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拡大するグアテマラの砂糖産業

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最終更新日:2015年6月10日

拡大するグアテマラの砂糖産業

2015年6月

調査情報部

【要約】

 グアテマラの砂糖産業は、業界一体となった生産性向上の取り組みや各企業の事業多角化などによる経営安定の取り組みにより、持続可能な砂糖の安定生産体制を整備している。今後も、精製糖輸出拡大や貿易協定を生かした国際競争力の発揮により、砂糖の主要輸出国としての地位を維持していくものと予想される。

はじめに

 グアテマラは、中央アメリカの北部に位置し、面積10万9000平方キロメートル(日本の本州の面積の約半分)の亜熱帯地域に属する国である。その位置から、米国およびメキシコとの貿易が盛んで、特に米国にはバナナやコーヒーをはじめ、多くの農産品を輸出している。

 砂糖については、近年、国際競争力を背景に輸出量が急増し、2013年には世界第5位となった。輸出先としては、特に東アジア向けの伸びが著しく、2011年以降、毎年、日本へも一定量を輸出しており、日本市場でタイや豪州を補完する役割を果たしている(図1)。

 そこで本稿では、グアテマラ砂糖産業の最近の情勢について、米国農務省(USDA)や民間の調査会社のレポートを基に紹介する。

 なお、断りがない限り、本稿の年度はグアテマラ砂糖年度(11月〜翌10月)、砂糖の数量は粗糖換算である。また、為替レートは1米ドル=120円(2015年4月末TTS相場)を使用する。
 

1. 主要生産地域と生産概要

(1)主要生産地域
 サトウキビ栽培は、南部の太平洋岸のエスクイントラ(Escuintla)州を中心に行われている(図2)。同州には、国内のサトウキビ栽培面積の約9割が集中し、2014/15年度に国内で稼働する13の製糖工場のうち7つが立地している。同州にサトウキビ生産地および製糖工場が集中する理由として、年間を通じて平均気温が26度以上で適度な降水量があり、サトウキビ栽培に適した気候であることや、耕作可能な平地が豊富にあることの他、同国から輸出される全ての砂糖が出荷されるケッツァル(Quetzal)港(写真1)を有していることがある。同港は1994年4月に完成し、1時間当たり2000トンの砂糖を船へ積載できる砂糖専用輸出ターミナルの他、43万トン(バルク36万5000トン、袋詰め6万6000トン)の砂糖を保管する施設もあり、現地報道によると、国際競争力強化のため、港湾の拡張工事が検討されている。
 
 
(2)生産概要
 グアテマラ農牧食糧省によれば、サトウキビ栽培面積のうち製糖企業が所有するのは約2割であるが、多くの製糖企業は自社ほ場の他に、長期にわたる使用契約により、個人が所有する土地も実質的に管理している。

 一方、サトウキビの植え付けは11月〜翌4月の間に行われ、約10〜14カ月後の翌11月〜翌々4月ごろに収穫される(図3)。株出しの場合は約1年かけて生育し、新植から更新までのサイクルは5〜6年となっている。

 また、収穫は主に手作業で、収穫前にほ場でサトウキビの枯葉を焼却するバーン収穫が主体であり、機械によるグリーン収穫は、一般的に、製糖企業が十分な労働力を確保できなかった場合に限られ、収穫面積の15.9%にとどまっている。
 

2.サトウキビおよび砂糖の生産動向

(1)サトウキビ
 サトウキビ収穫面積は増加傾向で推移しており、2003/04年度の19万4000ヘクタールと比べ、2013/14年度には35.6%増の26万ヘクタールとなった(図4)。

 サトウキビ生産量は、2011/12年度の熱帯暴風雨「アガサ」やラ・ニーニャ現象発生の影響で減少したものの、この10年でほぼ一貫して増加傾向で推移し、2013/14年度は2774万トンとなっている。2014/15年度は、2014年7月にエル・ニーニョ現象の影響でグアテマラ東部を中心に広範囲にわたる干ばつが発生したため、前年度を7%下回る2582万トンと見込まれる。
 
 また、1ヘクタール当たり収量は100トンレベルに達しており、50〜80トンで推移する主要生産国と比較して、抜きん出ていることがわかる(図5)。
 
(2)砂糖
 砂糖の生産量は、サトウキビの増産に伴い増加傾向で推移しており、2013/14年度は281万トンと記録的な水準となった(図6)。このうち、精製糖のシェアは、2003/04年度には砂糖生産量の45.3%であったが、2013/14年度には58.7%と13.4ポイント拡大している。製糖企業が付加価値の高い精製糖の生産に注力していることがうかがえる。2014/15年度はさらに拡大し、史上最高の298万トンが見込まれている。
 
 また、稼働する製糖工場の平均処理量(トン/日)は、350トン〜3万4000トン、年間稼働日数は170〜190日程度となっている(表1)。
 
(3)競合作物
 サトウキビ以外でも、コーヒー、バナナなど輸出目的で栽培される作物の栽培面積が増加している。この他にも、ギニアアブラヤシやゴムノキなどの栽培面積が記録的に伸びていることから、これらの輸出が増えれば、土地や労働者の確保などの観点からサトウキビと競合する可能性がある。

 サトウキビの主産地3州の土地の利用状況は図7の通りであり、サトウキビが最も多く、全体の3割を占めている。これらの地域では、耕作可能な土地のほとんどは利用されているため、サトウキビの収穫面積を現状以上に拡大する余地は小さいと考えられる。このことから、砂糖の増産については、これまでの栽培面積拡大の方針から、今後は、サトウキビの単収向上や製造工程での効率化に焦点が移されている。
 

3.砂糖生産拡大に向けたASAZGUAの取り組み

 以上のように、サトウキビの高単収を実現し、重要な産業として砂糖産業が隆盛している理由の一つとして、グアテマラ砂糖産業協会(ASAZGUA)の活動がある。

(1) ASAZGUAの組織構成
 ASAZGUAは、 1)農地および製糖所の開発と生産性向上、 2)人材開発、 3)出荷体制・製品流通の改善、 4)地方自治体との連携強化を目的として、1957年に設立された業界団体で、2014/15年度の会員数は製糖企業13社となっている(図8)。ASAZGUAは、砂糖業界の多くの指針や生産振興策を検討・実施している。
 
(2)サトウキビおよび砂糖の生産性向上への取り組み
 ASAZGUAは、これまで、以下に述べるような技術改良による生産性向上、気候変動への対応などさまざまな活動により、サトウキビおよび砂糖の持続可能な生産体制を支援してきた。

ア. サトウキビの品種改良と選定
 コロンビアのサトウキビ生産者協会(ASOCAÑA)傘下のサトウキビ研究センター(CENICAÑA)を参考に1992年に創設された、サトウキビ研究人材開発センター(CENGICAÑA)は、9カ国から1700品種を導入し試験栽培を行ってきた他、最近では病害などに強い品種を開発している。現在では、同センターが育成した品種を含むグアテマラ独自品種の栽培面積が、全体の33.9%に達している。

イ. 総合的病害防除(IPM)の実施
 1990年代までの薬剤散布などの化学的な方法を見直し、品種改良、また、天敵や微生物を用いて生物学的に管理する総合的病害防除(IPM)手法を確立し、普及している。

ウ. 効率的なかんがいの利用
 ほ場へのかんがい施設の整備および利用を推進している。特に太平洋沿岸および低地では、広くかんがいが行われており、2013/14年度には、サトウキビ栽培面積の70%に達すると見込まれている。かんがい効率も、1990年代から2015年までの間に同じ水量で2倍の面積をかんがいできるまで効率性が高まっている。

エ. 持続可能な砂糖生産体制の構築
 サトウキビ・砂糖生産に対する気候変動への適応体制の構築に向け、2010年に発生した熱帯暴風雨「アガサ」の被害を教訓に、同年、気候変動民間研究所(ICC)が創設され、気候や生態系の調査などを行っている。

 なお、ASAZGUAは、2015年から2020年の間に、1ヘクタール当たりの産糖量(TSH)を、現在の11トンから平均12トンまで向上させることを目標に掲げ、サトウキビの単収向上のみならず、製糖工程の改善などによる製糖歩留まりの向上などを進めていくこととしている。

(3)サトウキビ取引参考価格の算定
 ASAZGUAは、会員である製糖企業が独自に定めるサトウキビ取引価格のベースとなる参考価格について、ニューヨーク粗糖相場や国内小売価格を基に算定している。製糖企業は、粗糖販売による利益の受け取りについてはサトウキビ生産者よりやや少ないが、精製によるプレミアム分および副産物(アルコールおよび売電)による利益はすべて受け取っている。サトウキビ価格の決定方式については、砂糖類情報2012年5月号「グアテマラ砂糖産業の最近の情勢」を参照されたい。

4. 砂糖の需給動向

(1)国内需要
 砂糖の国内需要量は生産量の約3割にすぎないが、近年増加傾向にあり、2013/14年度は71万5000トンとなった(表2)。このうち55%は直接消費で、残りは飲料(特に炭酸飲料)、製菓、製パン、製薬などの業務用となっている。
 
 政府は、砂糖の国内供給量を確保するため、国内で生産される砂糖について、国内市場への一定の供給を義務付けている。具体的には、毎年、グアテマラ経済省が、ASAZGUAと協議の上、当該収穫期の国内需要量をあらかじめ試算し、ASAZGUAはこの試算を基に、前年度の実績を勘案して製糖各社に国内出荷量を割り当てている。ASAZGUAが、各製糖企業の在庫数量を経済省に報告することで、国内供給量が毎年確保される体制となっている。

 また、砂糖の販売については、国内流通を一元的に管理していたグアテマラ砂糖販売会社(COMETRO)の解体後自由化され、4社の大手流通業者と2社のパッキング業者が販売している。

 なお、国内で流通する砂糖はすべてビタミンAが添加されている(写真2)。これは、政府が、国民の栄養不足を補う目的で、食料強化基本法に基づき、1992年から砂糖、塩、小麦粉に特定の栄養分の添加を義務付けていることによる。
 
(2)輸出
 グアテマラは世界有数の砂糖輸出国であり、2013年の輸出量は194万トンと世界第5位であった。

 従来、主な輸出先国は米国であったが、近年は、輸出先国の多様化が顕著である。

 このうち、粗糖の輸出先地域は、2007年には、アジアが44%、北米が37%などであったが、2013年には、アジアが74%、北米が11%などとなり、アジアへの輸出割合が大幅に増加している(図9)。特筆すべき事項としては、中国への輸出量の大幅増であり、2013年は15万トンを超え、初めて最大の輸出先国となった。

 一方、精製糖の輸出先地域は、2007年には、南米が54%、中米が17%などであったが、2013年には、アフリカが30%、南米が23%などとなり、アフリカへの輸出が目立っている(図10)。

 また、精製糖の輸出量は、2007年には32万5000トンであったが、2013年には2.7倍の89万3000トンに増加している。製糖企業は、新興国への付加価値の高い精製糖の輸出増加に注力しており、今後も、精製糖の輸出拡大が同国の輸出戦略の柱として据えられる模様である。

 なお、日本向けの砂糖(粗糖)輸出は2011年に始まり、2013年には6万トンを記録した。



 




(3)輸入
 
砂糖の生産量の約7割が輸出に仕向けられており、輸入量は極めて少ない。

 ただし、砂糖の国際相場が高騰し国内価格を大きく上回り、メキシコなど国外への砂糖流出が増えて国内需給がひっ迫したときは、緊急措置として関税が引き下げられ、輸入が誘引される。直近では2010年に、グアテマラ政府試算で約6万トンの砂糖がメキシコに密輸出されたため、通常は20%の関税が設けられているところ、無税で隣国のエルサルバドルやブラジル、米国などから輸入された。

(4)小売価格
 グアテマラ国立統計局(INE)によると、砂糖の小売価格は2010年に大きく上昇し、さらに2011年の後半には1ポンド(460グラム)当たり3.5ケッツァル(日本円でおよそ930円(1ケッツァル=7.7585米ドル))を超えた。これは、2010年のメキシコへの大量密輸などにより上昇したと考えられるが、2012年以降は、ほぼ安定的に推移している(図11)。

 小売価格が国際砂糖相場に影響されることなく安定的に推移しているのは、製糖各社に国内出荷量が割当られ、国内供給量が確保されていることと、国内流通業者の数が限られていることが大きいといえる。
 
 
(5)異性化糖の動向
 現在、グアテマラでは異性化糖の生産は行われていない。グアテマラの主食はトウモロコシであるものの、食用および飼料用トウモロコシは輸入超過の状況にあり、政府は自給率向上を推進しているため、加工用のトウモロコシの生産は今後も行われないとみられている。

 異性化糖は主に飲料や菓子類に用いられ、米国やメキシコから輸入されている。異性化糖の輸入関税は、品目により異なり、10〜15%となっているが、米国産については、米国・中米・ドミニカ共和国自由貿易協定(CAFTA−DR)に基づき段階的に引き下げられ、急激な輸入超過の場合にはセーフガード措置が発動されることとされている。異性化糖は、国内産砂糖に比べ価格競争力が劣っていることから、消費量はごくわずかであり、これまでセーフガードが発動されたことはない。

5.バイオエタノール生産および発電の状況

(1)バイオエタノール生産
 グアテマラでは伝統的に、糖みつからアルコール(エタノール)を作り、蒸留酒(ラム酒)が製造されている。

 蒸留酒以外のエタノールは、製糖工場の近隣に位置する5つの製造工場で生産されている(表3)。このうち3工場は製糖企業またはその関連企業が運営しており、含水エタノールだけでなく無水エタノールも製造している(注)

 2013年の生産量は2億6900万リットルに達しているが、その8割は欧米に輸出され、残りの2割は国内で酒類や医薬品に用いられている(図12)。

(注)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除いたアルコール100%で、ガソリンに混合して利用される。





 一方、ガソリンは需要量(年間12億8千万リットル)の全ては輸入に頼っている。政府は1985年に国内のガソリンへのエタノール混合率を5%と義務付けることとしたが、現在では形骸化している。CENGICAÑ Aは、エタノール生産は糖みつを原料としているため、砂糖の生産に影響は及ばないとしており、仮に混合率が10%となった場合(年間需要量1億3000万リットル)でも、国内の糖みつ由来のエタノールで全ての需要を満たすことが可能と試算している。

 砂糖産業はエタノール混合の義務化を主張しているが、ガソリン輸入業者は、現状でも不安定なガソリン価格が、さらにサトウキビの価格にも左右されて消費者の不利益を招くこととなるとして、義務化に反対している。

(2)発電の状況
 電力の供給や売買に関しては、国家電力機構法に規定されているものの、1994年に制定された新電力法により、発電に当たっての事前許可や発電所の建設は自由化されている。さらに、1986年に制定、2003年に改正された「持続可能なエネルギー源による電力促進法」により、代替エネルギーに対する税制優遇措置が講じられており、製糖企業がエネルギー分野に参入しやすい環境が整っている。

 これを背景に、多くの製糖企業はバガスを用いて工場稼働電力を賄うほか、発電能力を拡大し、国の発電網にも電力を販売している企業もあり、現在、製糖時期(11月〜翌5月ごろ)には総電力の25%を供給するほどである。

 グアテマラは、水力発電が主流である。製糖企業は、水力による発電量が減少する乾季(11月〜翌5月ごろ)、すなわち製糖時期に売電することで、水力発電を補完し、国全体の安定供給に大きな役割を果たしている。

 現在発電を行っている製糖工場は9工場あり、発電能力が向上している一方で、今後の見通しについては多くの企業が慎重な見方を示している。その理由としては、 1)現在の総発電量はすでに国内総需要量を上回っているため、発電能力を拡大するためには、販売先の開拓(中米の共同発電網の構築など)が必要であること、 2)木炭などの代替原料価格が下落しており、一般電力会社による火力発電が増加する可能性が高いこと、などを挙げている。

6. 砂糖をめぐる国際協定の進展

(1)政府と砂糖産業の連携
 通商政策(対外通商政策、競争力強化策、投資総合政策)の策定、実施には、大統領直轄である国家輸出促進委員会(CONAPEX)が大きな役割を果たしている。CONAPEXは1986年に設立され、貿易政策に関して大統領に提案する官民合同の最高機関である。CONAPEXのメンバーは、経済省、農牧食糧省、通信・インフラ住宅省、財務省、外務省、中央銀行の他、民間団体として、経営会議所、農業会議所、ASAZGUA、商工会議所、金融会議所、工業会議所、輸出業者協会および協同組合連盟であり、経済省が調整や連携を所掌し、年に2回、大統領出席下で政策会議が行われる他、毎月、貿易政策の進捗状況の確認が行われている。

 砂糖産業は、ASAZGUAを中心に自主的な行動指針をもって発展を遂げてきたが、通商政策については、CONAPEXを通じて、大統領に対して直接意見を具申できる機会を有しており、政府と連携した取り組みを行っている。

(2)国際協定の進展
 政府は、自由貿易主義政策を採っており、農業分野でも、農産品の輸入に対する保護主義的な政策は少ない。また、伝統的に米国、EU、メキシコおよび中米諸国を主な市場とみなし、これらの国や地域との連携に意欲的である。米国に対しては、世界貿易機関(WTO)により粗糖を、CAFTA−DRにより精製糖を輸出している。WTO上、米国のグアテマラ産砂糖輸入枠は5万トン(粗糖)であるが、その他に米国の再輸出用として約10万トンの無税割当枠がある。また、CAFTA−DRに基づく米国の砂糖無税輸入枠は毎年増加しており(注1)、2015年は4万2840トン(粗糖と精製糖の合計であり、粗糖換算数量)となっている。

 米国向け砂糖輸出量は、過去の実績、工場の製造能力などに応じて製糖企業別に割り当てられている。政府や業界は、輸出量を吸収できる最大の市場として米国を挙げており、米国とのFTAを最大限活用したいと考えている。一方、米国側も、確実に高品質な砂糖を供給できるグアテマラを重要な輸入相手先国と評価している。

 EUに対しては、粗糖と精製糖が約半分の割合で輸出されており、2015年の割当枠は6万7700トン(粗糖と精製糖の合計であり、粗糖換算数量)となっている。2013年に発効した中米EU連携協定において、6万5000トンの割当枠から始まり、毎年2700トンずつ追加されることとなっている。

 また、グアテマラは、中南米との貿易緊密化のため、太平洋同盟(チリ、ペルー、コロンビア、メキシコからなる経済連携)への接近を図っており、2011年12月にはペルーとの自由貿易協定(FTA)を締結した。しかし、砂糖分野の協議が整わないため、発効には至っていない。

 現在、ペルーは国内砂糖価格安定策として、輸入砂糖価格に下限と上限を設け、下限価格を下回る場合について従価税を課す「プライスバンド制度」を採用している。この制度は、アンデス共同体(CAN)(注2)加盟国には適用されないため、グアテマラ産の砂糖は、加盟国であるコロンビア産に対する価格競争力を失っている。このため、グアテマラは、この制度をWTOおよび2カ国間のFTAの内容に反するものとして、2013年6月にWTOに異議申し立て、2013年9月には紛争解決パネルが設置された。現在も協議は続いている。

(注1)CAFTA−DRにおけるグアテマラの批准発効日は2006年7月1日である。同協定において、米国はグアテマラ産砂糖の無税輸入枠を初年度は3万2000トンに設定し、2年目以降は640トンずつ、15年目以降は940トンずつ追加することとされている。

(注2)統合と協力による加盟国の調和的発展の促進、ラテンアメリカ共同市場形成を目指した地域統合プロセスへの参加促進などを目的として、前身のアンデス地域統合(ANCOM)を発展的に改組し、1996年3月に創設。域内では関税が撤廃され、アンデス自由貿易圏が形成されている。加盟国は、ボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルー。

おわりに

 グアテマラの砂糖産業は、業界一体となったサトウキビの生産性向上の取り組みや、各製糖企業によるエタノール生産や発電などの事業多角化による経営の安定化により飛躍的に成長し、持続可能な生産体制を築くとともに、粗糖に比べて付加価値の高い精製糖の輸出を精力的に拡大しながら輸出先の開拓にも取り組んできた。サトウキビの栽培面積の拡大が困難であるとの見方がある中、サトウキビ生産現場および製糖工場の効率化により生産を拡大し、今後も、国際競争力を武器に、世界の主要砂糖輸出国としての地位を維持していくものと予想される。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713