中種子町における種苗配布システムについて
最終更新日:2013年12月10日
中種子町における種苗配布システムについて
2013年12月
【要約】
中種子町は、優良種苗を確保するため、原苗ほを設置し、町内の種苗生産組合に委託して原苗の増殖を行っている。同組合が増殖した原苗は、原苗生産農家に提供され、同生産農家にて増殖された苗は、さとうきび生産者に販売される。また、中種子町さとうきび生産対策協議会では、この優良種苗のチラシを作成するなど、さとうきび栽培農家への普及啓発に努めている。
はじめに
当町は、鹿児島県大隅半島南端から40キロメートルの南海上にある種子島の中央部に位置し、地勢は緩やかな丘陵地で北部に山林地帯が多く、中央部から南部にかけては比較的平坦な耕地が続いている。
地質は、砂岩および粘板岩の互層で、西海岸に沿って沖積砂土地帯もあり、土の大部分は、南九州特有の火山灰土壌が多く、特殊土壌の地質となっている。
耕地面積は3,295ヘクタールで、町の面積の24.9パーセントを占めている。農家戸数は1,190戸、農業就業人口は1,880人で、農業を基幹産業としている。経営形態としては、さとうきびとでん粉原料用かんしょとの輪作体系が確立されており、それに畜産業を加えた耕畜連携による複合経営が営まれている。また、酪農・タバコなどの専門経営も展開されている。
1.さとうきびの生産状況
当町における平成24年産の収穫面積は、1,441ヘクタール、生産量8万1588トン、10アール当たり収量は、5,662キログラムであった。近年10アール当たり収量は、8トン前後で推移してきたが、平成22年産から低下しはじめ、平成24年産は、最も低い年となった(図1)。
2.種苗配布システムについて
栄養繁殖性のさとうきびは、種苗に病原菌が付着または侵入しやすく、苗とともに伝染し、減収の要因となっている。このため当町においては、優良な種苗を確保するため、昭和56年度から県単事業の「さとうきび優良種苗供給確保事業」を利用し、独立行政法人種苗管理センター鹿児島農場から原原種苗の供給を受け、夏植用80アール(NiF8:50a,Ni22:30a)、春植用240アール(NiF8:150a、NiTn18:40a,Ni22:50a)の原苗ほを設置している。原苗ほは、町から委託を受けた4種苗生産組合が苗の増殖を行う。同組合は、町が指定した栽培暦にのっとった土づくり、肥培管理のほか、節間を短くし倒伏しにくいさとうきび作りに努めている。病害虫の被害には特に気をつけているが、メイチュウの被害を防止することは困難であり、種苗生産の問題となっている。
2年目の採苗ほは、面積が大きくなるため、さとうきび生産農家(採苗ほ申込農家)それぞれで採苗ほ用のほ場を設置し、通常の原料用ほ場とは区別して管理している。
原苗生産農家は、2芽苗を1本当たり6円で供給している。その内、町0.7円、製糖会社0.7円の助成があるため、さとうきび生産農家は1本当たり4.6円で購入している。
採苗ほの設置面積の基準は、町内の翌年度新植面積の1〜2割としており、各農家の採苗ほの面積のとりまとめから、種苗代金の精算まで全て中種子町さとうきび生産対策協議会(事務局は中種子町役場農林水産課)が行っており、苦情処理、未収金防止の対応をしている。
種苗生産は、人力作業が多く手間のかかる割には収益性が低く、取り組む生産者も少ないため役場、農協、製糖会社の定期的な栽培技術指導や生育状況確認などのバックアップが不可欠である。
3.種苗の普及に向けた取り組み
中種子町さとうきび生産対策協議会では、作型ごと(夏・秋・春植え)に実施している採苗ほ申込受付の際、全さとうきび栽培農家へ優良種苗の普及啓発チラシ(図2)を配布しているほか、町内各地区ごと(8地区)で開催される生産者大会などで、優良種苗の情報提供を行っている。
生産者の優良種苗更新への意識は高く、採苗ほ申込面積に対する供給種苗本数は不足傾向で、今後、ニーズにあった安定的な種苗供給が求められている。
おわりに
ここ2〜3年単収の低下が著しいのは、栽培環境の悪化が大きな原因ではあるが、環境的要因以外にハーベスタ収穫が8割を超えようとしている今日、ほ場ロス、株の引き抜きなど機械化が単収低下を招いていることも一因であると考えられる。
もう一度8トン取りを目指すには、優良種苗の植え付けをはじめとした基本技術の励行はもとより、機械化に対応した新しい栽培体系を構築する必要がある。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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