(1)バイオエタノール生産
グアテマラでは伝統的に、糖みつからアルコール(エタノール)を作り、蒸留酒(ラム酒)が製造されている。
蒸留酒以外のエタノールは、製糖工場の近隣に位置する5つの製造工場で生産されている(
表3)。このうち3工場は製糖企業またはその関連企業が運営しており、含水エタノールだけでなく無水エタノールも製造している
(注)。
2013年の生産量は2億6900万リットルに達しているが、その8割は欧米に輸出され、残りの2割は国内で酒類や医薬品に用いられている(
図12)。
(注)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除いたアルコール100%で、ガソリンに混合して利用される。
一方、ガソリンは需要量(年間12億8千万リットル)の全ては輸入に頼っている。政府は1985年に国内のガソリンへのエタノール混合率を5%と義務付けることとしたが、現在では形骸化している。CENGICAÑ
Aは、エタノール生産は糖みつを原料としているため、砂糖の生産に影響は及ばないとしており、仮に混合率が10%となった場合(年間需要量1億3000万リットル)でも、国内の糖みつ由来のエタノールで全ての需要を満たすことが可能と試算している。
砂糖産業はエタノール混合の義務化を主張しているが、ガソリン輸入業者は、現状でも不安定なガソリン価格が、さらにサトウキビの価格にも左右されて消費者の不利益を招くこととなるとして、義務化に反対している。
(2)発電の状況
電力の供給や売買に関しては、国家電力機構法に規定されているものの、1994年に制定された新電力法により、発電に当たっての事前許可や発電所の建設は自由化されている。さらに、1986年に制定、2003年に改正された「持続可能なエネルギー源による電力促進法」により、代替エネルギーに対する税制優遇措置が講じられており、製糖企業がエネルギー分野に参入しやすい環境が整っている。
これを背景に、多くの製糖企業はバガスを用いて工場稼働電力を賄うほか、発電能力を拡大し、国の発電網にも電力を販売している企業もあり、現在、製糖時期(11月〜翌5月ごろ)には総電力の25%を供給するほどである。
グアテマラは、水力発電が主流である。製糖企業は、水力による発電量が減少する乾季(11月〜翌5月ごろ)、すなわち製糖時期に売電することで、水力発電を補完し、国全体の安定供給に大きな役割を果たしている。
現在発電を行っている製糖工場は9工場あり、発電能力が向上している一方で、今後の見通しについては多くの企業が慎重な見方を示している。その理由としては、 1)現在の総発電量はすでに国内総需要量を上回っているため、発電能力を拡大するためには、販売先の開拓(中米の共同発電網の構築など)が必要であること、 2)木炭などの代替原料価格が下落しており、一般電力会社による火力発電が増加する可能性が高いこと、などを挙げている。