白い砂糖の真実、そして三温糖との関係
最終更新日:2012年12月10日
白い砂糖の真実、そして三温糖との関係
2012年12月
調査情報部
【はじめに】
砂糖に関する根強い誤解として、「白い砂糖は漂白している」「白い砂糖より三温糖の方が健康に良い」というものがあります。これらは砂糖の製造法や製品の成分などについて十分に理解されていない部分があるためだと思われます。本稿では、砂糖の製造法などをご紹介しながら、純粋な砂糖が白い理由、白砂糖と三温糖の違いなどについてお話させていただきます。
1.「自然の力」から生まれる砂糖
植物は空気中の二酸化炭素と根から吸い上げた水を原料に、光エネルギーを利用して糖と酸素を生成します。生成された糖はでん粉またはショ糖(注)となって植物体内に蓄えられます。砂糖を蓄える主な植物はさとうきび(甘蔗(かんしょまたはかんしゃ))およびてん菜(サトウダイコン、ビート)です。これらの植物も、二酸化炭素、水、光のエネルギーから光合成によって砂糖を生み出し、蓄えます。砂糖は「自然の力」が生み出した自然食品であると言えます。
(注)ショ糖:砂糖の主成分である糖類。グラニュー糖はほぼ純粋なショ糖の結晶。
2.砂糖の製造法
(1)さとうきびを原料とした砂糖製造
さとうきびから砂糖を作る場合、通常2段階の工程を経て作られます。
1) 原料糖(粗糖)の製造 さとうきびの栽培地にある工場で、原料糖を製造します。
(ア)産地で収穫したさとうきびを細かく切り砕いて汁を搾ります。
(イ)石灰乳を加えて加熱し、タンパク質、無機質、着色物質などの不純物を凝集・凝固させ、沈殿させます*。
(ウ)上澄み(清浄液)を煮詰め、真空結晶缶といわれる装置の中で結晶を作ります。
(エ)遠心分離器にかけて、結晶を取り出します。
2)精製糖の製造
1)の工程で製造した原料糖を、消費地に近い工場で精製し、精製糖を製造します。
(ア)原料糖の結晶表面を糖蜜で洗った後、遠心分離器にかけて振り分けます。
(イ)振り分けた結晶をお湯に溶かします。
(ウ)石灰乳を加え、炭酸ガスを吹き込んで、生成する炭酸カルシウムに不純物を取り込み、沈殿させます*。
(エ)沈殿物をろ過して取り除きます。
(オ)糖液をイオン交換樹脂や活性炭などに通し、糖液中の色素など残りの不純物を吸着させて取り除きます※。
(カ)糖液を真空結晶缶の中で濃縮し、結晶を作ります。
(キ)遠心分離器にかけて結晶と糖液の混合物から結晶を取り出します。
(2)てん菜を原料とした砂糖製造
てん菜の栽培地にある工場で、精製糖を製造します。
(ア)収穫したてん菜を小さく切り刻み、温水に入れて糖分を取り出します。
(イ)石灰乳を加え、炭酸ガスを吹き込んで、生成する炭酸カルシウムに不純物を取り込み、沈殿させます*。
(ウ)沈殿物をろ過して取り除きます。
(エ)糖液をイオン交換樹脂に通し、糖液中の色素など残りの不純物を吸着させて取り除きます※。
(オ)糖液を真空結晶缶の中で濃縮し、結晶を作ります。
(カ)遠心分離器にかけて結晶と糖液の混合物から結晶を取り出します。
3.砂糖が白いのは、砂糖以外の不純物を取り除いた結果
2.の(1)(2)でご紹介した製造法において、砂糖をつくり、精製する手法は、不純物を凝集・沈殿させ濾過するもの(*)や、活性炭などに吸着させ取り除くもの(※)で、漂白など化学的な処理を行って砂糖の物性を変化させるわけではありません。精製糖は、色素をはじめとした砂糖以外の成分を取り除き、純粋な砂糖の結晶だけを取り出したものなのです。純粋な砂糖の結晶は無色透明で、結晶が光を乱反射するため白く見えます。雪や氷が白く見えるのと同じです。
4.白い砂糖と三温糖の違い
白い砂糖も三温糖も同じ精製糖であり、製造方法は同じです(図参照)。工場ではグラニュー糖などの白い砂糖が先にできます。残った糖液にはまだ糖分が残っていますので、再び煮詰めて結晶を取り出す工程を繰り返します。このような工程を繰り返すうち、加熱が続くことで糖が分解し、糖液に茶色い色が付いていきます。この糖液からできるのが、三温糖です。
砂糖に含まれるミネラルという点から考えてみると、ミネラル分に当たる灰分の含有量は、グラニュー糖や上白糖が約0.01%(ほとんどゼロに近いといってよいでしょう)であるのに対し、三温糖は約0.25%ですので、三温糖がグラニュー糖などに比べミネラルを多く含んでいるのは事実です(表)。しかし、100g中に0.25gという量を大さじ1杯(9g)中の量に直すとわずか0.02グラムにすぎません。牛乳1本(200ml)中に含まれるカルシウムが約200ミリグラム(0.2g)であることを考えると、砂糖にミネラルの摂取源としての役割を期待するよりは、野菜、果物、海藻などミネラル豊富な食品を十分摂取する方が効率的だといえます。
したがって、白い砂糖と三温糖の間で、どちらが健康に良い・悪いということはありません。
おわりに
当機構では、砂糖を正しく理解していただくため、砂糖に関するいろいろな情報を、ホームページで提供しています。アドレスは以下のとおりですので、ぜひご利用ください。
http://www.alic.go.jp/consumer/sugar/index.html
参考文献
・高田明和、橋本仁、伊藤汎監修「砂糖百科」(社)糖業協会、精糖工業会(2003年)
・橋本仁、高田明和編「砂糖の科学」朝倉書店(2006年)
・日高秀昌、岸原士郎、斎藤祥冶編「砂糖の事典」鞄結椏ー出版(2009年)
・斎藤祥冶、内田豊、佐野寿和共著「砂糖入門」日本食糧新聞社(2010年)
・精糖工業会「
お砂糖の疑問 第6回 砂糖が白いわけ」(砂糖類情報2004年1月号)農畜産号振興機構
・精糖工業会「
お砂糖の疑問 第7回 白い砂糖と茶色い砂糖」(砂糖類情報2004年3月号)農畜産業振興機構
・内田豊「
砂糖に関するFAQ」(砂糖類情報2010年4月号)農畜産業振興機構
・斎藤祥治「
砂糖の白さは天然の色」(砂糖類情報2010年12月号)農畜産業振興機構
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