ナイジェリア、ケニアおよびエチオピアは、現在、砂糖の純輸入国であるが、雇用の促進および自給率の向上の観点から農地やかんがい開発、機械化、新工場設立への官民の投資を進めている。今回のセミナーでは、外資を呼び込むための将来的な計画について、それぞれの政府担当者から報告された。
(1)ナイジェリア
ナイジェリアの砂糖生産は1961年に開始されたが、現在に至るまで産業規模は極めて小さい。2012年でサトウキビの収穫面積は4000ヘクタール、国内における製糖工場は2つで、砂糖生産量はわずか3万トンであり、需要量の大半を輸入に依存している。国内向けの供給は、主に3つの製糖企業(Dangote社、BUA社、Golden社)が輸入粗糖から製造する精製糖が担っている。
政府は、2012年に雇用と農家の収益の確保を目的として、砂糖産業育成計画(ロードマップ)を公表した。この計画は、2020年までに収穫面積22万4000ヘクタール、砂糖生産量179万トンまで拡大し、輸入量ゼロを目指すものであり、製糖工場も28工場新設することとしている。また、副産物(糖蜜やバガス)を活用したエタノール生産やコジェネレーションによる発電も目指す計画である(表3)。
2014年までの進捗状況を見ると、ロードマップの達成が現実味を帯びてきたといえる。新規参入や既存の精製糖企業の投資などにより、国内産糖の生産は拡大しており、今後、さらなる農地開発や工場建設が予定されている。
政府は、ブラジルや米国から150品種を輸入して同国の環境に適したサトウキビの種苗の開発を行っており、100万本の種苗を供給できる施設が2014年12月に完成し、さらに同規模の施設を建設中とのことである。また、同国最大手のDangote社は2018年までに20億米ドル(2431億円(12月末TTS:1米ドル=121.55円))の投資を行い、農地開発と製糖工場の新設により、砂糖生産量150万トンを目指すとしている。同社は、2014年の収穫面積6000ヘクタール、砂糖生産量2万トンから、翌年は1万2000ヘクタール、5万トンまで拡大する見込みである。さらに14万ヘクタールのほ場整備と24万3000ヘクタールの用地の買収が済んでいるとの報告があった。
Golden社は3億米ドル(365億円)を投資し、4000ヘクタールの農地整備と新工場の設立を進めており、現在、850ヘクタール植え付けが終了し、新工場は間もなく完成するとのことであった。
また、新規参入として、Confluence社とCrystal社がそれぞれ6億ナイラ(3億7500万円(1ナイラ=約0.625円))と15億ナイラ(9億3750万円)を投資し農地開発や新工場の建設を行っている。Crystal社は2015年には苗床100ヘクタール、収穫面積6000ヘクタール、砂糖生産量3万トンの生産を開始する予定である。
(2)ケニア
ケニアは、年2.75%のGDP成長を続けており、人口増加と経済成長に伴う食料需要が高まっている。砂糖の消費量も増加しているが、現在、砂糖生産量は13製糖工場で60万トン、消費量は86万トンと純輸入国である。
政府資本の製糖工場(5工場)を民間へ払い下げ、政府支援によるかんがい設備を有した農場開発(8万ヘクタール)や肥料製造施設の整備などにより、同国の産業基盤が整いつつある。また、首都ナイロビはアフリカ東部および中部の交通の中心であることを生かして、自国の砂糖生産拡大とともに、アフリカ各国への輸出拡大の機会がある。
また、高圧送電網が整備されれば、一般家庭向けの電力需要が高まっており、現行の1644MW(メガワット)から2030年には5000MWが必要になること、ガソホール政策(エタノールの混合を10%に義務付け)の下、乗用車の普及に伴い、エタノール需要量が現状の5800万リットルから、2030年には1億4800万リットルとなることが見込まれることから、コジェネレーション事業やエタノール事業への投資機会がある。
実際、Omnicane社(マルタの製糖、エタノール、コジェネレーション企業)は、2億ドルを投資し、2014年12月に1日当たりサトウキビ処理量3000トン、3万リットルのエタノール生産、18MWの発電設備を有する製糖工場を設立している。
(3)エチオピア
エチオピアは、砂糖生産量を現在の120万トンから2019/20年度には、461万トンまで増加させる計画を有している。計画達成のため、現在、最長8年間にわたり法人税を免除するなど税制優遇措置を講じ、外資による投資を促すことにより、農場開発、かんがい設備、農業ダムや新工場の設立を加速化している(表4)。なお、エチオピアは製造業に対する中国の投資が増加しており、新工場の多くが中国の国営企業の投資によるものであるとのことであった。