鹿児島県における平成25年産さとうきびの生産状況および実績について
最終更新日:2014年7月10日
鹿児島県における平成25年産さとうきびの生産状況および実績について
2014年7月
【要約】
鹿児島県の平成25年産さとうきびの生産量は、3年ぶりに50万トンを上回ったものの、与論島、沖永良部島を中心に、梅雨明け以降の長期にわたる干ばつや10月の台風などの被害が大きかったことから、10アール当たり収量は平年の約9割にとどまるなど、不作からの回復には至らなかった。
1. さとうきびの位置づけ
さとうきびは、他の作物に比べて、台風や干ばつによる影響に強く、鹿児島県南西諸島の約7割の農家が生産している基幹作物であり、製糖業など関連産業とともに、地域経済を支える重要な役割を担っている。
さとうきびの平成24年農業産出額は、23年の約96億円から約5%減少し、約91億円で耕種部門の第6位となっている。(1位:米、2位:茶(生葉)、3位:さつまいも、4位:ばれいしょ、5位:荒茶)
鹿児島県では、国の「さとうきび増産プロジェクト基本方針」に基づき、各島および県段階における生産目標や取り組み方向を示した「さとうきび増産計画」を18年6月に策定し、27年産を目標年として、品目別経営安定対策に対応した大規模経営体や担い手の育成などによる経営基盤の強化、機械化や地力増進による生産基盤の強化、病害虫防除対策の推進や優良品種の育成・普及などの生産技術対策など、各般の施策を推進している。
また、平成23年産以降の不作に対応して、早期の生産回復を図るため、当協会に造成された「さとうきび増産基金」を活用し、面積確保・単収向上・機械化の推進などによるさとうきびの増産や、製糖関連施設の整備による製糖工場の経営安定などを支援している。
2. 平成25年産さとうきびの生育状況
(1)種子島地域
ア. 生育初期〜分けつ期
生育初期は、比較的、気温・日照条件に恵まれ、順調に発芽(萌芽)・生育したものの、6月の長雨・日照不足により生育が遅れ、茎数も少なかった。
イ. 伸長期
梅雨明け以降の高温・多照条件により順調に生育していたが、その後、長期の干ばつの影響などにより、茎伸長は緩慢に推移した。
ウ. 登熟期
9月までの少雨が影響し、登熟開始が早まった。
(2)大島地域
ア. 生育初期〜分けつ期
発芽(萌芽)や初期生育は、島ごと、作型ごとにばらつきが見られたものの、茎伸長、分けつともに、おおむね順調に経過した。
イ. 伸長期
与論島、沖永良部島を中心に、梅雨明け以降の長期にわたる干ばつの影響により、生育が著しく抑制されたものの、8月下旬以降の降雨により、徐々に生育は回復傾向にあった。
ウ. 登熟期
与論島・沖永良部島を中心に、10月に襲来した3つの台風被害が大きく影響し、生育・登熟が抑制された。
3. 平成25年産さとうきびの生産実績
(1)県全体
収穫面積は9372ヘクタール(前年比94%)、生産量は50万8037トン(同118%)となり、10アール当たり収量は5421キログラム(平年比92%)であった。生産量は3年ぶりに50万トンを上回ったが、さとうきび増産計画の目標(27年産)である約63万5200トンの8割程度となっている(図1)。なお、生産量の99%(50万2982トン)は、分みつ糖原料用として6社7工場が集荷している。
作型別の収穫面積は、春植が1880ヘクタール(構成比20%)、株出が6361ヘクタール(同68%)、夏植が1131ヘクタール(同12%)であった(図2)。さとうきび増産計画における株出割合の目標は58.8%で、約1割上回っている。
品種別の収穫面積は、農林8号が52%を占め、次いで農林22号が18%、農林23号が18%、農林17号が4%であった(図3)。16年産で約7割を占めていた農林8号が減少し、各地域の気象条件などに適した新たな品種への移行が進みつつある(表1)。
(2)各島の状況
ア. 種子島(西之表市、中種子町、南種子町)
収穫面積は2710ヘクタール(前年比97%)で県全体の29%を占め、生産量は18万9485トン(同123%)となった(表3)。10アール当たり収量は6992キログラム(平年比99%)で、島別単収では最も高い。
株出の比率が72%を占め、品種別では、農林8号が78%、早期高糖性の農林22号が16%を占める(図4)。
イ. 奄美大島(奄美市他3町村)
収穫面積は600ヘクタール(前年比94%)、生産量は2万9209トン(同166%)となった。10アール当たり収量は4871キログラム(平年比99%)で、前年産の同2761キログラムから大きく回復した。
株出の比率は62%で、品種別では、農林22号が46%、農林17号が22%を占める。
ウ. 喜界島(喜界町)
収穫面積は1290ヘクタール(前年比101%)、生産量は8万797トン(同139%)となり、10アール当たり収量は6263キログラム(平年比97%)であった。
株出の比率が57%を占める一方、夏植が32%を占め、島別では最も高い。品種別では、農林8号が51%、農林23号が24%、農林22号が8%を占める。
エ. 徳之島(徳之島町、天城町、伊仙町)
収穫面積は3201ヘクタール(前年比92%)で県全体の34%を占め、島別では最も多い。生産量は14万3682トン(同114%)となり、10アール当たり収量は4488キログラム(平年比86%)であった。
株出の比率は71%で、品種別では、農林8号が49%、農林23号が26%、農林22号が12%を占める。
オ. 沖永良部島(和泊町、知名町)
収穫面積は1157ヘクタール(前年比88%)、生産量は4万8784トン(同91%)となった。10アール当たり収量は4215キログラムで、平年比74%と島別では最も平年比が低かった。
株出の比率は59%を占め、品種別では、農林22号が44%で、農林8号の43%を上回っている。
カ. 与論島(与論町)
収穫面積は414ヘクタール(前年比85%)、生産量は1万6080トン(同75%)となり、10アール当たり収量は3886キログラム(平年比77%)であった。生産量は昭和40年以降で最も少なく、10アール当たり収量も島別では最も少ないなど、干ばつ、台風の影響を最も受けた。
株出の比率が87%を占め、島別では最も高い。品種別では、農林23号が77%を占め、農林8号は1割程度である。
(3)ハーベスタによる収穫の状況
さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、国庫補助事業や制度資金などを活用してハーベスタが導入されている。
25年産では、ハーベスタによる収穫面積が収穫面積の84%(7900ヘクタール)をカバーしている。島別では徳之島の94%が最も高く、最も低い与論島でも56%である。
また、県では、耐用年数を経過したハーベスタの機能向上(長寿命化)の取り組みを23年度から実施しており、23年度に10台、24年度に14台、25年度に5台について支援した。
4. 製糖工場の操業状況
分みつ糖製造は、1島1社の体制となっており、6島6社(7工場)が操業している。
分みつ糖工場における25/26年期の原料処理量は50万2982トンで、前年から7万5000トン増加した(表4)。買入糖度は13.95度で、前年から0.29度高くなった。
おわりに
鹿児島県のさとうきびは、22年産まで「さとうきび増産計画」に沿って生産拡大が進み、計画をおおむね達成する実績で推移していたが、23年産以降3年連続で、平年単収を大きく下回る不作となった。
このため、当協会では、県とともに、関係機関・団体と一体となり、早期の生産回復に向けて、収穫面積の確保や基本技術の励行などによる単収向上対策を推進するとともに、農業機械の導入、製糖関連施設の整備などへの支援など、各般の取り組みを積極的に推進しているところである。
また、国の24年度および25年度補正予算で、当協会に造成・積み増しされた「さとうきび増産基金」を活用し、薬剤散布やフェロモン剤活用によるメイチュウ防除、堆肥の投入などによる土づくりなどの生産回復に向けた取り組みのほか、製糖工場の施設整備など工場の経営安定に向けた取り組み、さとうきび生産に必要な農業機械などのリース導入支援など、地域の実情に応じた取り組みを支援しているところである。
このような取り組みが、1年でも早い成果となり、さとうきびの生産が回復し、さとうきび農家と製糖会社の経営が安定するよう努めている。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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