サトウキビ抽出物の飼料添加による肥育豚への効果
最終更新日:2012年10月10日
サトウキビ抽出物の飼料添加による肥育豚への効果
2012年10月
三重県北勢家畜保健衛生所 巽 俊彰
【要約】
サトウキビ抽出物(20%濃度)を加えた飼料を肥育前期の肥育豚(体重30〜70kg)に給与すると、豚の免疫能力が高まり、豚の生産性も向上することが確認された。
今後、サトウキビ抽出物が抗菌性添加物の代替として利用できる可能性が示された。
はじめに
畜産物に対する安全・安心について、国民の関心が高まるに伴い、消費者からは抗菌性物質(AGP)を使用しない肉豚生産が要望されている。しかし、AGPを使用しない場合、高度な飼養技術が必要となるため、農場での増体率の低下やと畜場での廃棄率の増加など生産性の低下が指摘されている1)。
一方、AGPに代わる天然物由来物質の一つとして、ポリフェノールなどの有用物質を含むサトウキビ抽出物(SCE)があり、間欠投与による免疫機能の増強並びに増体の向上等が報告されている2,3)。そこで、SCEの連続投与によるAGPの代替としての可能性を確認するため、以下のような試験を実施した。
試験
SCEは、サトウキビから糖を取り除いた搾り汁から陽イオンクロマトグラフィーを用いてポリフェノールを多く含む部分を抽出し、米ぬか油かすに20%(W/W)の割合で吸着させたものを使用した。SCEをAGP無添加飼料に添加(SCE添加区)して、肥育豚に一定期間給与し、AGP添加飼料(AGP添加区)及びAGP無添加飼料(無添加区)と比較、観察した。調査項目は免疫反応と生産性で、免疫反応は遅延型過敏反応(ツベルクリン反応に代表される検査法)を、生産性は1日あたりの増体重と1日あたりの飼料摂取量を調べた。なお、飼料要求率は、1日当たりの飼料摂取量を1日当たりの増体重で除したものである。
考察
SCEを添加した飼料を給与すると、AGPを添加した飼料および無添加飼料を給与した場合に比べ、免疫力が高まっていることが確認された。
また、1日あたりの増体重および1日あたりの飼料摂取量とも増加し、さらに無添加飼料を給与する場合に比べ飼料要求率は低下したことから、生産性の向上が確認された。
試験の結果から、SCEを添加した飼料は、AGPの代替として利用できる可能性が示された。
おわりに
SCE添加の飼料を給与した肥育豚については、その後の農場での生産性や疾病率の試験においても好結果が得られており、今後消費者の求める安心・安全な畜産物の供給に寄与できるものと考えている。また、サトウキビ抽出物について一定の機能が示されたことは、今後サトウキビの有効利用を考えるうえでのヒントになるものと思われる。
引用文献
1)石橋晃、2007、飼料の現状と課題、日本畜産学会報78、1-13
2)Lo Dan-Yuan, et al., 2005, Effects of Sugar Cane Extract on the Modulation of Immunity in Pigs, J.Vet.Med.Sci., 67:591-597.
3)Lo Dan-Yuan, et al., 2006, Effects of Sugar Cane Extract on Pseudorabies Virus Challenge of Pigs, J.Vet.Med.Sci., 68:219-225.
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