平成25年度甘味料の需要実態調査の概要
〜加糖調製品・人工甘味料編〜
最終更新日:2014年10月10日
平成25年度甘味料の需要実態調査の概要
〜加糖調製品・人工甘味料編〜
2014年10月
【要約】
加糖調製品と人工甘味料について、食品製造企業および糖化製品製造企業の計43社を対象に需要実態を調査した。平成25年における調査対象企業の仕入れ状況は、加糖調製品、人工甘味料ともに前年から大きな変化はなかった。ミルク調製品は、輸入価格の高騰により、仕入れ価格が上昇傾向であった。人工甘味料では、前年に比べ、仕入れ価格が下落傾向であった。
はじめに
当機構では、甘味料の需要実態を把握するため、甘味料使用企業43社(菓子類、清涼飲料、乳製品、パン類、調味料などを製造する食品製造企業40社および糖化製品製造企業3社)に対して、平成24年および25年(1〜12月)における甘味料(砂糖、異性化糖、加糖調製品、人工甘味料)の使用状況などについて聞き取り調査を実施した。
調査項目は、使用している甘味料ごとに、「使用製品」「使用理由」「仕入れ価格の動向」「仕入れ量の動向および今後の見込み」「品質面および調達面に関する評価」「他の甘味料への切り替えの可能性」などとした。
本稿では、前月号の砂糖および異性化糖に続き、加糖調製品および人工甘味料の調査結果を報告する。
1. 加糖調製品の需要実態
加糖調製品とは、砂糖に他の食品素材を加えた食品加工用原料であり、主に製菓、製パンなどの業務用原料として使用されている。素材や砂糖の含有量によって、さまざまな種類のものがあり、その多くは海外から輸入されている。本調査では、輸入量の多い「ソルビトール調製品」「ミルク調製品」「ココア調製品」について、需要実態を調査した。
(1)ソルビトール調製品
ソルビトール調製品は、ソルビトール(ブドウ糖を還元して製造される糖アルコール)と砂糖などを混合したものであり、加糖調製品の中でも砂糖の代替品として使用されることが多い。
ア. 輸入動向
財務省「貿易統計」によると、平成25年の輸入量は11万3836トンであった。この10年間の輸入量は増加傾向で推移しており、25年の輸入量は、16年比で20.4%増と大幅に増加している(図1)。なお、主な輸入先国はタイと韓国である。
イ. 使用状況
ソルビトール調製品を使用していたのは、43社のうち7社であった。製品分類別の使用企業数は、菓子類5社、パン1社、その他1社で、使用製品の種類は表1のとおりであった。菓子類の製造企業1社が、平成24年から新たに使用を開始していた。
使用理由としては、「コスト削減のため」が4社と最も多かった。この他、「風味や清涼感を出すため」「製品特性を引き出すため」との回答があった。
ウ. 調達状況
平成25年の仕入れ価格の動向を見ると、「上昇した」が1社、「横ばい」が3社、「下落した」が1社であった。その他、「砂糖相場と連動した変動があった」などと回答した社が2社であった。
仕入れ量に大きな変動はなく、回答があった6社の平成25年における仕入れ量は、前年比0.2%減と、前年と同水準であった。
今後の仕入れ見込みについて回答があった6社の動向を見ると、「増加する」が1社、「横ばい」が3社、「製品の販売動向次第」などが2社であった。
エ. 品質面および調達面に関する評価
品質面および調達面については、いずれの企業も「問題ない」とのことであった。
オ. 砂糖への切り替えの条件
砂糖への切り換えについて、回答が得られた4社のうち3社が「価格が折り合えば検討する」としている。検討の条件として、1社が「砂糖とソルビトール調製品の価格差が1キログラム当たり20〜30円程度であれば検討する」と回答した。一方で、1社が「砂糖とソルビトール調製品の価格が逆転すれば検討する」と回答した。
(2)ミルク調製品
ミルク調製品は、砂糖と全粉乳または脱脂粉乳などを混合したものである。
ア. 輸入動向
財務省「貿易統計」によると、平成25年の輸入量は、14万6068トンであった。この10年間の輸入量は、20年まで減少傾向で推移したが、21年以降は上昇傾向で推移した。25年の輸入量は、直近10年間で最も輸入量が少なかった20年と比べ60.4%増と大幅に増加している(図2)。
主な輸入先国はシンガポール、韓国、豪州、ニュージーランドである。近年、シンガポールおよび韓国からの輸入量が増加する一方、豪州およびニュージーランドからの輸入量が減少している。
イ. 使用状況
ミルク調製品を使用していたのは、43社のうち17社となり、調査対象企業の4割が使用していた。製品分類別使用企業数は図3、使用製品の種類は表2のとおりであった。
使用理由として、「コスト削減のため」が6社と最も多かった。この他、「製品特性を引き出すため」が4社、「脱脂粉乳などの安定調達のため」が3社、「脱脂粉乳の代替として」が1社であった。
ウ. 調達状況
平成25年の仕入れ価格の動向を見ると、「上昇した」は11社、「横ばい」が6社であり、「下落した」と回答した社はなかった。
ミルク調製品の輸入価格は、24年は下落傾向であったが、25年に入り、上昇傾向で推移した(図4)。25年12月の平均輸入価格は1キログラム当たり223円と、同年1月の平均輸入価格に比べ、41.1%高と大幅に上昇している。25年の各企業における仕入れ価格の動向は、平均輸入価格の上昇に影響を受けたとみられる。
仕入れ量に大きな変動はなく、回答があった13社における平成25年の仕入れ量は、前年比0.6%増と、前年と同水準であった。
今後の仕入れ見込みについては、「増加」が2社、「横ばい」が11社、「減少」が1社、「製品の販売動向次第」などが3社であった。減少を見込んでいる企業では、仕入れ価格の上昇により、価格面のメリットがなくなったため、使用の中止を検討しているという。また、コスト削減を目的に使用している企業からは、「仕入れ価格の上昇が続くようであれば、砂糖などに戻すことを検討する」との声もあった。平成26年7月の平均輸入価格は、1キログラム当たり219円と依然として高値が続いており、今後も輸入価格の高値が続けば、砂糖などに切り替える企業が発生するとみられる。
エ. 品質面および調達面に関する評価
品質面については、16社が「問題ない」としたが、1社が「問題ある」とした。
調達面については、14社が「問題ない」とした。一方で、「品薄基調にある」「海外調達のため柔軟に対応できない」「納品の遅延がある」との意見もあり、調達面で課題を抱えている社もあった。
(3)ココア調製品
ココア調製品は、砂糖とココア粉やカカオマスなどを混合したものである。
ア. 輸入動向
財務省「貿易統計」によると、平成25年の輸入量は、8万7784トンであった。この10年間の輸入量は増加傾向で推移しており、25年の輸入量は、16年比で9.9%増とかなり増加している(図5)。なお、主な輸入先国はシンガポール、韓国、マレーシアである。
イ. 使用状況
ココア調製品を使用していたのは、43社のうち6社であった。製品分類別の使用企業数(延べ数)は、菓子類4社、飲料3社で、菓子類ではチョコレート菓子の原料として、飲料ではココア飲料の原料として使用していた。
使用理由としては、「コスト削減のため」が3社、「製品設計上必要である」が3社であった。
ウ. 調達状況
平成25年の仕入れ価格の動向を見ると、「上昇した」が1社、「横ばい」が5社であった。横ばいと回答した社の中には、「高値で安定している」とした社が1社あった。
仕入れ量は全社ともにおおむね横ばいで推移しており、仕入れ量について回答があった3社における平成25年の仕入れ量は、前年と同水準であった。今後の仕入れ見込みについては、全社が「横ばい」としている。
エ. 品質面および調達面に関する評価
品質面および調達面については、いずれの企業も「問題ない」とのことであった。
2. 人工甘味料の需要実態
人工甘味料は、化学合成により作られた甘味料で、砂糖の数百倍の甘味度を有しているのが特徴で、食品衛生法に基づき、厚生労働大臣が指定する指定添加物に該当する。本調査では、代表的な人工甘味料である「アスパルテーム」「アセスルファムカリウム」「スクラロース」の需要実態を調査した。
(1)アスパルテーム
アスパルテームは米国で開発された甘味料で、カロリーは砂糖と同じ1グラム当たり4キロカロリーであるが、甘味度は砂糖の200倍であるため、カロリーを低減することが可能である。特性として、 1)苦みが少なく砂糖に似た甘味をもち、後味がすっきりしている 2)コーヒーや医薬品などの苦みを隠す効果や、フルーツフレーバーの風味増強効果がある 3)砂糖と比較し、吸湿、軟化しにくい−などがある。
わが国では、1983年に食品添加物として指定を受けているが、使用基準は設定されていない。
ア. 使用状況
アスパルテームを使用していたのは、43社のうち13社となり、調査対象企業の3割が使用していた。製品分類別使用企業数は図6、使用製品の種類は表3のとおりであった。
使用理由としては、「カロリー低減製品の甘味付けのため」が5社と最も多かった。この他、「コスト削減のため」「製品設計上欠かせない」などがあった。
イ. 調達状況
平成25年の仕入れ価格の動向について回答があった8社の動向を見ると、「上昇した」と回答した社はなく、「横ばい」が4社、「下落」が4社であった。
アスパルテームの市場価格は中国メーカー間の過当競争により、中国製品が下落しており、国産品や他国製品も下落傾向にあるとみられており、各社の仕入れ価格にも影響を与えたと考えられる。
仕入れ量は全社ともにおおむね横ばいで推移しており、仕入れ量について回答があった9社の平成25年における仕入れ量は、前年と同水準であった。今後の仕入れ見込みについて回答があった9社の動向を見ると、1社が「増加」、6社が「横ばい」、2社が「製品の販売動向次第」としており、「減少」とした社はなかった。
ウ. 品質面および調達面に関する評価
品質面および調達面については、いずれの企業も「問題ない」とのことであった。
(2)アセスルファムカリウム
アセスルファムカリウムは、ドイツで開発された甘味料である。甘味度は砂糖の200倍であり、カロリーゼロである。特性として、 1)甘味を速く感じ、後味のない甘味を持つが、特有の苦みを感じる場合がある 2)熱や酵素に対し安定性が高く、水溶液中でも安定性が高い 3)水溶性が高い 4)アスパルテームなどの他の甘味料との併用によって砂糖に近い甘味となる−などがある。
わが国では、2000年に食品添加物の指定を受けており、使用食品ごとに使用基準が設定されている。
ア. 使用状況
アセスルファムカリウムを使用していたのは、43社のうち17社となり、調査対象企業の4割が使用していた。製品分類別使用企業数は図7、使用製品の種類は表4のとおりであった。アセスルファムカリウムを使用する17社のうち、15社がアスパルテームまたはスクラロースも使用しており、砂糖の甘味に近づけるため、アセスルファムカリウムと併用しているとみられる。
使用理由としては、「カロリー低減製品の甘味付けのため」が最も多かった。この他、2社が「コスト削減のため」を理由として挙げている。
イ. 調達状況
平成25年の仕入れ価格の動向について回答があった13社の動向を見ると、「上昇した」と回答した社はなく、「横ばい」が7社、「下落した」が6社であった。これは、価格競争力の高い中国製品がシェアを伸ばしているためとみられる。貿易統計によると、25年における中国からの輸入量が前年比93.8%増と大幅に増加しており、中国製品のシェアが急速に伸びていることがうかがえる。
仕入れ量は全社ともにおおむね横ばいで推移しており、仕入れ量について回答があった14社の平成25年における仕入れ量は、前年同水準であった。今後の仕入れ見込みについて回答があった14社の動向を見ると、3社が「増加」、9社が「横ばい」、2社が「製品の販売動向次第」とし、「減少」とした社はなかった。
ウ. 品質面および調達面に関する評価
品質面および調達面については、いずれの企業も「問題ない」とのことであった。
(3)スクラロース
スクラロースは、英国で開発された砂糖を原料とする甘味料で、甘味度は砂糖の600倍であり、カロリーゼロである。特性として、 1)砂糖に近いまろやかな甘味をもつ 2)熱や酸に強く水などに溶けやすい−などがある。
わが国では、1999年に食品添加物として指定を受けており、使用食品ごとに使用基準が設定されている。
ア. 使用状況
スクラロースを使用していたのは、43社のうち16社となり、調査対象企業の約4割が使用していた。製品分類別使用企業数は図8、使用製品の種類は表5のとおりであった。
使用理由としては、「カロリー低減製品の甘味付けのため」が13社と最も多かった。この他「コスト削減のため」が4社であった。
イ. 調達状況
平成25年の仕入れ価格の動向について回答があった15社の動向を見ると、「横ばい」が7社、「下落」が8社であった。
仕入れ量について回答があった14社の25年における仕入れ量は、前年同水準で推移した。今後の仕入れ見込みについて回答があった14社の動向を見ると、4社が「増加」、8社が「横ばい」、1社が「減少」、1社が「製品の販売動向次第」との回答であった。減少を見込む社では、「カロリー低減製品の縮小」を理由に挙げている。
ウ. 品質面および調達面に関する評価
品質面については、1社が「後味が良くない」との評価であるが、その他の社は「問題ない」としている。また、調達面については、すべての社が「問題ない」としている。
おわりに
加糖調製品について、多くの企業が品質面および調達面ともに問題がないとしており、原料の一部として定着していることがうかがえた。しかし、ミルク調製品では輸入価格の上昇により砂糖への切り替えを検討する企業があるなど、輸入価格の今後の動向によっては、砂糖に切り替える企業が発生する可能性があると考えられる。
人工甘味料については、多くの企業で製品のカロリー低減化を目的として使用していたが、コスト削減を目的としている企業も一部で見られた。昨年度までの調査では、コスト削減を目的とした使用がほとんど見られなかったことから、目的が多様化していると考えられる。しかし、砂糖に関する調査結果では風味が変わるので切り替えができないとの回答もあったことから、コスト削減を目的として砂糖などから人工甘味料に切り替える動きは限定的であると考えられる。
加糖調製品および人工甘味料ともに砂糖の需給動向に大きく影響を与えることから、今後の動向が注目される。
最後に、ご多忙の中、本調査にご協力いただいた企業の皆さまに、改めて厚く御礼申し上げます。
参考文献
『食品添加物・素材市場レポート2012』(食品化学新聞社)
『月刊フードケミカル2014−6』(食品化学新聞社)
『近年における人工甘味料の動向』(砂糖類・でん粉情報2014年2月号)
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