4.世界の需給に影響を与える諸国の動向
最終更新日:2014年1月10日
4.世界の需給に影響を与える諸国の動向
2014年1月
ブラジル
【生産見通し】
11月は天候が回復し、製糖は順調
2013/14砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ生産量は、6億5380万トン(前年度比11.0%増)と大幅に増加する見通しである。これは収穫面積が889万ヘクタール(同4.8%増)と増加することや単収の向上による(表2)。サトウキビ生産指標に前月予測から変更はないが、サトウキビのエタノール仕向けの増加や歩留まりの低下見通しにより、砂糖生産量は前月から10万トン下方修正され、3970万トン(粗糖換算、同1.3%減)の見通しである。
また、長雨が続いた10月とは異なり、11月上旬の生産地は乾燥した日が続いたことで、収穫作業は中断することなく、砂糖生産は順調となった。しかし、サトウキビ産業協会(以下「UNICA」という。)によると、11月の同国全体の砂糖生産量は、27の製糖工場が今年度の製糖を終了していること、また、11月下旬の降雨による収穫の遅れから、400万トンと前月から17パーセント減少の見通しである。
UNICAが12月1日に発表した報告では、11月末現在までの中南部地域(同国砂糖生産量の9割以上を占める地域)のサトウキビ生産量は5億6988万トン(前年同期比11.6%増)である。サトウキビの砂糖仕向け割合は、45.6パーセントと前年同期よりも4パーセント低いものの、11月末までのサトウキビ生産量は前年同期よりも多いことから、砂糖生産量は3313万6000トン(同0.7%増)と前年同期とほぼ同水準となっている。また、エタノール生産量は、2425万キロリットル(同18.9%増)と大幅な増加となっている。
【貿易動向等】
サントス港の原料糖倉庫火災の影響で11月輸出量は減少
2013/14年度の輸出量は、前月予測から84万6000トン下方修正され、2700万トン(粗糖換算、前年度比0.9%減)とほぼ前年度と同水準の見込みである。2013年10月の粗糖・白糖輸出量は、266万トン(前年同月比33.3%減)となった(図6)。主要輸出先は中国、米国、インドネシアであった。
なお、10月18日に発生したサントス港(世界最大の砂糖輸出港)の原料糖倉庫での火災による影響から、11月輸出量は230万トン(同20.7%減)と前月から40万トン減少したと報告されている。倉庫の所有者であるコパスカー社は12月4日、この火災による復旧完了は14カ月後の2015年2月を目指すとしている。なお、11月から来年の3月までに、火災被害のあった倉庫のあるターミナルから70万トン、サントス港の別ターミナルとパラナグア港から320万トン、合計390万トンの輸出を予定している。同社は、火災にもかかわらず、2013年の総輸出量を700万トンと見込んでいる。
資料:Agra CEAS Consulting “WORLD SUGAR SUPPLY BALANCE, PRICE AND POLICY TREND ANALYSIS, December 2013”
インド
【生産見通し】
国内サトウキビ価格高により、製糖工場の半分が休業
2013/14砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、前月予測からわずかに上方修正され、528万ヘクタール(前年度比0.1%減)と、前年とほぼ同水準での推移が見通されている(表3)。前年の干ばつの影響は、モンスーンによる降雨で緩和され、単収が上方修正されたことから、生産量は前月見通しから93万トン増加し、3億7514万トン(同1.3%増)となる見通しである。
一方、砂糖生産量は2770万トン(粗糖換算、同1.1%増)と見通されている。サトウキビは価格が高水準であることから、競合作物よりも利益が大きい。そのため、農家は昨年度の刈り残しがあるにもかかわらず、サトウキビの植え付けを行っていることから、前月予測のまま据え置かれている生産量は、今後、上方修正される可能性が大きい。
また、国際砂糖価格が下落しているにもかかわらず、国内のサトウキビ価格が高水準であることから、農家に対する製糖企業の未払額が膨らみ、11月末現在、製糖を開始している工場は208(前年同期比48%減)と前年同期のおおよそ半分である。主要生産州であるマハーラーシュトラ州では、11月に稼働した工場は102(前年同月は149)となり、砂糖生産量は前年同期43万1000トン減の102万4000トンとなっている。
【貿易動向等】
今年度砂糖輸出量は、輸出補助金の導入により前月予測から大幅に上方修正
2013/14年度の砂糖消費量は、2609万トン(粗糖換算、前年度並み)と前月予測から54万4000トン増加見込みとされたものの、依然、4年度連続で生産量が消費量を上回る見通しである。輸出量は、余剰在庫を削減することを目的とした輸出補助金の導入が進められていることから、前月予測から57万3000トン上方修正され、150万トン(粗糖換算、前年度比29.4%増)と見込まれている。輸入量は、前月予測から79万トン下方修正され、100万トン(粗糖換算、同38.7%減)の見込みとなっている。2013年9月の粗糖・白糖輸出量は、7万4000トン(前年同月比53.8%減)となり、主要輸出先はスリランカ、アラブ首長国連邦、サウジアラビアであった(図7)。
資料:Agra CEAS Consulting “WORLD SUGAR SUPPLY BALANCE, PRICE AND POLICY TREND ANALYSIS, December 2013”
中国
【生産見通し】
2013/14年度の製糖は、前年度に比べ遅れ気味
国内砂糖生産の約9割を占める甘しゃ糖の原料であるサトウキビの2013/14砂糖年度(10月〜翌9月)の生産量は、収穫面積が前月予測から上方修正されたことから、1億3169万トン(前年度比3.4%増)と見通されている。しかし、歩留まりが前月見通しより0.1パーセント下げられたため、甘しゃ糖生産量は、前月予測据え置きの1350万トン(粗糖換算、前年度比3.7%増)と見通されている。一方、てん菜生産量は、前月予測から収穫面積および歩留まりが上方修正されたことにより、てん菜糖生産量は117万トン(粗糖換算、同0.4%減)と前月予測から12万トン増加し、前年度とほぼ同水準の見通しとなっている。この結果、今年度の同国全体の砂糖生産量は、前月予測から上方修正され、1467万トン(粗糖換算、同3.4%増)と見通されている(表4)。
今年度は、天候不順による生育の遅れから、てん菜糖および甘しゃ糖のどちらにおいても製糖開始が遅れている。特に、甘しゃ糖の主要生産地である広西チワン自治区では、フィリピンレイテ島を11月に襲った台風30号による豪雨から、76工場の内17工場がいまだ製糖を開始しておらず、10月から11月末現在までの製糖実績(甘しゃ糖のみ)は81万5538トン(粗糖換算、前年同期比12.8%減)と、前年度から大幅に減少している。
【貿易・政策動向等】
砂糖備蓄プログラム、来年以降は廃止を検討
2013/14年度の輸入量は、前月予測から下方修正され、270万トン(粗糖換算、前年度比26.8%減)の見込みとなっている。2013年10月の粗糖・白糖輸入量は47万6000トン(前年同月比271.9%増)となり、主な輸入先はブラジル、豪州、韓国であった(図8)。
同国では、砂糖の国内価格を安定させ、農家の収入を確保する目的から、2年間で約30億米ドル(3兆849億円、1米ドル=102.83円注)の予算を計上し、市場から生産余剰分を隔離備蓄する政策を行ってきた。しかし、この政策の効果は低く、安価な輸入砂糖が市場に入ってくることで国内価格は上昇しなかった。このため政府は、2014/15年度から備蓄プログラムを廃止し、農家に直接補助を行う政策に変更することを検討している。
資料:Agra CEAS Consulting “WORLD SUGAR SUPPLY BALANCE, PRICE AND POLICY TREND ANALYSIS, December 2013”
注:12月12日TTS相場
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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