地域だより

那覇事務所　片倉　杉夫
 

伴　加奈子
 

　 平成26年1月29日〜30日、さとうきび病害虫防除対策情報交換会が内閣府沖縄総合事務局および九州農政局の主催で開催された。

　近年、病虫害、特にイネヨトウによる芯枯れ被害がさとうきびの初期生育や収量へ大きな影響を与えている中で、沖縄・鹿児島両県では基本的な防除対策、交信かく乱剤などの新たな防除技術の導入などにより、防除体制を確立しつつある。このような状況を踏まえ、両県における病害虫の発生状況、防除指導および試験研究などに関する情報共有、諸課題の解決に向けた意見交換を行うことを目的として、1日目に情報交換会、2日目に現地検討会が行われた。

　1日目は、那覇市の那覇第2地方合同庁舎会議室において、情報交換会が行われた。

　冒頭、内閣府沖縄総合事務局農林水産部消費・安全課の当山課長から、「平成23年産さとうきびの大減産の要因となったイネヨトウについて、沖縄・鹿児島両県において防除体制を確立しつつある状況を踏まえ、イネヨトウをはじめとするさとうきび病虫害の発生状況などの情報交換を行いたい」とのあいさつがあった。

　はじめに、両県から、イネヨトウを中心にさとうきび病虫害について、粒剤、乳剤、交信かく乱剤による一斉防除などにより一定の被害軽減効果があったとの報告があった。

　沖縄県で実施された交信かく乱剤による一斉防除については、おおむね実施以降3カ月間以上の交信かく乱状態を維持することができ、次世代数の密度低減に寄与した。なお、各地域で継続の要望が大きいが、定期的に実施するための予算確保が難しいなどの課題も併せて示された。

　さらに、両県の試験研究機関より、さとうきび病虫害関係の試験研究の取り組み状況について報告があり、交信かく乱剤による防除の低コスト化に向けた防除技術の確立や、新規薬剤の登録状況などのほか、イネヨトウの薬剤感受性の低下を示したデータも示された。

　参加者からは、イネ科雑草などがイネヨトウの発生源となっていることから、薬剤による防除だけでなく、除草など栽培管理も含めて総合的に防除体制を確立するべきであるとの意見が出された。

　海外事例調査として、当機構調査情報部の植田職員が「米国のさとうきび生産事情〜米国ルイジアナ州のメイチュウ類防除への取り組み〜」と題し講演を行った。ルイジアナ州における抵抗性品種の使用、モニタリング調査結果に基づく農薬散布などのメイチュウ類防除対策について報告され、参加者からは特に抵抗性品種に関する質問が多く、海外における病虫害防除に関する関心の高さがうかがえた。

　 最後に、内閣府沖縄総合事務局から、平成24年度に実施されたさとうきび全島適正防除推進事業や、平成25年度に措置されたさとうきび増産基金事業について取り組み状況が報告されたほか、平成25年度補正予算で措置された甘味資源作物安定生産体制緊急確立事業の中で、新技術を活用した防除体制確立の事業が実施できることが紹介された。

　2日目は、糸満市の沖縄県農業研究センターおよびさとうきびほ場のほか、豊見城市の翔南製糖の視察が行われた。

　沖縄県農業研究センターでは、病虫管理技術開発班の永山主任研究員から沖縄を含む日本各地のイネヨトウの種の保存について説明があった。

　その後、ほ場で使用されているイネヨトウの交信かく乱剤の説明があった。

　交信かく乱剤の中には、雌が交尾する際に雄を誘引するために放出する性フェロモンと同じ匂いが封入されている。そのチューブから雌と同じ匂いがゆっくりと放出される。このチューブを地域全体に張り巡らせることによって、雌がどこにいるのかを雄に分からないようにし、交尾を阻害する方法である。

　チューブを張り巡らすのに人手がいるという問題があるが、設置を進めたいと説明があった。

　実際に、交信かく乱剤を設置して実証試験を行っているほ場を視察した。試験区で交信かく乱剤と5つのフェロモントラップを設置しているとの説明があった。

　今回の情報交換会を通じてさとうきび病害虫に対する交信かく乱剤などの新たな防除技術について、関係機関で情報の共有化が図られたものと思われる。