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地域だより

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最終更新日:2013年12月10日

平成25年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会の概要について

2013年12月

那覇事務所 片倉 杉夫
 


 当機構那覇事務所は、平成25年10月17日から18日の2日間、沖縄県島尻郡久米島町で「平成25年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会」を開催した。

 本検討会では、行政機関や国内産製糖事業者、研究者などの各者からさとうきびおよび甘蔗糖製造にかかる情勢報告が行われた。本稿では、この情勢報告の概要を報告する。

1 砂糖政策をめぐる現状と課題について

 農林水産省生産局農産部地域作物課の古田課長補佐から、砂糖政策をめぐる現状と課題について、1)砂糖の需給・価格の動向 2)さとうきび・甘蔗糖の動向 3)精製糖の動向―などの報告があった。

 砂糖の需給・価格の動向については、1)砂糖の消費量は、消費者の低甘味嗜好などを背景に減少傾向で推移していること 2)国内産糖の内外価格差は、てん菜糖で2倍程度、甘蔗糖で5倍程度であり、原料生産段階と砂糖製造段階の両段階において、コスト低減を図る必要があること−などの報告があった。

  さとうきび・甘蔗糖の動向については、1)農家戸数の減少と高齢化が進行しており、依然として零細規模の農家が大宗を占めており、生産構造は極めて脆弱であること 2)さとうきびの生産費は、作業委託の進展などにより物財費が増加傾向、労働費は減少傾向であり、生産費全体としてはほぼ横ばいで推移していたが、近年の生産量の減少に伴い、労働費が減少し、生産費全体としては減少傾向であること 3)甘蔗糖の製造段階では、2年連続の不作による操業率の低下によりコストが上昇していることから、操業の安定化、歩留まりの向上などによりコスト低減を推進する必要があること−などの報告があった。

 このほか、同課亀谷係長から強い農業づくり交付金などの平成26年度予算概算要求の概要について説明があった。なお、平成26年度予算概算要求の概要は、農林水産省ホームページで公表しているので、参考にされたい。

2 平成25年産対象甘味資源作物生産者要件審査申請書の提出状況

 当機構鹿児島事務所の星所長から、平成25年産対象甘味資源作物生産者要件審査申請書の提出状況(9月末時点)について、鹿児島県が8,208名と前年から320名減少していること、沖縄県が15,007名と前年から268名減少していることの報告を行った。

3 沖縄県における担い手育成に向けた取り組み

 沖縄県農林水産部糖業農産課の崎山主任から沖縄県における担い手育成に向けた取り組みについて、1)さとうきび担い手の現状 2)効率的で効果的な防除技術の開発 3)担い手育成の方向性−などの報告があった。

 さとうきび担い手の現状については、1)農家戸数は減少傾向ではあるものの、収穫面積は維持されていること 2)平成19年度に60パーセントを占めていたA−5の生産者について、共同防除体制の構築によりA−3に移行したこと−などの報告があった。

 また、公益社団法人沖縄県糖業振興協会の池原考査役から「さとうきび増産基金事業」の取り組み状況が報告された。

資料:

4 鹿児島県におけるさとうきび経営安定対策などへの取り組み

 鹿児島県農政部農産園芸課の中島技術主幹兼糖業特産作物係長から、鹿児島県におけるさとうきび経営安定対策などへの取り組みについて、1)鹿児島県のさとうきび生産の現状 2)特例農家の本則要件適用への支援 3)営農組織の育成―などについて報告があった。

 鹿児島県のさとうきび生産の現状として、1)鹿児島県の耕種作物の中で、米、さつまいも、茶、ばれいしょに次ぐ産出額であること 2)農家戸数は減少傾向にあるものの、1戸当たりの収穫面積は拡大傾向にあること−などの報告があった。

 特例農家の本則要件適用への支援として、1)制度の周知を図るとともに、基幹作業の委託や共同防除などを推進していること 2)県糖業振興協会では、各島にさとうきび経営安定対策・増産推進員を設置し、戸別訪問などの実施により本則要件適用へのサポートを行っていること−などの報告があった。

5 タイの砂糖生産動向〜国際砂糖価格の下落を背景に〜

 当機構調査情報部の植田調査員からタイの砂糖生産動向について、さとうきび生産の動向および製糖業の動向などの報告があった。

タイの砂糖生産動向の概要はこちら (2013年8月号にリンク)

6 砂糖の価格調整制度とさとうきび生産の課題

 鹿児島大学農学部の坂井准教授から、砂糖の価格調整制度とサトウキビ生産の課題について 1)砂糖の価格調整制度の概要と現状(2)さとうきびの生産性向上について−報告があった。

 さとうきびの生産性向上について、1)さとうきびの生産性向上の特効薬はなく、それぞれの分野で各種対策・技術開発を地道に取り組むしかないこと 2)対策・技術開発の効果は島・農家層によって異なるため、その島で生産性向上がより見込まれる対象を明確にする必要があること−などの報告があった。

砂糖の価格調整制度の概要はこちら (2013年8月号機構からにリンク)
 

7 さとうきび増産に向けた調査と取り組み

 北大東製糖株式会社の銘苅企画係長からさとうきび増産に向けた調査と取り組みについて同社が行うハーベスタ小型化実証事業の概要などの報告があった。北大東島の低単収の要因として、生育本数の少なさと機械踏圧による硬盤層の形成が考えられることから、畦幅の縮小と土壌踏圧の軽減のため、ハーベスタの小型化実証試験を行い、その結果、単収に改善が見られたことの報告があった。

 

8 喜界島のきび栽培 現状と課題

 生和糖業株式会社喜界工場原料部原料課の安原主任から喜界島のさとうきび栽培の現状と課題について、1)収穫面積の確保と単収向上の取り組み 2)土壌病害虫防除の取り組み 3)雑草防除の取り組み−などの報告があった。

 単収向上の取り組みとして、1)フィルターケーキとハカマから製造した堆肥に対する補助(3t当たり4,500円のうち1,500円を補助) 2)株出しほ場の補植用として一芽苗の無償配布−などの報告があった。

 土壌病害虫の防除として、植え付け時の殺虫剤、中耕培土時時の粒剤および乳剤の補助や使用方法の指導の取り組みなどの報告があった。

9 適正なさとうきび機械化体系の推進

 沖縄県農業研究センター農業システム開発班の新里班長から適正なさとうきび機械化体系の推進と題し、効率的な作業機の導入などについて報告があった。

 プラソイラによる耕起作業はプラウに比べて 1)作業能率が1.8倍であること 2)燃料消費が60パーセントであること 3)心土破砕の効果で10パーセントの増収が見込まれること−などについて報告があった。また、牽引木型作業機はロータリー式の作業機に比べて 1)作業速度が2倍以上、作業能率は2倍であること 2)新植の高培土までの作業に適応すること−などの報告があった。

 新里班長は、農作業機械化体系の確立のメリットとして 1)重労働からの解放 2)企業としての展開が可能となること−などを挙げた。また、機械化から派生する課題としては、1)収量に影響する機械的なロス 2)資本整備、経費の増加による農業経営への影響−などを挙げた。少子、高齢化が進むさとうきび生産の現場では、適正な機械化体系の確立に向けてデメリットを最小限にして、メリットを追求することが重要であると報告があった。

10 砂糖・バイオエタノール逆転生産プロセスの開発

 アサヒグループホールディングス株式会社豊かさ創造研究所バイオエタノール技術開発部の小原部長から同社が開発した従来のバイオエタノールと砂糖の生産プロセスと順序が逆の生産プロセスについて報告があった。

砂糖・バイオエタノール逆転生産プロセスの概要はこちら (2013年6月号「逆転生産プロセス」にリンク)

11 南西諸島の未来に向けたさとうきび育種の方向性

 農研機構九州沖縄農業研究センター作物開発・利用研究領域さとうきび育種グループの服部主任研究員から南西諸島の未来に向けたさとうきび育種の方向性と題し、高バイオマス量サトウキビなどについて報告があった。

 高バイオマス量サトウキビ品種は、平成24/25年期のような単収10アール当たり3〜5トンの不作年であっても、株出しで同6〜8トンを上回る単収を実現しており、糖度のハードルを下げることで、不作年でも製糖用品種と同等以上の可製糖量が確保できることの報告があった。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713