかった。
2月1日のブラジルさとうきび産業協会(UNICA)の発表によると、2月1日時点で、中南部における2011年4月からのさとうきび圧搾量は4億9300万トン(前年同期比11.4%減)である。1月前半には10の製糖工場が稼働を続けていたが、圧搾量はごくわずかであり、1月後半以降も稼働する工場は5カ所のみとなる見通しである。また、ATR(さとうきび1トン当たりの回収糖分)は137.59キログラム(前年度比2.1%減)となった。
2012/13年度の中南部におけるさとうきび生産について、今後4〜5月にかけての天候次第ではあるものの、株出しを重ねたことによる単収低下が課題となっている。通常、同地域における新植比率は15〜18%であるが、2011/12年度の新植比率は約10%と、2008年の国際金融危機による資金不足の影響により依然として遅れている。2012年前半に行われる苗の新植も、生産者の資金不足が影響することから、予測生産量は5億1000万トン〜5億2000万トンと、2011/12年度と比べ増加するものの、2010/11年度に比べると減産とした。
(2)貿易状況
〜砂糖減産により、輸出量は前年度比11.3%減の見込み〜
2011/12年度における砂糖の消費量は、1320万トン(粗糖換算、前年度比1.9%増)と、前年度からわずかに増加する見通しである。また、砂糖輸出量は2570万トン(粗糖換算、同11.3%減)と前年度に比べかなり大きく減少すると予測される。
1月の砂糖輸出量は、前月(180万トン)より32.8%減、前年同月(130万トン)より5.0%減の120万トンとなった。2011/12年度の輸出先上位国は、1月時点で、ロシア、中国、次いでエジプトとなっているが、さとうきびの収穫の始まった中国向け輸出は、2011年12月に引き続き無かった。
資料:LMC“Monthly Sugar Report, February 2012” ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)プレスリリース(2012/2/1)
インド
(1)2012年2月における生産見通し
〜2011/12年度の砂糖生産は好調、前年度比5.2%増の2750万トンとなる見込み〜
2011/12インド砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、前年度を上回る510万ヘクタール(前年度比5.7%増)と予測される。今年度のモンスーン期における降水量の全国平均値は、過去50年間の平均(長期平均)並みとなった。これによって、単収は前年度と同水準となり、さとうきび生産量は前年度を上回る3億5450万トン(同6.8%増)となる見込みである。
2月15日現在で、稼働する製糖工場数は524にのぼり、砂糖生産量は1610万トン(白糖換算、前年同期比15.2%増)と、前年度を上回るペースで製糖されている。最終的には2750万トン(粗糖換算、前年度比5.2%増)に達すると予測されるが、主産地では以下の諸問題を抱えているため、砂糖生産量は今後、下方修正される可能性もある。
最大産地のマハーラーシュトラ州では、本格的な工場稼働とともに歩留まりが向上したこともあり、2月15日時点で、砂糖生産量は570万トン(白糖換算、前年同期比14.0%増)となり、前年度を上回るペースで製糖が進んでいる。ただし、モンスーン期の降水量にばらつきがあったことや株出比率の上昇により、さとうきびの単収が低下している。このため、製糖終了時期は前年度より早くなる見込みである。
一方、ウッタル・プラデーシュ州では、昨年12月前半までに製糖工場間で製糖開始にばらつきがあった。これは、今回設定されたSAP(州政府勧告価格)が、前年度の価格を15〜20%上回るものであり、製糖業界が、州政府への反発を強めたためである。しかし、州政府が製糖工場に対して製糖開始を早めるよう要請したことや、高いSAPによりグル注1向けのさとうきびが砂糖向けに流入してきたこともあり、その後の生産量は増加し、2月15日時点で450万トン(白糖換算、同13.0%増)に達した。ただし、砂糖の国内価格が下落しているため、今後、工場側の資金繰りが悪化し、生産者に対しさとうきび代金の支払いが遅延する懸念がある。その場合、生産者がさとうきびをより換金性の高いグルへ仕向け、砂糖生産量は減少する可能性がある。
注1:遠心分離機を使わず、オープンパン(釜炊き)でさとうきびの搾汁を煮詰め、固形状もしくは板状にした砂糖
(2)貿易状況
〜OGL方式による追加輸出を100万トン許可、合計200万トンに〜
2011/12年度の砂糖消費量は、2500万トン(粗糖換算、前年度比7.0%増)と、2009/10年度と同水準まで回復すると予測される。
今年度の輸出については、OGL方式注2による国産原料由来の砂糖について200万トンが政府に許可された。同方式の輸出は、当初100万トンが許可されたが、申請期間中の国際相場が軟調に推移したため、製糖業者からの申請は鈍化し制限枠に届かなかった。その後、製糖業界からの強い要請もあり、申請期間は1月末まで延長され、その時点で約85万トンの輸出が許可された。さらに、2月7日の閣僚会議で同方式による追加輸出100万トンが許可された。
政府は、2012/13年度以降、国内供給量が不足するとみており、十分な在庫を確保するため、これ以上の追加輸出の許可に積極的ではない。こうした状況に鑑み、2011/12年度の輸出量は240万トン(粗糖換算、同14.9%減)にとどまると予測される。
一方、輸入に関しては、白糖および粗糖を対象とした免税措置が今年の3月末まで認められており、ブラジルからすでに20万トンの粗糖が輸入されている。前年度同様これらの輸入粗糖は、精製後、再輸出される可能性がある。
注2:OGL(Open General License)とは、登録を行った業者に対し、手続きを簡素化するために、包括的に輸出を許可する制度。
資料:LMC “Monthly Sugar Report , February 2012”
中国
(1)2012年2月における生産見通し
〜製糖開始3か月の甘しゃ糖生産量は回復傾向、てん菜糖生産量は依然好調〜
2011/12中国砂糖年度(10〜翌9月)のさとうきびの生産量は、主要生産地である雲南省、広東省の一部、海南島での収穫面積拡大と単収の増加により、不作であった前年度に比べ12.1%増の9050万トンと、かなりの増加が見込まれる。最大の生産地である広西チワン族自治区においては、秋季の乾燥によるさとうきび生長の遅れと登熟期の気温低下の遅れの影響で、糖度の上昇が緩慢であった。このため、製糖開始2カ月間(10〜11月)の甘しゃ糖生産量は前年同期を下回ったが、12月には糖度の上昇と共に製糖作業の遅延が改善され、さとうきびの増産が見込まれ、甘しゃ糖の生産量は1120万トンと同7.7%の増産の見込みである。
てん菜の生産量も、収穫面積の拡大と天候が良好であったことから単収の増加が見込まれ、同39.8%増の960万トンと大幅な増加が見込まれる。糖度は前年度並みとみられており、てん菜糖生産量は120万トン、同38.6%増の大幅な増産が見込まれる。製糖作業も順調に進んでおり、10〜12月のてん菜糖生産量は、前年同期を18%上回る74万トンであった。
甘しゃ糖及びてん菜糖の増産が予測されていることから、砂糖生産量は、1240万トンと前年度比10.1%の増加が見込まれる。
(2)貿易状況
〜2011年10〜11月の輸入量、前年同期の3倍〜
砂糖の増産が見込まれているが、国内需要には依然追いつかず、2011/12年度も需給はひっ迫するものとみられている。このため、粗糖・白糖輸入量は、前年度比39.6%増の310万トンと見込まれる。2011年10〜12月の粗糖・白糖輸入量は、131万トンと、前年同期の3倍と大幅に増加した。
12月の主な輸入先は、ブラジル(44.2万トン)、韓国(2.7万トン)、タイ(1.3万トン)で、CIF価格はトン当たり597ドルと前月から38ドル値を下げた。
国内の砂糖価格は、2011年8月トン当たり8000元(10万80円。1元=12.51円、1月末日TTS相場)であったが、12月にはトン当たり6300元(7万8813円)と大幅に下がった。国家発展改革委員会は2012年2月7日、100万トンの砂糖を政府備蓄用途として買い上げ、そのうち50万トンは、2月10日からトン当たり6550元(8万1940円)で買い上げることが決定していると発表した。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, February 2012”
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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