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〜第22回ISOセミナー報告を中心に〜

主要生産国および世界の砂糖需給・政策の動向
〜第22回ISOセミナー報告を中心に〜

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最終更新日:2014年4月10日

主要生産国および世界の砂糖需給・政策の動向
〜第22回ISOセミナー報告を中心に〜

2014年4月

調査情報部 審査役(現 野菜需給部需給業務課 参与) 河原 壽
調査情報部 植田 彩

【要約】

  • EUの2013/14年度砂糖生産量は、域内主要生産国のてん菜が不作と見込まれていることから、前年度比6.2パーセント減の1654万トン(粗糖換算)とされる。
  • 2017年9月末で廃止となるEUのてん菜最低価格およびてん菜の生産割当制度により、域内の砂糖生産は増加すると見込まれている。
  • また、異性化糖生産割当廃止による域内砂糖需給への影響については、さまざまな見立てがあり、EU砂糖需給が国際需給に与える影響は大きいことから、今後のEUの動向が注目されている。
  • ブラジルのサトウキビ生産の見通しは、エタノール需要の動向が大きく関係している。今後のエタノール需要動向は、ガソリン価格に対するエタノール価格の優位性に左右される。また、エタノール価格が優位である地域は、現在、拡大しつつある。
  • メキシコと米国の間には北米自由貿易協定(NAFTA)が結ばれており、米国へメキシコ産砂糖が、メキシコへ米国産異性化糖が輸出されている。メキシコの砂糖生産は今後増産する見込みの中、米国ではメキシコ産砂糖輸入量増加により、国内砂糖価格が下落していることから、メキシコは米国向けの輸出拡大は見込めないとして、新たな市場開拓を画策している。

はじめに

 国際砂糖機関(ISO:International Sugar Organization)による第22回ISOセミナーが、2013年11月26日から27日までの間、英国ロンドン東部のカナリー・ワーフで開催された。今回の会議の主要議題として「甘味資源作物の商業的成功のための投資、技術革新、効率」が示され、これに基づく主要砂糖生産国ごとの具体的な手法が提示された。また、最近の世界的な砂糖の供給過剰にもかかわらず、砂糖価格が高水準で推移する中で、主要生産国(ブラジル、インド、EU、タイ、中国、米国、メキシコ、豪州)の砂糖産業の戦略や政策に関し、砂糖およびエタノール生産の関係も加味した言及があるなど、各国間の詳細な情勢を把握できるものとなった。

 参加国は、EU各国以外にアジア、アフリカ、南米、北米など世界66カ国で、砂糖関係団体、製糖企業、政府機関などを中心に総勢440名が出席した。

 なお、本稿中の年度は、国際、EU、米国の砂糖年度は10月〜翌9月、メキシコの砂糖年度は11月〜翌10月、ブラジルの砂糖年度は4月〜翌3月であり、単位換算は1米ドル=102.94円、1ペソ=8.69円を使用した。また、世界についてはISO、EUについてはISO、欧州委員会、欧州てん菜生産者連盟(CIBE)、欧州砂糖製造者協会(CEFS)、ブラジルについては同国サトウキビ産業協会(UNICA)、DATAGRO社、メキシコについてはメキシコ砂糖機関(MSC)、米国については同国砂糖連盟(ASA)の統計資料を使用した。

注:2月末日TTS相場

1. EUの砂糖需給および政策の動向

(1)需給動向

 ISOは2013/14年度のEUの砂糖需給について、生産量は1653万5000トン(粗糖換算、前年度比6.2%減)、消費量はEU経済の回復を踏まえて2042万4000トン(粗糖換算、同1.9%増)、輸出量は135万トン(粗糖換算、同8.8%減)と予測している(表1)。また、域内の砂糖生産の減産および需要の拡大により、同年度の輸入量は487万9000トン(粗糖換算、同13.9%増)と前年度から大幅増を見込んでいる。なお、欧州委員会によるEUの同年度てん菜収穫面積予測では、146万3000ヘクタール(同2.3%減)と前年度からの微減が見込まれている。
 
 欧州委員会の2014年1月予測では、EUの主要砂糖生産国であるドイツでは、原料となるてん菜の播種時期となる3、4月からの3カ月間、低温および多雨による気象条件の悪化から、単収減となったことに加え、エタノールへの仕向け割合が増加したことにより前年度比で減産見込みとなり、2013/14年度の砂糖生産量は、397万3000トン(白糖換算、同1.2%減)としている(表2、3)。また、ポーランドでは、良好な天候条件であったものの、てん菜収穫面積の減少により砂糖生産量は168万9000トン(白糖換算、同7.4%減)を見込んでいる。一方、フランスおよび英国は、てん菜収穫面積の拡大および単収増により砂糖生産量をフランスで440万4000トン(白糖換算、同2.4%増)、英国で128万3000トン(白糖換算、同8.7%増)と前年度から増加の見込みである。

 なお、EUでは、欧州委員会による生産割当制度に基づき、各加盟国に割り当てた数量内での生産が行われている。域内の砂糖生産は、てん菜を原料としたてん菜糖が主体となるが、その他、ACP(EUの旧植民地であったアフリカ、カリブ、太平洋諸国であるAfrican, Caribbean and Pacific Group of Statesの略)/LDC(後発開発途上国のことで、Least Developed Countryの略)諸国などからの輸入粗糖を原料とした精製糖の生産も行われている。
 
 図1は、EUの粗糖輸入量の推移である。EUの粗糖および白糖の輸入先のほとんどは、ブラジルおよびACP/LDC諸国であり、2012年の輸入量は283万トン(粗糖換算、前年比15.1%減)であった。2009年10月以降、EBA(Everything But Arms)の原則(LDC諸国で生産される武器・爆弾以外の全産品に対し無税、割当制限なしで市場参入を認める措置)により、LDC諸国からの輸入は自由化(ただし、年間輸入量が前年よりも25パーセント以上増加した場合には、セーフガード措置が発動)されている。一方、ACP諸国からの輸入については、2015年以降の自由化を予定しているが、 1)ACPの中でLDCである国からの合計輸入量が350万トンを越えた場合 2)ACPの中でLDC以外の国からの合計輸入量が160万トンを越えた場合−のいずれかで、セーフガードが発動されることとなっている。2008年以降の国際砂糖価格上昇を背景にACP諸国はEU以外への輸出を増加させており、EUの2012年ACP産粗糖の輸入量は78万トン(粗糖換算、2008年比33.9%減)となった(図1)。
 

(2)政策動向

 かつてEUは、ブラジルに次いで年間500万トン以上の砂糖輸出量を誇っていた。しかし、2006年のCAP(共通農業政策:Common Agricultural Policyの略)改革により、砂糖制度が変更され、域内の砂糖生産量が大幅に縮小したことで純輸入国に転じ、現在もその状況は続いている(図2)。EUは、世界の主要な砂糖生産および消費地域であることから、2006年の制度改革が国際需給に与えた影響は多大なものであった。

 2006年の制度改革の実施背景として、 1)輸出補助金による砂糖の輸出およびACP諸国からの輸入原料糖により生産した砂糖の再輸出を違反とするWTO(世界貿易機関、World Trade Organization)裁定 2)高水準の砂糖介入価格によるてん菜生産から域内の砂糖生産を制限する必要性が生じたこと 3)EBAの原則に基づくLDC諸国および2015年開始となる経済連携協定(EPA)に基づくACP諸国からの輸入自由化−があった。

 この結果、近い将来、域内の砂糖需給バランスが崩れることが予想されはじめたことから、欧州委員会は方針を見直し、 1)砂糖、異性化糖、イヌリンシロップ生産割当数量の削減 2)介入価格制度の廃止、参考価格の導入 3)白糖、粗糖、てん菜の指標価格の引き下げ 4)輸出払戻金制度の廃止など−を決定した。
 
 さらに、欧州委員会では、2011年にCAPの改革案を公表し、現行のてん菜および異性化糖の生産割当制度とてん菜の最低価格を、2015年9月に廃止する提案を行っていた。そして、2013年6月26日、欧州委員会、欧州議会、EU諸国が2年余りの議論の末、2014-2020年のCAPに関する合意に到達した。この決定を受け、今回のISOセミナーで、業界団体からいくつかのコメントがあったので紹介する。

 欧州てん菜生産者連盟(CIBE)は、てん菜の最低価格および生産割当廃止により域内の砂糖市場が自由化し、砂糖生産は増加するとしている。そのため、域内の砂糖価格が下落することから、てん菜と他作物との競合、特に穀物などに対する価格競争力の強化を課題として取り上げている。

 一方、欧州砂糖製造者協会(CEFS)もCIBEと同じく、域内の砂糖生産は増加と予測している。そのため、EUの砂糖輸出量は増加し、域内の製糖企業は国際価格競争力の強化が課題としている。なお、CEFSによると、国際価格競争力のあるブラジルの白糖1トン当たりの輸出(FOB)価格をEU産と比較した場合、為替変動による影響があるものの、2002/03年度はブラジル産に対してEU産のFOBが125パーセント高であったのに対し、2010/11年度は35パーセント高にまで縮小しており、徐々にではあるがEUは国際価格競争力を高めつつあるとしている。

 さらに、EUを主な輸出地域としているACP/LDC諸国の砂糖生産にも多大な影響を与えるとされている。

 また、EUでは、異性化糖についても砂糖同様に、生産割当に基づく生産が行われており、2013/14年度の生産量(割当外含む)は、77万トン(乾燥重量、前年度比4.8%増)と予測されている(表4)。なお、生産量は域内消費量とほぼ一致している。

 欧州委員会が2013年12月に公表した「Prospects for Agricultural Markets and Income in the EU 2013-2023」では、域内の異性化糖生産の自由化により、2023年の生産量は現在の約3倍となる240万トン、同年までの域内の年間1人当たりの砂糖および異性化糖の合計消費量は、約40キログラムのほぼ横ばいでの推移が予測されている。
 
 異性化糖についても、てん菜と同様に、2017年9月に生産割当の廃止が決定していることから、今回のISOセミナー終了後、砂糖関係コンサルタント二社に対し、EU砂糖生産に与える影響について聞き取りを行ったところ、両社ともに異性化糖の生産増加を予測した。一方、異性化糖生産量の増加による域内砂糖生産への影響については、二社で意見が分かれたところである。一社は、域内の砂糖消費が安価な異性化糖にシフトし、砂糖の大量余剰が発生することから、域外への輸出やエタノール生産への仕向け拡大を予想している。他社は、主要砂糖生産国の砂糖消費が異性化糖へシフトすることは難しく、砂糖の余剰発生は限定的であるとしている。この要因として、異性化糖の生産国は、トウモロコシが生産されているハンガリー、ブルガリアといった中欧地域やスペイン、イタリアといった南欧地域であり、フランスやドイツ、英国などの主要砂糖消費地までの輸送コストを含めると、異性化糖の価格優位性が低いことを挙げた。

2. ブラジルの砂糖需給動向

(1)サトウキビ栽培の動向

 ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)の報告によると、サトウキビの栽培は、主にサトウキビ農業生態学的ゾーニング制度(agro-ecological zoning)に基づく、感受性生物群(The most sensitive biomes)地域(アマゾンおよびパンタナル地域など)や原生植物が生息する地域(セラードおよびカンポス地域など)以外の地域で行われている。また、サンパウロ州では、収穫機を導入することで、従来実施してきた収穫後の焼畑の廃止を進めており、すでに73パーセントのほ場で収穫機が導入され、環境に配慮したサトウキビ生産が進められているとしている。2012年のサトウキビ作付面積975万ヘクタールに対し、政府が上記の環境に配慮したサトウキビ栽培を認めている農地面積(他の作物生産地を含む)は6470万ヘクタールであることから、引き続き生産拡大の余地は大きいとしている。

 同国の2020/21年度の砂糖生産予測では、世界の砂糖消費量の平均増加率を2.2パーセント(1995/96年度〜2013/14年度)、また、ブラジル産砂糖輸出が世界の輸出量の50パーセントを占めることを前提とした場合、2012/13年度の砂糖生産量3830万トン(輸出:2680万トン、国内消費:1150万トン)が、2020/21年度には5110万トン(輸出:3740万トン、国内消費:1370万トン)に増加するとしている。また、この増加予測分の砂糖に相当するサトウキビ生産量は1億トンに達するとしている。このサトウキビ生産量1億トンに相当する作付面積を試算すると、2012年作付面積から136万ヘクタール増加することになる。

 さらに、砂糖およびエタノール(含水および無水)需要予測を加味した2020/21年度サトウキビ生産予測では、小型乗用車に占めるフレックス車(ガソリンへのエタノール混合割合を問わずに燃料として利用できる車)の割合が、2012年の57パーセントから2020年には81パーセントにまで拡大、二輪車に占めるフレックス車の割合が、2012年の15パーセントから2020年には61パーセントに拡大すること、加えてブラジル砂糖輸出量が世界全体の50パーセントを占めることを前提とし、必要とされる2020/21年度サトウキビ生産量について、次のシナリオを作成している。
 シナリオ1
 エタノール消費量が小型乗用車燃料消費量の36パーセントを占め、エタノール輸出量が60億リットルの場合、サトウキビ生産量8億8600万トン(2013/14年度生産量見込み6億4000万トンの1.38倍)
 シナリオ2
 エタノール消費量が小型乗用車燃料消費量の50パーセントを占め、エタノール輸出量が130億リットルの場合、サトウキビ生産量12億トン(同1.88倍)


 2020/21年度に予測される、これらサトウキビ生産量に必要な収穫面積は、近年の単収実績である1ヘクタール当たり80〜85トン(かんがいなし、試算時の単収は83トン)とした場合、シナリオ1では1067万ヘクタール、シナリオ2では1446万ヘクタールとなる。また、作付面積に対する収穫面積比率が88パーセント程度であることから、作付面積はシナリオ1で1213万ヘクタール、シナリオ2で1643万ヘクタールとなる。従って、同年度予測されるサトウキビ生産量に必要な作付面積の増加分として、2012年の作付面積975万ヘクタールを差し引いて、シナリオ1では238万ヘクタール、シナリオ2では668万ヘクタールと試算される。

  2020/21年度に予測されるサトウキビ作付面積増加分の仕向け割合は、シナリオ1では砂糖向けが136万ヘクタール、エタノール向けが102万ヘクタール、シナリオ2では砂糖向けが136万ヘクタール、エタノール向けが532万ヘクタールと試算される。

(2)エタノール生産の動向

 今後のエタノールの生産動向について、ブラジルの調査会社DATAGRO社から、次の報告がなされた。

 エタノール生産量(TRS換算)は、1975/76年度の710万トンから2013/14年度には8660万トンと、大幅な増加が見込まれている。エタノール需要量は、1999/00年度まではエタノール専用車の普及台数に大きく左右されていたが、2003年以降、小型乗用車に占めるフレックス車の割合が拡大しており、2013年10月現在で、その割合が61パーセントに達している。このため、現在のエタノール需要量は、フレックス車のエタノール消費量に大きく左右されている(図3)。さらに、フレックス車は、エタノール混合割合が自由なこと、また、エタノールのみとした場合の燃費効率はガソリンの70パーセント相当であることから、エタノール価格がガソリン価格の70パーセント未満であれば、エタノール需要量は短期間で増加し、70パーセント以上であれば、エタノール需要量は短期間で減少する状況にあるとしている。

注:1トン当たりの回収糖分の値のことで、:Total Reducing Sugarの略
 
 また、DATAGRO社は、今後のエタノール生産・消費動向に影響を与える要因として、ガソリン価格政策およびガソリン価格に対するエタノール価格優位性地域の拡大を挙げている。

 1) ガソリン価格政策の動向
 ブラジルの砂糖生産に大きな影響を持つエタノール生産は、政府のエネルギー政策、特にガソリン価格政策に左右される。政府は、インフレ率の上昇を抑えるため、ガソリン価格の抑制を図っているが、その抑制は、ブラジル最大のペトロブラス石油公社をはじめとする石油企業各社の収益を圧迫している。このため同国政府は、2014年1月、ガソリン卸売価格で4パーセント、ディーゼル価格で8パーセントの引き上げを承認したが、ガソリン価格の上昇は、エタノール消費の拡大をもたらすこととなる。

 2)ガソリン価格に対するエタノール価格優位性地域の拡大
 現在のガソリン価格に対し、エタノールが優位性を持つ地域は主要生産地域に限定されている。DATAGRO社によれば、エタノール価格がガソリン価格に対して優位性を持つ地域として、マットグロッソ州、ゴイアス州、サンパウロ州、パラナ州、ヨナスジェライス州の一部地域のみとしている(図4)。同社は、今後、ガソリン卸売価格が上昇した場合には、エタノールがガソリンに対して優位性を持つ地域は拡大し、エタノール消費量も拡大するとしている。
 

3. メキシコおよび米国の砂糖需給と政策の動向

 メキシコ砂糖機関(MSC:Mexican Sugar Chamber)の報告によれば、同国の砂糖生産量は、収穫面積の増加や良好な天候により、2012/13年度は大幅な増加となり、2013/14年度は小幅な減少を予測している(図5)。同国の甘味料消費量(砂糖消費量+異性化糖消費量)は、人口増加などを要因に、砂糖生産量を上回る状況が続いていたが、2012/13年度以降、2年連続の砂糖生産の大幅な増加により、国内砂糖価格(estandar糖:糖度99.4〜99.8の白糖)は、1キログラム当たり10.8ペソ(2011/12年度平均93.9円)から7.2ペソ(2012/13年度平均62.6円)に下落し、2012/13年度以降、米国への輸出は急増している(図6)。

 なお、米国への砂糖輸出は、北米自由貿易協定(NAFTA)に基づき、2008年1月より両国間の砂糖、異性化糖の貿易が自由化されたことで、メキシコから米国への砂糖輸出は無関税となり、輸出量の制限もなくなった。また、米国からメキシコへの異性化糖の輸出も無関税となり、輸出量の制限もなくなっている。
 
 一方、米国砂糖連盟(ASA:American Sugar Alliance)の報告によれば、メキシコからの大幅な輸入増加により、米国内の砂糖価格は低下している。このため、米国政府は、砂糖在庫の積み増しによる財政負担を避けるべく、国内産砂糖をエタノール生産者に販売する、砂糖エタノールプログラムを実施した。当該プログラムにより、2013年8〜9月に13万トン、11月に19.7万トンがエタノール向けに販売された。

 このような状況を受け、ASAとMSCは、米国、メキシコ両国の砂糖政策の統合やメキシコの砂糖市場安定政策の必要性を指摘している。甘味料をめぐるメキシコと米国の貿易は、砂糖がメキシコから米国へ輸出され、異性化糖が米国からメキシコへ輸出される状況となっている(図7)。メキシコの一人当たりの砂糖消費量は減少傾向にあるものの、人口増加により、砂糖年間消費量は4000万〜4400万トン、異性化糖の年間消費量は150〜170万トンで推移しているが、2013年9月に高カロリー食品(100グラム当たり275キロカロリー以上)に8パーセント、甘味飲料へ1リットル当たり1ペソ(8.69円)の課税が実施されたことで、砂糖消費の減少が懸念されている。これを受けメキシコ政府は、米国以外への砂糖輸出を推進しているとされており、今後のメキシコから米国への砂糖輸出の動向が注目されている。

注:製糖業者に対する砂糖を担保とした償還請求権のない融資制度に基づく現金返済の代替措置としての担保「質流れ(Loan forfeiture)」が確保できる水準
 

4. 世界砂糖需給の動向

 2014年2月、ISOによる四半期毎の世界砂糖需給予測が報告された。この報告によると、2013/14年度の砂糖生産量は1億8134万7000トン(粗糖換算、前年度比0.9%減)、消費量は1億7713万4000トン(粗糖換算、同2.3%増)、輸入量は5383万2000トン(粗糖換算、同3.3%減)、輸出量は5732万8000トン(粗糖換算、同1.2%減)としている(表5)。生産量は2008/09年度以来の減産見込みとなっており、その要因としては、粗糖換算でタイが129万トン、パキスタンが56万トン増加する一方、EUが109万トン、ウクライナが107万トン、メキシコが85万トン、インドが80万トン、ブラジルが80万トン減少することによる、としている。 

 また、消費量は、新興国の砂糖需要が拡大していることから増加見込みである。2010/11年度以降、生産量から消費量を引いた生産余剰量は増加していたものの、2013/14年度見込みの生産余剰量は減少に転じ(図8)、期末在庫率(消費量/期末在庫)は42.2パーセントと前年度から0.5ポイント減少する見込みである。
 

まとめ

 現在の国際砂糖価格は、2008年以降の高騰から一服したものの、依然高水準にあり甘しゃ糖を中心に砂糖生産は拡大している。また、人口の増加やアジアを中心とした新興国の経済発展に伴い、砂糖消費も増加している。

 一方、世界最大の砂糖生産および輸出国であるブラジルでは、サトウキビはエタノール生産と砂糖生産の双方に仕向けられることから、両品目の需要の動向が注目される。さらに、EU域内の生産拡大に伴う輸入国から輸出国への転換の可能性やメキシコの砂糖生産拡大による輸出国として台頭など、国際砂糖需給の変動要因が大きくなっており、各国の砂糖需給と政策について、今まで以上に細かな観察が必要とされている。

 世界の砂糖需給に影響を与える要因は多様化してきていることから、分みつ糖供給量の65パーセントを輸入糖で占めているわが国にとって、主要生産国の動向はこれまで以上に重要となっている。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713