地域だより
最終更新日:2013年5月14日
2013年4月
第37回沖縄県さとうきび競作会表彰式および第36回さとうきびの日関連行事記念講演が開催された
1 はじめに
沖縄県では、生産技術および経営改善の面で創意工夫し、高単収・高品質な生産をあげたさとうきび農家を表彰し、農家の生産意欲を喚起して沖縄糖業の発展につなげるため、毎年、さとうきび競作会(公益社団法人沖縄県糖業振興協会主催)を行っている。この表彰式が平成25年4月25日、那覇市内で開催された。
また、表彰式に先立ち、さとうきびの日(毎年4月の第4日曜日)の関連行事として、昨年度の競作会で沖縄県第1位(農林水産大臣賞)および第42回日本農業大賞を受賞した宮古島のさとうきび生産者の平良玄序氏と沖縄県農業研究センターの永山敦士主任研究員による記念講演が行われた。
2 記念講演
平良氏は、「わたしのさとうきび栽培」と題して、今日まで培ってきた、さとうきびの栽培方法について講演を行った。同氏は、土作りや苗作り、植え付け後のかん水や施肥などの管理を徹底的に行うことによって、高単収、高品質を維持している。また、農業大賞を受賞したことに奢ることなく、今も目標単収25トン/10aを目指していると力強く語る姿勢が印象的であった。
一方、永山氏は「イネヨトウの交信かく乱法による防除」と題し、イネヨトウの基礎的な知識から沖縄県における被害の実態、交信かく乱法による防除の効果について講演を行った。交信かく乱法は交尾を阻害し、次世代の害虫の数を減らす方法のため、目的とする害虫以外には影響がなく、環境にも優しい防除法であり、大きな効果が得られることが紹介された。
3 競作会表彰式
(1)表彰者の選考方法
競作会では、優良事例調査委員会により、農家の部と多量生産の部の二部門において、優れた成績を上げた農家と生産法人が選考される。また、特別表彰の部として長年にわたるさとうきび生産と地域の指導者として尽力されてきた農家が選考される。
農家の部では、本島北部・中部・南部、宮古、八重山の5地区において、予備審査の成績が優れた農家について全刈審査を行い、その結果、順位が決定される。
多量生産の部では、生産量、品質、工場搬入シェアの面から地域糖業への貢献度が大きいとして、各製糖工場から推薦された農家と生産法人について、面接・審査の結果、一般農家の部、生産法人の部における順位が決定される。
当機構は、多量生産の部の一般農家の部1位と生産法人の部1位に対し、「独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞」として賞状の授与を行っている。
(2)受賞者の紹介
以下、代表的な受賞者を紹介する。
≪農家の部≫
ア 栽培品種
イ 作型
ウ 収量
エ 甘しゃ糖度
オ 甘蔗糖重量×係数 (係数:夏植えを1とし、春植えは1.601、株出しは1.453)
カ 栽培の工夫
〇沖縄県第一位(農林水産大臣賞)
勝連 栄一氏(宮古地区代表 宮古島市上野)
ア 農林21号
イ 春植え
ウ 11,760kg/10a
エ 15.2度
オ 2,862kg
カ 苗は、発芽を促し補植作業を省くため、2節苗を専用のプールで濃い石灰水に一昼夜浸漬する。肥培管理に注意を払い、植え付け時から序草、病害虫防除、かん水などをこまめに行っている。台風通過後は、塩害防止のためのスプリンクラーを使った除塩に努めている。10a当たりの茎数が9,000本と多く、今年度の台風多発の影響による折損茎も少なかった。これにより、茎長3.24m、1本重平均約2.5kgと農林21号の特徴を活かした長くて重い茎で約12トン、甘蔗糖15.2の高単収・高品質を実現した。
〇沖縄県第二位(農林水産省生産局長賞)
宮良 辰氏(八重山地区代表 石垣市白保)
ア 農林21号
イ 夏植え
ウ 16,960kg/10a
エ 16.1度
オ 2,731kg
カ さとうきびと野菜の輪作で土づくりを行い、適期の植え付けと肥培管理を実践し、安定した単収を得ている。今回受賞した圃場は、10a当たりの茎数が6,440本、茎長が4.31mと長く、その結果、約17トンの高単収となった。
〇沖縄県第三位(沖縄県知事賞)
国吉 正男氏(南部地区代表 糸満市豊原)
ア 農林21号
イ 春植え
ウ 8,440kg/10a
エ 15.7度
オ 2,121kg
カ 基本的な肥培管理や病害虫管理に気を配り、深耕、植え付け後かん水、補植を行っている。沖縄本島の平均単収が5トンと悪い中、日頃の肥培管理が功を奏し、10a当たりの茎数が9,500本、茎長が2.21m、単収が8トンと高く、今期の厳しい気象条件の下で健闘した。
≪多量生産の部≫
ア さとうきび生産量
イ 収穫面積
ウ 甘しゃ糖度
エ 栽培の工夫
〇一般農家の部 沖縄県第一位(独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞)
洲鎌 正弘氏(宮古島市)
ア 553,219kg
イ 7.2ha
ウ 14.61度
エ 園芸、畜産を手がけた経験から、最も栽培で力を入れていることは、土を肥沃にすることである。このため、深耕など土地の整備に時間をかけている。また、生産コスト削減のため作業の機械化に力を入れているが、より高い収量を得るために収穫は手刈りにこだわり、ハーベスターの利用は10%と低い。
〇生産法人の部 沖縄県第一位(独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞)
農業生産法人(有)サザンファーム(竹富町西表島)
ア 794,477kg
イ 14.36ha
ウ 15.23度
エ 自作地25ha、借地12haの経営面積機械化体系による省力化栽培を実践している。機械化を徹底して行い、作業ごとにトラクターの役割を決めている。良質な苗の育成に力を入れており、欠株防止に努めることにより補植作業を減らし、省力化を図っている。また、除草作業を重視して、除草剤やロータリーなどによって雑草防除を徹底している。
これらの方々のほかに、地域でのさとうきび栽培が優良と認められた奨励農家4名、特別表彰の部の農家5名が表彰された。
(3)表彰式の様子
表彰式では、受賞者に賞状および副賞の授与が行われた。当機構小菅理事から「独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞」の受賞者にウージ染め(さとうきび染め)の賞状が手渡された。
農林水産省生産局長賞を受賞した宮良氏は、受賞者を代表した挨拶の中で自身のさとうきび栽培について、「2年連続で競作会に参加でき、このような賞を頂いたことに感謝したい。肥培管理はもちろん、雑草の除去にも気を配ってきた。今後も引き続き努力し、県1位を目指したい。」と力強く語った。
4 終わりに
表彰式では、受賞者のみならず、地域の関係者が喜びを分かち合っている姿が印象的だった。また、受賞者からは、来年は今年よりもさらに良い成績を残すといった、強い意気込みが聞こえてきた。現状に満足することなく、向上心をもってさとうきび生産に取り組む姿勢は、今後も地域と沖縄県のさとうきび生産に好影響を及ぼすことに違いない。
今後も、このさとうきび競作会が多くのさとうきび生産者の目標となり、生産者とともに地域の関係者が連携して、他の地域と切磋琢磨し合いながら、沖縄県のさとうきび生産が拡大していくことを期待したい。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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