4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向
最終更新日:2012年5月10日
4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向
2012年5月
ブラジル
(1)2012年4月における生産見通し
〜2011/12年度の砂糖生産量は前年度比4.0%減〜
2011/12ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)の生産は終了した。同年度のさとうきび収穫面積は前年度並みの786万ヘクタールとなったが、さとうきび生産量は5億6130万トン(同9.4%減)と、前年度からかなりの程度減少すると見込まれている。さとうきびの減産は、天候不順や新植停滞の影響で単収が1ヘクタール当たり71.4トンと、前年度(78.9トン)から低下したことが原因とみられる。さとうきびの減産を受け、砂糖生産量は3900万トン(粗糖換算、同4.0%減)と、2005/06年度以来の減産となる見通しである。なお、エタノール生産量は2280万キロリットル(同17.5%減)に減少するとみられている。
ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)によれば、生産の約9割を占める中南部の2012/13年度におけるさとうきび生産量は、作付けの増加により5億900万トン(同3.2%増)に増加すると予測されている。糖度も前年度から上昇するとみられ、砂糖生産量は3310万トン(粗糖換算、同5.7%増)、エタノール生産量は2150万キロリットル(同4.6%増)と、いずれも前年度から増加すると見込まれている。ただ、中南部では2012年2月から3月下旬にかけて非常に乾燥した天候が続いたため、さとうきび生育への悪影響も懸念されており、引き続き動向が注目される。なお、2012/13年度に中南部で稼働を開始する製糖工場は2工場と、前年度に引き続き低水準とみられている。これは、2008年に発生した世界的な金融危機の影響とされる。
(2)貿易・政策動向等
〜輸出量は前年度比8.8%減の見込み〜
2011/12年度の砂糖消費量は、前年度からわずかに増加の1320万トン(粗糖換算、前年度比1.9%増)と見込まれている。輸出量は、減産の影響を受け2650万トン(粗糖換算、同8.8%減)に減少の見通しである。なお、UNICAによれば、2012/13年度における中南部の砂糖輸出量は2400万トン(粗糖換算、同8.5%増)に増加すると予測されている。
3月の粗糖・白糖輸出量は前年同月比29.5%減の100万トンとなり、主要輸出先はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、ロシアであった。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, April 2012” ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)プレスリリース(英語版)(2012/04/13)
インド
(1)2012年4月における生産見通し
〜製糖順調、砂糖生産量は前年度比6.2%増の見込み〜
2011/12インド砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、前年度の砂糖価格高騰による作付け増加を受け507万ヘクタール (前年度比4.8%増)に増加の見通しである。さとうきび生産量は、3億4490万トン(同1.7%増)に増加すると見込まれている。砂糖生産量については、さとうきびの増産に加え、アルコール生産に利用されるグル注向けのさとうきびが砂糖向けに流入していることもあり、前年度からかなりの程度増加の2790万トン(粗糖換算、同6.2%増)と予測されている。
インド製糖協会(ISMA)によれば、3月末までのインド全体の砂糖生産量は2320万トン(白糖換算、前年同期比13.0%増)に達し、製糖は順調に行われている。最大産地のマハーラーシュトラ州では、同月末までの砂糖生産量が810万トン(白糖換算、同11.1%増)に達した。一方、ウッタル・プラデーシュ州も、同月末までの砂糖生産量が660万トン(白糖換算、同12.7%増)に達した。ただ、同州では製糖工場の生産者に対するさとうきび代金の支払い遅延が問題となっている。支払い遅延は、実質的なさとうきびの工場買入価格であるSAP(州政府勧告価格)が前年度より15〜20%高めに設定されたことで、製糖工場側が原価割れを起こし、資金難に陥っていることが原因とみられる。現時点では、さとうきび代金の約20%が未払いになっているとされる。
注:インドの伝統的な含みつ糖
(2)貿易・政策動向等
〜OGL方式による砂糖輸出100万トン追加を許可、合計300万トンに〜
政府は3月下旬、OGL方式注による国産原料由来の砂糖の輸出について100万トンの追加を許可した。追加許可は、2011/12年度の製糖が順調に行われ、豊作の可能性が高まったことと、製糖業界からの強い要請を受けたものとみられる。今回の追加により、同方式による輸出は合計で300万トン許可されたことになる。現在、インドでは砂糖の輸出価格が国内価格を上回っていることから、輸出の拡大は製糖工場の資金繰りをある程度改善すると期待されている。輸出先は7月のラマダン(イスラム教の断食月)を控えた中東諸国とみられている。OGL輸出許可の拡大を受け、2011/12年度における全体の輸出量は前月予測を100万トン上回る340万トン(粗糖換算、前年度比19.7%増)と見込まれる。なお、2011/12年度の砂糖消費量は2500万トン(粗糖換算、同2.2%増)に増加の見通しとなっている。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, April 2012”
注:OGL(Open General Licence)とは、登録を行った業者に対し、手続きを簡素化するため、包括的に輸出を許可する制度。
中国
(1)2012年4月における生産見通し
〜砂糖生産量は前年度比9.1%増の見込み〜
中国における砂糖生産の約9割は南部で生産されるさとうきびを原料とし、残りは北部のてん菜に由来する。2011/12中国砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は158万ヘクタール(前年度比5.4%増)に増加の見通しである。収穫面積の増加に加え、単収も前年度を上回るとみられることから、さとうきび生産量は前年度からかなりの程度増加の8950万トン(同10.8%増)と見込まれている。さとうきびの増産を受け、甘しゃ糖生産量は1120万トン(粗糖換算、同7.3%増)に増加の見通しである。最大産地の広西チワン族自治区では、多雨や低温の影響で製糖が例年に比べ遅れていたが、2月以降は製糖ペースが早まり、3月末までの砂糖生産量は670万トン(白糖換算、前年同期比1.6%増)と、前年度の水準を上回った。同自治区で3月末までに今年度の製糖を終了した工場数は50と前年度(79工場)を下回っており、2011/12年度の製糖期間は前年度に比べ長くなると見込まれる。
てん菜生産地では、2011/12年度の生産がほぼ終了した。同年度のてん菜収穫面積は22万ヘクタール(同11.9%増)に増加し、単収も前年度を上回ったことから、てん菜生産量は900万トン(同31.9%増)に増加の見通しである。てん菜の増産を受け、てん菜糖生産量は前年度から大幅増加の110万トン(粗糖換算、同31.0%増)と見込まれている。 これらのことから、中国全体の砂糖生産量は1230万トン(粗糖換算、同9.1%増)と、前年度からかなりの程度増加するとみられる。
(2)貿易・政策動向等
〜砂糖輸入量は前年度比38.1%増の見込み〜
2011/12年度の砂糖消費量は1490万トン(粗糖換算、前年度比1.5%増)に増加し、前年度に引き続き国内生産量を上回るとみられる。このため、2011/12年度の砂糖輸入量は320万トン(粗糖換算、同38.1%増)と、前年度から大幅に増加すると見込まれている。なお、2月の粗糖・白糖輸入量は9万4千トンと、前年同月を約5倍上回った。主要輸入先はタイであった。
国家発展改革委員会は、2月7日に国家備蓄用として砂糖100万トンをトン当たり6550元(約8万5150円、1元=13円注)で買い上げると発表した。しかし、3月末までの買い上げ量は29万700トンと、低調になっている。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, April 2012”
注:TTS相場4月16日
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