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適正なさとうきび機械化体系

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最終更新日:2014年12月10日

適正なさとうきび機械化体系

2014年12月

沖縄県農業研究センター 新里 良章
(現 沖縄県農林水産部営農支援課)

【要約】

 1960年前後から始まるさとうきびブームの時代、人力による丁寧なさとうきび作が行われ、ピーク時には200万トンを超える生産量があった。1990年代以降は、滞る世代交代の下で高齢化と担い手不足が進み、さとうきび機械化体系が推進されてきた。そのような農家・農村の社会的要因により、栽培が粗放化している側面もあるが、沖縄県農業研究センターが取り組む「適正なさとうきび機械化体系」の成果などを踏まえ、今後のさとうきび振興について機械化の面から提案した。

はじめに

 沖縄県のさとうきび生産量が100万トンを下回って20年近く経過しているが、国や県および関係機関は、増産に向けてさまざまな施策を展開し対策を講じている。一方、沖縄本島で見られるように、単収の低下傾向は1990年前後から続いており、同時にさとうきび作農家の急激な減少が併発している。実際には、さとうきび作農家の急激な減少、特に本島地域の比較的規模の小さな農家の減少が生産量や単収の低下に大きく影響している感がある。宮古地域や八重山地域の農家戸数の落ち込みや単収の低下が本島地域に比べて緩慢であることから、農家所得においてさとうきび作への依存度が高いと考えられる離島地域では、世代交代が継続的に行われていると推測される。しかし、いずれの地域でも農家の高齢化と担い手不足が進み、これが低収傾向の大きな原因であることは推測される。

 高齢化と担い手不足により、さとうきびほ場の変化が顕著である。30年前は、現在より丁寧にさとうきびを栽培していたのが見受けられた。例えば、剥葉作業であるが、ほ場内では50m先まで見通すくらい丁寧に行っていた。培土作業は、枯葉を片方の畦に寄せてスコップで行っていた。そして欠株対策については、スコップを使った株分けによる補植作業であった(図1)。このような農家のほ場では、雑草がほとんど見られなかった。そして、このような比較的小規模で高単収の農家が減少し続けていることが長期的な低収要因ではないかと考える。
 

 現状のほ場管理状況といえば、手刈り跡のほ場では畦間の肥培管理はほとんど行われていないし、欠株と雑草が目立つ。ハーベスタ収穫ほ場では、肥培管理の遅れと、植え付け時からの欠株が顕著である(図2)。
 

1. ハーベスタ収穫に関する課題

 ハーベスタや刈り取り機での収穫は、稚茎を刈り取ってしまう。沖縄県農業試験場の試験(昭和58〜60年)では、稚茎刈り取りによる減収が指摘されている。近年増えている無脱葉収穫での稚茎の刈り取りも減収の要因へとつながる(図3)。稚茎を刈り取るような収穫作業後の株出しでは、この減収をいかに抑えて、肥培管理を徹底し増収へと導くかが肝心である。
 
 また、ハーベスタ収穫が進む地域では、長年、大型トラクタとプラウによる耕起作業がなされてきた。プラウ作業時には犁(すき)床(どこ)へ右タイヤを落として作業が行われるが、地表下30cmが右タイヤで踏み固められるので、耕盤層が形成される。プラウ作業後に掘り返すと30cm下にはトラクタの轍(わだち)が残っており土壌硬度が大きくなっている(図4右下)。未耕作地での測定であるがプラウ直後、右タイヤがまだ犂床を踏まないときは、約1200kpaという硬さであるが、いったん、右タイヤで犂床を踏んでしまうと1700kpaという硬さになる(図4右下)。1700kpa程度ではまだ根の伸張は可能であるが、この犂床の踏み固めを1回ではなくて夏植えの準備のたびに、長年にわたって踏み固めてしまっている。さらに、収穫時に稼働する小型ハーベスタで6〜7トン、大型ハーベスタでは10トン以上の重量があり、大東島のほ場ではかなり土壌が硬くなっているが、他のハーベスタ稼動地域も含め、心土破砕は十分に行われていない。硬盤層が形成されるほ場では、70〜90cm下に暗渠(きょ)を施工するような排水対策を施しても、毎年サブソイラで心土破砕を行わなければ効果は低いと思われる。
 

2. 機械化による増収技術

 高齢化と後継者不足による粗放化、そして機械化のデメリットに対してさとうきび作をどのように回復していくか。これはやはり従来からいわれるように、適正な肥培管理の徹底しかないと思われる。誰がその作業を担うかということが一番の課題であると思われるが、まず適正なさとうきびの機械化について、これまでのさとうきびに関する筆者らの試験研究の成果を中心に述べてみたい。

(1)プラソイラによる耕起作業
 −植え付け前の心土破砕−

 現在は、プラウに変わりプラソイラが普及しつつある。2連のナイフ(間隔130cm)に幅11cmのはつ土板を取り付けた作業機である。県内では十文字がけまたは65cm間隔で耕起作業が行われている。プラソイラは耕起と同時に耕盤破砕を行うことが可能(心土耕)で、心土破砕の効果は50〜55cmまで達している(図5)。
 
 プラソイラによる心土耕では、収穫茎数は慣行のプラウ耕とさほど変わらないが、茎長が長くなり14%の増収となる(表1)。プラソイラは地表を走行し、後輪跡を心土破砕していくので耕盤の形成は無い。また、プラウ作業の可否は地表下30cm(犁床)の土壌水分に左右されるが、プラソイラは、地表下よりは土壌水分が低い地表面を走行するので、作業できる日数が長くなる。さらに、作業姿勢については平たん地を走行するのでプラウのように右肩下がりとはならず楽な姿勢で作業が可能である。
 
(2)ハーベスタ収穫後の心土破砕
 土壌硬度計で測定したほ場内部の様子であるが、図6左は、ハーベスタ収穫前で白色に近いほど土壌が軟らかい状態を示している。図6中は、ハーベスタ収穫後の土壌硬度を表している。ハーベスタの収穫後は畦間を中心に硬くなっているのが観察される。図6右は、サブソイラで心土破砕した後で、45〜50cm程度まで効果があり土壌を膨軟にしている。表2にハーベスタ収穫後の心土破砕の効果を示しているが、対照区に比べて10〜20%の増収となる。手刈りほ場においても、心土破砕の効果がある。近年、手刈り無脱葉で収穫するほ場が多く見られるが、収穫後の心土破砕の効果で排水性が良くなる。手刈り跡では従来心土破砕はできなかったが、無脱葉収穫の後は枯葉も少なく、それが可能となった。排水不良のほ場や長年収穫を行うほ場では、心土破砕で増収効果が期待される。手刈り跡も、ハーベスタ収穫跡も心土破砕の効果は大きい。
 
(3)早期株出し管理
 現在、株出しほ場では、肥料と農薬を散布するだけの管理が多く見られる。収穫時期が終わって農村地域を見て回っても、畦間の管理はほとんど行われていない(おそらく数%以下)。製糖期が終わって早期に肥料を施し、除草剤を散布し畦間を管理して適正な高培土まで行うと、収量で10数%増収するという調査結果が鹿児島県と沖縄県の農業試験場から報告されている(図7)。作業機としては小型、中型および大型の株出し管理機(図7右)が数機種普及しており、株揃え・施肥・除草剤散布を1工程で同時に作業ができる。株揃え作業はハーベスタなど機械刈りしたときのみ行うが、萌芽が始まってからは減収するので、収穫直後に行うことが必須であり、早期株出し管理には有効である。また、株揃え作業を施したほ場では、後述する高培土や補植作業が適正に行える。
 
(4)適正な高培土
 −ハーベスタの収穫ロスを抑制する−

 萌芽位置が深いと、茎長も長く、茎径や一本重も大きくなる。そのためには、高培土が有効である。また、小型ハーベスタでの収穫において、さとうきびの立毛角と収穫ロスは負の相関がある。立毛角が大きいほど収穫時のロスは少なく、地表に完全倒伏している状態では6〜8%のロスがある(図8)。沖縄県には毎年のように台風が襲来するが、高培土により収穫ロスを少なくすることは可能である。株出し管理での適正な高培土とは、6、7月ごろの最終施肥時期に畦を毎回8〜10cm程度覆土することである。収穫時には、7〜8cmの厚さになっている。ハーベスタ収穫ほ場では、株揃えを行い、株上がりを防ぐと5回くらいまで適正な高培土が行える。手刈り収穫跡の株出し管理への提案として、新植時の高培土を10cm程度に抑え、株出しでは、毎回10cm程度の高培土を行い、畦の高さが耕運機の培土の限度30cmを超える頃まで株出しを行う(3回株出しまで適正高培土が可能)。これはハーベスタ収穫後に株揃えを行わない場合にも応用できる。
 
 外国製の牽引型植え付け機が多く稼動している地域で、機械収穫予定地だけでなく、手刈りほ場でも機械植えが普及し、畦幅145cm以上というほ場が多く見られる。軽トラクタや耕運機では培土は難しく、単に土寄せ程度の培土となっている。これでは少々の強風でもさとうきびが転倒し大きな減収要因となる(図9)。手刈りであれば、軽トラクタや耕運機で作業ができる120cm程度の畦幅の栽培を推奨する。
 
(5)セル成型苗による補植
 ハーベスタ収穫ほ場において株出し回数が増えると、踏圧やハーベスタによる引き抜きなどで不萌芽が目立つようになり、15%程度の欠株が発生することがある。農家に人手の豊富な時代は、その対策として前述のように、欠株近くの株をスコップで分けて補植する例が見られるが、現在では重労働で実用性が低い。筆者らはハーベスタ収穫後、効率的で経済的な補植作業のために、一芽苗を利用したセル成型苗育苗システムを開発した(図10)。
 
 留意点は、ハーベスタ収穫後株揃えを行わないほ場では、トラッシュの被覆で補植の適期が判然とせず補植時期が遅れ、補植苗の生育を阻害することである。株出し補植は株揃え後、40cmの欠株に1本の割合で補植する。周辺の萌芽茎仮茎長が10cm程度の時期に行うと、欠株の有無が判別し無駄が少なくなる。時期としては2月中旬までをめどに行い、萌芽が活発になる2月中旬以降は、株揃え作業の3〜4週間後をめどに行う(図11)。
  
 株出し(単収が10a当たり6.0トン程度)のほ場において、二節苗または梢頭部苗の補植株は隣接株に対して原料茎重で20%程度であるが、一芽苗の補植株は、株出しと夏植え(単収が同7.5トン程度)のほ場において原料茎重で80%程度と効果が高い(表3)。単収が同6.0トンのほ場で欠株率15%を想定すると、補植により同1万円程度の所得の向上が見込まれる(表4)。また、次期株出しに対しても欠株の軽減が期待できる。
 
(6)堆肥や豚舎処理水の投入
 堆肥散布については、新植のみでなく株出しでも効果があり、連年施用による増収は約10%である。沖縄県内のさとうきび栽培では、宮古島地域などの比較的規模の大きいほ場の一部で、植え付け前にマニュアスプレッダで堆肥散布が行われている。しかし、それ以外の地域では、人力散布を行っているが重労働で、ほとんどのほ場では堆肥散布は行われていない。マニュアスプレッダは、比較的小さなほ場や株出しには適さないが、そのようなほ場でも散布が可能な堆肥筋撒機を開発した。堆肥の従来散布法は、春・夏植え時に10a当たり約4トンを投入し、株出しでの投入はないので5年程度に一度の投入となる。沖縄県は亜熱帯に属し、気温が高く、台風やスコールによる肥料分の流亡が顕著である。開発機はトラクタ搭載型でホッパに堆肥を充填し、ほ場に進入して散布する方式である。夏植えで同2トン、それから株出しほ場でも投入できるので、株出しで同1トン、さらに次の株出しで同1トンのような連年散布が可能である。また、植溝を踏圧しながら散布すると(図12左)、発芽率が向上し欠株の減少が期待できる。
 
 豚舎から排出される曝気処理水をさとうきびほ場に散布することで減化学肥料栽培が推進され、増収が期待できる(表5)。
 

 しかし、バキュームカーによる散布は重労働で作業効率が低く、さとうきびの草丈が高くなると作業ができなくなる。100m当たり1万円のフラットホース(図13)と5万円程度のハイデルスポンプ2台と、かん水作業などに利用する2トンのローリータンク2基を搭載した4トン車を利用する場合、作業者はほ場内に進入せずに散布可能で、一日約50トン散布できる(図13)。
 
 ホースの移動のためにフラットホース巻き取り機を開発した。長さ50m(フラットホースの直径は50mm、直径4mmの穴を100個穿孔)のフラットホースを巻き取る場合、手動巻き取り器では1人当たり14分で、2人組作業が必要であるが、開発機では、同1.1分で1人作業が可能である(図14)。巻き取り機は安価な軽トラックのバッテリーで駆動する12Vモーターを利用した巻き取り機も開発した。なお、処理水も汚泥も上記のフラットホースで散布可能である。
 

3. 効率的な作業機の導入に向けて

 さとうきび作に関してさまざまな作業機が開発導入されている。導入または利用に際して、利用する農家や生産法人が経営的に有利になる作業機とは、作業が速く作業時間が短縮できて、燃料消費が抑えられる作業機である。

(1)牽引型作業機とPTOを利用する作業機
 牽引型の作業機は、ロータリのようにPTO(Power Take Off:作業するための動力をエンジンから取り出す装置)を利用する作業機よりも、エンジン回転数が低く燃料消費が少なくなると予想される。簡易に燃料消費量を計測するのに用いられる満タン法は、トラクタやほ場の傾斜がある場合、適応が難しい。また、ディーゼルは温度で比重が変化する。そこで、消費重量を直接計測するために、図15のような2Lの透明容器を利用した補助燃料タンクをトラクタに取り付け、消費した燃料重量をほ場のその場で小型の電子吊秤で計測できるようにした(以下「補助タンク計測法」という)。
 
 室内でトラクタを定置状態にし、エンジン回転数と燃料消費量の関係を補助タンク計測法で計測した。無負荷時のエンジン回転数は、牽引型作業機で1200〜1500rpm、PTOを利用する作業機は2000〜2400rpmである。図16に示すように、PTOを利用するロータリよりも、牽引型作業機の方が、エンジン回転数が低く燃料消費の少ないことが分かる。
 

 補助タンク計測法により、58kW(80馬力)のトラクタでPTOを利用するロータリ(定格エンジン回転数2400rpm)と牽引型のプラウ(定格エンジン回転数1500rpm)およびプラソイラ(定格エンジン回転数1500rpm)の作業時燃料消費量を計測した。ジャーガル土壌(注)において40m程度の畦長で作業を数工程行い、1工程ごとに、消費燃料の重量を計測した。その結果、ロータリ(耕幅1.8m)で1u当たり6.7g、プラウ(耕幅0.45m)で同5.1gおよびプラソイラ(耕幅0.65m、2連)で同3.2gとなった。この様に、牽引型のディスクハローやツースハローで代替できれば燃料費が少なくて済むことが期待できる。また、牽引型の農業機械は価格も安い。慣行のロータリに比べ発芽率や収量が低下しないことが前提となるが、導入に関しては今後の課題である。

(注)沖縄の代表的な土壌で、粘土質を多く含む重粘土壌。
 

(2)牽引型の作業機は一般的に作業速度が早い
 作業速度が速い分、作業時間が短くなるので燃料消費量が少なくて済む。沖縄県では軽トラクタ(15kW級)が多く普及しているが、通常はロータリで中耕・(高)培土が行われるか、ロータリ型の耕運機で培土作業を行う。それに変わる作業機として平均培土、高培土を行う小型牽引型管理機(図18)が開発され、既に石垣島と伊平屋島で利用されている。除草剤散布や施肥機を取り付ければ、複合管理機としても利用可能である。作業速度は、軽トラクタ用ロータリの場合が1秒当たり0.2m程度で、牽引型は同0.6m程度であった。単位時間当たり作業量はほぼ3倍となり、燃料消費量は3分の1以下と思われる。
 

 また、中型トラクタ用にはカットアウェイカルチがある(図19)。なお、小型牽引型管理機は1工程1畦作業となるが、カットアウェイカルチは1工程2畦作業が可能である。既に普及している作業機で、除草作業も兼ねることができる。
 

(3)類似作業では作業時間の少ない作業機が単位面積当たりの燃料消費が少ない
 プラウとプラソイラは、耕起を行う牽引型の類似した作業機である。畦長約35mのほ場で、プラウとプラソイラの作業時間および満タン法による燃料消費を計測した。作業はどちらも1方向作業で、前進作業と後退の工程を繰り返した。58kWトラクタ用のプラソイラは耕幅65cmの2連と同等なので、時間当たりの作業量はプラウの1.8倍になった。それに伴い、単位当たり面積の燃料消費量では、プラソイラはプラウの57%と省エネである。一方、同一ほ場内において補助タンク計測法でも、プラウとプラソイラ作業の燃料消費を計測し、10a当たりについて試算した。50cmまで心土破砕を行い、負荷の大きいプラソイラは1m当たりプラウの1.6倍の燃料消費量であるが、作業工程数は2分の1以下で、その分、燃料消費が少なくなる。補助タンク計測法による後退時と作業時の燃料消費量の値を用いた試算燃料消費量は、満タン法によく一致した(表6)。

 ちなみに、補助タンク計測法による同一ほ場の無負荷前進時の燃料消費量は、1m当たり0.98gであった。このように、補助タンク計測法を用いてさまざまな作業機で作業時の燃料消費量(30〜50m程度)を計測しておけば、1方向作業でも往復作業でも、またさまざまな形状のほ場でも燃料消費量の試算が可能である。
 

 以上のことから、特に牽引型の作業機のメリットを述べると、 1)速度が速く作業時間が短縮できる、 2)エンジン回転数の低い作業で燃料消費が抑えられる、 3)機械の構造が単純で安価、である。ロータリには、土壌を細かく砕いて発芽率などを向上されるというメリットがある。しかし、農業生産法人など規模の大きな経営では、発芽率低下や収量低下がなければ牽引型の作業機が有利である。また、外国のさとうきび作や他の畑作では、ロータリ型の作業機はあまり使用されていないと聞いている。牽引型で株揃え作業を行う小型の複合型株出し管理機が徳之島で利用されているが、沖縄県でも、今後さらに牽引型の作業機の導入または開発について検討していく必要がある。

4. 適正なさとうきび機械化体系の担い手確保・育成

 農家個人では、上記の作業をすべてこなすのは困難である。高齢化が進んでおり農業機械も保有していない。適正なほ場管理といっても、「誰が作業を行うか」ということが常に問題となる。しかし、担い手が少なくなったとはいえ、農村地域にはまだまだ精力的にさとうきびを耕作する高齢者が多くいるし、どの地域にもさとうきび生産法人が設立されている。また、豊富なシルバー人材や建設業の人材がある。企業や団体であれば多少の季節的なムラは吸収できないだろうか。余剰ある畜産有機物や水肥、人材そしてさとうきびをシステマチックに結合する工夫はないものだろうか。

 沖縄県は、「沖縄21世紀ビジョン実施計画」において、さとうきびの生産量100万トンを目標としている。また、認定農業者や農業生産法人などの担い手への農用地の利用集積に対する取り組みを強化している。そのためには、農地中間管理事業など各種施策をフルに活用し、担い手へのさらなる農地の集積で、機械化のメリットを最大限に発揮していく必要がある。機械化の進展のみならず、近年は新規就農者の育成においてもさまざまな施策が講じられているところである。しかし、優良品種の開発、農地・かんがい施設の整備や収穫機械の導入など、農家や関係機関の努力が続けられてはいるものの、単収や生産量の顕著な増加が現れていないのが現状である。これは、前述したさとうきびと養豚の耕畜連携や、さとうきびほ場から流出する耕土・赤土の課題解決への進展が鈍いことと同じく、農家の高齢化と担い手の減少で、人が中心となる集落機能が低下しているからだと考える。そこで、営農方式の新たな展開として、西之表市全域を対象に、さとうきびの植え付けやハーベスタ収穫を受託する鹿児島県の西之表農業開発公社や、全国にある米・麦・大豆の大規模生産法人をモデルに、沖縄県の農村地域に適合する同様な組織の育成が急務である。一方、それぞれの経営体が個々に営農活動を行えば、農地の利用としては効率が低い。さとうきび生産法人、精力的な生産者や新規就農者そして、草刈り機での除草作業や耕運機などの作業がまだまだ可能な高齢農家など、農村にあるそのようなさまざまな人材を包括する、いわゆる二段構えの集落営農形態の形成(注)が必要である。

 最後に、退職されたさとうきび研究の先輩に常に叱咤されるところであるが、沖縄県の農地・農村を維持し発展させる中心的役割はさとうきびである。そのためにも、さとうきびにかかわる全ての関係者が農家と一団となり生産振興に向けて、沖縄県に適した集落営農の確立や低下した集落機能の向上に努力し、取り組んでいく時であると強く感じている。

(注)参考文献
沖縄県担い手育成総合支援協議会(2007)「農を興し、地域を支える集落営農」pp.16-20.沖縄県
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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