4.世界の需給に影響を与える諸国の動向
最終更新日:2013年3月11日
4.世界の需給に影響を与える諸国の動向
2013年3月
ブラジル
【生産見通し】
今年度の生産はほぼ終了、砂糖生産量は前年度比5.1%増の見込み
生産の約9割を占める中南部地域では、2012/13砂糖年度(4月〜翌3月)の生産がほぼ終了した。ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)によると、2月16日までのさとうきび収穫量は5億3234万トン(前年同期比7.9%増)、砂糖生産量は3409万トン(同8.9%増)、エタノール生産量は2135万キロリットル(同3.9%増)と、いずれも前年度を上回った。一方、北東部地域では現在も収穫が続けられているが、天候不順により生産量は前年度を下回っている。これを受け、ブラジル全体のさとうきび生産量は5億9200万トン(前年度比5.6%増)、砂糖生産量は4139万トン(同5.1%増)と、前月予測からそれぞれ100万トン、11万トン下方修正された。生産量は下方修正されたものの、前年度比では増加の見通しとなっている。
2013/14年度に中南部地域で収穫予定のさとうきびの生育は、12月以降産地で十分な降雨があり、良好とされる。今後も生育に適した天候が続けば、同地域のさとうきび生産量は5億8000万〜5億9000万トンに増加すると見込まれている。ただ、砂糖・エタノール工場の処理能力の制限から、収穫期に降雨などで作業に遅れが生じた場合、刈り残しが発生する可能性も指摘されている。
【貿易・政策動向等】
輸出量は前年度比6.9%増の見通し
2012/13年度の砂糖消費量は、前年度をわずかに上回る1352万トン(粗糖換算、前年度比1.9%増)と予測されている。増産を受け、輸出量は2798万トン(粗糖換算、同6.9%増)に増加の見通しとなっている。2013年1月の粗糖・白糖輸出量は229万7000トンと、前年同月と比べ86.6%増加した。これは、今年度はじめに天候不順の影響で輸出ペースが鈍化していた反動とみられる。主要輸出先はインドネシア、ロシア、マレーシアであった。
政府は1月下旬、国営石油公社ペトロブラスに対し、ガソリン卸売価格を6.6%引き上げることを承認した。ガソリン価格の上昇により、競合するエタノールの価格競争力が増すとみられている。さらに、2013年5月からエタノールのガソリンへの混合率を20%から25%に引き上げることも計画されており、これらの政策によるエタノール需要の増加が砂糖生産にどのような影響を与えるのか注目される。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, February 2013” ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)“Sugarcane Harvest Report” 2013/2/16
インド
【生産見通し】
砂糖生産量は前年度比7.6%減の見込み
2月15日までのインド全体の砂糖生産量は1659万トン(白糖換算)となり、前年同期を2.7%上回った。北部の主産地ウッタル・プラデーシュ州の砂糖生産量は436万トン(白糖換算)と、前年同期を4%下回っている。これは、さとうきび価格の決定が難航し、収穫開始が遅れた影響である。ただ、収穫ペースは増加しつつあり、また、作付けの拡大によりさとうきびの増産も見込まれるため、最終的な生産量は増加が見込まれている。一方、西部の主産地マハーラーシュトラ州の砂糖生産量は前年同期比3%増の578万トン(白糖換算)となった。しかしながら、前年度からの降雨不足の影響によりさとうきびの収穫面積および単収の減少が予測されるため、同州の最終的な生産量は前年度を下回ると予測されている。インド全体のさとうきび生産量は、モンスーン期の降雨不足などによる単収の低下が見込まれるため、3億3820万トン(前年度比5.4%減)に減少の見通しとなっている。さとうきびの減産により、砂糖生産量は2631万トン(粗糖換算、同7.6%減)に減少すると予測されている。
【貿易・政策動向等】
130万トン輸出の見通し
2012/13年度の砂糖消費量は前年度からやや増加し、2545万トン(粗糖換算、前年度比2.7%増)と見込まれている。砂糖生産量は減少が予測されているものの、消費量を上回るとみられ、また、在庫水準も高いことから、インドは今年度も輸出を継続するとみられている。一方で、同国は今年度において既に粗糖92万トン(粗糖換算)を買い付けたとされる。この背景には、モンスーン期の降雨不足による減産予測から年度開始前に国内価格が高い水準にあったこと、また、さとうきびの供給が不足しているマハーラーシュトラ州の製糖工場が、工場の稼働率を高めるため、輸入粗糖を精製していることがある。同年度の最終的な輸入量は100万トン(粗糖換算、同43.5%増)と見込まれ、前月予測から25万トン上方修正された。輸入量予測が上方修正され、また、輸入粗糖の大半は国内で精製後、再輸出されるとみられることから、今年度の輸出量は前月予測を25万トン上回る130万トン(粗糖換算、同63.8%減)と予測されている。国際価格の下落で輸出の魅力は低下しているものの、供給過剰による国内価格の下落で製糖企業の収益性が悪化していることから、製糖企業はさとうきび代金を支払うために輸出せざるを得ないとみられている。2012年11月の粗糖・白糖輸出量は前年同月比54.2%減の5万2000トンとなり、主要輸出先はアラブ首長国連邦であった。
政府は2013/14年度のさとうきびの適正価格(FRP:Fair and Remunerative Price)を前年度から23.5%引き上げ、トン当たり2100ルピー(約3990円、1ルピー=1.9円注)と決定した。FRPは実質的な最低価格であり、製糖工場はこれを上回る価格で生産者からさとうきびを買い付けなければならない。 資料:LMC “Monthly Sugar Report, February 2013”
注:1月末日TTS相場
中国
【生産見通し】
砂糖生産量は前年度比17.9%増の見込み
南部のさとうきび生産地、北部のてん菜生産地とも2012/13砂糖年度(10月〜翌9月)の生産は中盤を迎えている。今年度のさとうきび生産量は、作付けが増加し、また単収の増加も見込まれるため、前年度から大幅増加の1億746万トン(前年度比21.4%増)の見通しとなっている。さとうきびの増産により甘しゃ糖生産量は1348万トン(粗糖換算、同18.7%増)に増加の見込みとなっている。ただ、最大産地の広西自治区が1月に大寒波に見舞われ、さとうきびの糖度低下が見込まれるため、甘しゃ糖生産量の予測値は前月から46万トン下方修正された。
てん菜生産量は、作付けの増加を背景に1012万トン(同10.2%増)に増加の見通しとなっている。てん菜の増産により、てん菜糖生産量は119万トン(粗糖換算、同9.2%増)に増加すると見込まれている。
これらのことから、2012/13年度における中国全体の砂糖生産量の予測値は前月から46万トン下方修正されたものの、前年度から大幅増加の1467万トン(粗糖換算17.9%増)と予測されている。
【貿易・政策動向等】
増産が見込まれる一方、輸入も継続する見通し
2012/13年度の砂糖消費量は、前年度をわずかに上回る1522万トン(粗糖換算、前年度比2.2%増)と予測されている。中国は今年度大幅な増産が見込まれ、また、在庫水準も高いことから、年度開始当初は、今年度の輸入は低水準にとどまるとみられていた。しかしながら、10〜12月の累計砂糖輸入量は既に80万トン近くに達しており、輸入は今後も継続するとみられている。この背景には、国際砂糖価格が軟化するなか、政府が在庫積み増しに動いていることがあるとされる。このような状況を踏まえ、輸入量は210万トン(粗糖換算、同59.7%減)と、前月予測から150万トン上方修正された。2012年12月の粗糖・白糖輸入量は前年同月比45.7%減の26万8000トンとなり、大半はブラジル産であった。
政府は国内砂糖価格の下落を抑制するため、1月末までに国内市場から累計150万トンの砂糖を買い上げた。最低買付価格はトン当たり6100元(約9万1500円:1元=15.0円注)であった。一方で、政府は2011/12年度産の砂糖30万トンの放出を行うと発表しており、既に14万トンが放出された。最低買付け価格はトン当たり5430元(8万1450円)であった。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, February 2013”
注:1月末日TTS相場
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