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地域だより

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最終更新日:2014年5月30日

平成26年産てん菜移植状況等現地圃場調査について

2014年5月

札幌事務所 所長 石井 稔

はじめに

 北海道のてん菜の栽培は、生産者の高齢化による労働力不足や育苗作業などの投下労働時間が多く、収穫までの管理期間が長期間にわたるなど栽培に労力がかかるとして、近年、てん菜の栽培を行わない生産者が増加していることに伴い、作付面積の減少に歯止めがかからない状況となっている。

 今般、道内てん菜関係者の今後の参考に資するため、移植作業や労働力の軽減を図るために先進的に取り組んでいる受託作業組織などを対象に実施する、一般社団法人北海道てん菜協会主催の「平成26年産てん菜移植状況等現地圃場調査」が実施された。5月12〜13日に実施された同調査に同行したので、以下のとおり報告する。

十勝およびオホーツク管内の状況

1.十勝鉄道

 帯広市は、積雪寒冷という気象条件にありながらも、恵まれた土地条件により、輪作体系に基づく、小麦、てん菜、豆類、ばれいしょを軸とする畑作をはじめとする大規模で機械化された土地利用型農業が展開されている。

 同市にある十勝鉄道鰍ヘ、帯広市農業委員会から農業参入の認可を受け、平成25年4月から作付面積の回復とともに原料の確保を目的として、てん菜の栽培を行っている。また、認定農業者となり、JA帯広かわにしの組合員として、農業者として事業の展開を行っている。

 十勝鉄道鰍ヘ、日本甜菜製糖鰍ェてん菜の試験栽培などに利用する同市の清川農場他の耕作地を借地し、てん菜を栽培している。

 平成25年産については、作付面積4.09ヘクタール、1ヘクタール当たりの収量66.63トン、根中糖分15.1%の実績となり、平成26年産の作付面積は、約7ヘクタール予定している。

 平成26年産については、4月下旬から定植作業が始まり、順調に進捗しているものの4月上旬以降からまとまった降雨がなく、圃場が乾燥状態となっているため、活着不良となっている圃場も見受けられた。

2.ホクレン農業協同組合連合会における受託作業の取り組み

 釧路の弟子屈町は、草地、放牧地およびばれいしょ、てん菜、小麦、蕎麦の作付が多い地域であるが、昨今は、高齢化に伴う離農や酪農専業家が増加していることを背景に、てん菜の作付戸数および作付面積が減少傾向となっている。

 一方、高齢化による離農からてん菜の一戸当たりの作付面積は、20ヘクタール程度まで拡大され、これ以上の規模拡大は、作業を行う上で、困難な状況となっている。

 このため、ホクレン農業協同組合連合会(以下「ホクレン」という)は、てん菜の作業を行う上で、特に労力が必要となる移植作業を受託することで、作業の省力化と作付面積の拡大を図り、てん菜の安定生産を推進することを目的として、平成24年度から試行的にてん菜の作付支援を実施している。

 平成26年度については、ホクレンが事業実施主体となり、「北海道・南九州畑作物農業機械等リース支援事業」を活用し、移植作業の受託を実施している。

 受託作業の内容は、苗取・施肥・移植である。移植作業については、5月7日から5月の下旬を予定しており、4戸の生産者を対象に、全体で33ヘクタール程度の作業支援を行っている。なお、平成26年度の同事業で全自動移植機(4畦)を導入し、作業については、近隣の運送会社に委託している。

 平成28年産までに50ヘクタール受託することを目標とし、生産者の生産意欲の向上を図ることとしている。

 弟子屈町(JA摩周湖)の生産者がてん菜を出荷するホクレン中斜里製糖工場区域は、4月25日から定植作業が開始され、5月7日現在の進捗率は、31%となっている。
 

3.農業生産法人 鞄怏h

 オホーツク管内の置戸町は、酪農が盛んな町で、牧草やデントコーンの作付が多く、同町の作物作付面積の約6割を占めている。

 昨今は、草地の更新がなかなか進まない状況にあり、収量の低下および雑草の混入による飼料価値の低下が懸念されている。農業生産法人 鞄怏hは、平成26年産から、草地更新のタイミングで酪農家から草地を借地して、てん菜の栽培を行っている。

 なお、借地した圃場は、てん菜を2年間栽培した後、鞄怏hに対し圃場を貸した酪農家が、デントコーンを栽培することとしており、これに伴い配合飼料代の削減が可能となる仕組となっている。

 てん菜の栽培に係る定植作業や直播の播種などの作業については、近隣の作業組織などに、収穫作業については、近隣のてん菜作付生産者にそれぞれ委託し、糖業者、農業生産法人、酪農家、作業組織などが連携を図り、てん菜の作付面積の確保に努めている。

 平成26年産の置戸町での作付面積は、21ヘクタールで、うち直播が8ヘクタールとなっており、5月1日から定植作業、5月3日から直播の播種作業がそれぞれ開始された。5月13日現在の進捗率は、定植80%、直播100%(作業完了)となっている。
 

おわりに

 てん菜は、畑作物の中でも投下労働時間を費やす作物で、特に移植作業は、高齢の生産者にとっては厳しい作業となっており、受託組織および糖業者による作業支援は、有効な手段と思料する。

 また、生産者の高齢化により離農する生産者の増加などに伴い、全道の作付面積は昭和59年産の7万5117ヘクタールをピークに年々減少し、平成25年産では、5万8188ヘクタールとなり、1万6929ヘクタール減少している現況にある。

 今回の現地調査を通じて、作付面積の回復に向けた、農業生産法人および糖業者の取り組みや耕畜連携の取り組みは、引き続き実施することが重要であると思料する。

 なお、5月14日現在、定植作業や直播の播種作業は全道でほぼ終了している。平成26年産の生産量が昨年よりも増加することを期待したい。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713