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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2015年5月時点予測)

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最終更新日:2015年6月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2015年5月時点予測)

2015年6月

 
【生産・輸出動向】
2014/15年度の砂糖生産量はやや減少、輸出量はかなり大きく減少の見込み

 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の大手民間調査会社)の2015年5月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づき記述)、2014/15砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、864万ヘクタール(前年度比2.8%増)とわずかに増加する見込みであるが、主要生産地であるサンパウロ州では、生育時期の干ばつが影響し単収が低下したことから、サトウキビの生産量は6億2432万トン(同4.1%減)、砂糖の生産量は3824万トン(粗糖換算(以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算)、同5.6%減)とやや減少する見込みである。このため、砂糖の輸出量は減産が響き、2479万トン(同13.2%減)とかなり大きく減少する見込みである(表2)。

 一方、ブラジル国家食糧供給公社(CONAB(注1))が先頃発表した2015/16年度の生産予測によると、サトウキビの単収は、生育当初は干ばつの影響により低下が懸念されていたが、収穫前に十分な降雨がもたらされたことから、1ヘクタール当たり73.9トン(前年度比2.5%増)と向上し、サトウキビ生産量は、6億5461万トン(同2.0%増)とわずかな増加が見込まれている。このうち、エタノールへの仕向け量は3億6772万トン(同1.9%増)となり、砂糖への仕向け量も増加するものと見込まれ、砂糖生産量は3735万トン(同5.0%増)となる見通しである。

 また、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA(注2))は、2015/16年度最初の製糖実績報告を発表した。これによると、ブラジル中南部地域の4月のサトウキビ生産量は、生育時期の降雨に恵まれたことから、4503万トン(前年同月比11.5%増)とかなり大きく増加し、砂糖の生産量は159万トン(同6.1%増)としている。また、エタノール生産量は、堅調な国内需要を反映し、194万キロリットル(同18.6%増)と大幅に増加した。

 なお、現地報道によると、エタノール輸出量は2014/15年度に140万キロリットル(前年度比46.8%減)と前年度から大幅に減少し、2015年4月も2万キロリットルと2000年代初め以来最も低い水準になった。これは、3月16日から、政府がガソホール政策を強化し、ガソリンに混合する無水エタノール(注3)の比率を25%から27%に引き上げたことが背景にある。これにより、エタノールは年間80万キロリットル(サトウキビ換算で1000万トン)の追加需要が見込まれている。

(注1)ブラジル農務省直轄の公社であり、主要作物の生産状況報告や予測などを行っている機関。

(注2)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。

(注3)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除いたアルコール100%で、ガソリンに混合して利用される。
 
 
【生産・輸出動向】
2014/15年度の砂糖生産量は前年度を上回るも輸出量は大幅に減少

 2014/15砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は前年度並みにとどまるものの、高単収苗の普及に伴い単収の向上が見込まれることから、サトウキビの生産量は3億6841万トン(前年度比3.4%増)とやや増加する見込みである。天候に恵まれたことにより製糖歩留まりが向上していることから、砂糖の生産量は3019万トン(同14.9%増)とかなり大きく増加する見込みである(表3)。

 一方で、インド砂糖製造協会(ISMA)によると、4月末時点の砂糖の生産量は、主要生産地であるマハーラーシュトラ州、ウッタル・プラデーシュ州およびカルナータカ州で前年同期を上回っており、精製糖換算で2737万トン(前年同期比14.3%増)とかなり大きく増加している(図3)。特に、マハーラーシュトラ州は過去最高の砂糖生産量が見込まれており、同協会は、2014/15年度の国内砂糖生産量は2006/07年度に次ぐ水準になると予想している。

 他方、砂糖の輸出量は、152万トン(前年度比44.6%減)と大幅に減少する見込みである。このうち、粗糖は20万トン(同82.4%減)、精製糖は132万トン(同18.0%減)といずれも大幅な減少が見込まれている。政府は2015年9月まで粗糖に対する輸出補助金(注1)を措置していることから、粗糖の輸出量は大幅には減少しないという見方もあるが、国際価格が低迷していることから、今後もインド産砂糖の輸出は伸び悩むことが予測される。

 一方、政府は、国内外の砂糖価格が低迷する中、国内の砂糖在庫を削減し、負債を抱え生産者への原料代支払いが滞っている国内の企業を支援するため、 1)砂糖の輸入関税の引き上げ(25%から40%)、 2)精製後の輸出を条件に粗糖の輸入関税を免除する制度(注2)における再輸出までの期間の短縮(18カ月以内から6カ月以内)、 3)砂糖の副産物である糖みつを原料とするエタノールに係る消費税の非課税化(次年度(2015年10月)から)、といった対策の実施を決定した。

(注1)インド政府によると、粗糖の輸出補助金は2015年9月末までの措置としており、対象数量は140万トン、単価は1トン当たり4000ルピー(8160円(4月末TTS:1ルピー=2.04円))である。なお、単価は、米ドル為替に連動して2カ月ごとに設定された前年度の平均より同1000ルピー程度高く設定された。

(注2)事前許認可制度(ALS(Advanced Licens-ing Scheme))
 
 
【生産・輸入動向】
2014/15年度の砂糖生産量は大幅に減少、輸入量は大幅に増加

 2014/15砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積が143万ヘクタール(前年度比11.9%減)とかなり減少したことに加え、最大生産地である広西自治区が、天候不順により大幅な減産となることから、サトウキビ生産量は8859万トン(同16.7%減)と大幅な減少が見込まれる(表4)。この減産により、甘しゃ糖の生産量は1077万トン(同20.7%減)と大幅に減少する見込みである。

 他方、てん菜の収穫面積は13万ヘクタール(同5.0%減)、てん菜の生産量は638万トン(同0.7%減)、てん菜糖の生産量は80万トン(同1.2%減)の見込みである。この結果、砂糖生産量は1157万トン(同19.6%減)と大幅に減少する見込みである。

 また、中国砂糖協会によると、4月までの砂糖生産量(精製糖換算)は、1031万トン(前年同期比22.2%減)と前年同期を大幅に下回る水準となっている。これは、てん菜糖生産量は前年度並みであるものの、広西自治区の甘しゃ糖生産量が632万トン(同26.2%減)と大幅に減少していることによる(図4)。

 また、中国政府は2015年1月、砂糖の輸入を制限しているが(注)、国際価格が下落傾向にある中で国内価格を安定させるべく、国内企業の輸入動向に対する統制を強め、同年の輸入量を上限を下回る350万トンに抑制することを4月に発表した。

 一方、国内需要量から見た砂糖の輸入必要量として490万トン(前年度比35.9%増)が見込まれており、輸入量を抑制しつつ国内需要量を補うためには、政府が備蓄砂糖を放出するなどの措置が必要になると予想される。

(注)中国政府は2014年11月1日、関税割当(精製糖換算195万トン、枠内関税15%)の枠外(税率50%)で、安価な精製糖の輸入量が増加した結果、国内価格が下落して国内産砂糖の在庫が増加する事態となっていることを受け、輸入割当制度を見直し、枠外で輸入できる業者に登録を義務付けることとした。さらに、2015年1月、枠外数量の上限を190万トンと設定し、実質385万トンの輸入数量の上限を定めている。
 
 
 
【生産・輸入動向】
2014/15年度の砂糖生産量はかなり大きく増加、輸入量は大幅に減少の見込み

 2014/15年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は155万ヘクタール(前年度比3.3%増)とやや増加し、播種時の天候に恵まれたことから、てん菜生産量は1億1807万トン(同14.1%増)とかなり大きく増加した。また、てん菜糖の生産量は1888万トン(同15.2%増)とかなり大きく増加し、生産割当数量(精製糖換算で1353万トン)を超える見込みである(表5)。なお、生産割当数量を超えた分は、非食用(エタノールや工業製品)や輸出用などに向けられる。

 砂糖の輸入量は、生産量の増加を受けて305万トン(同22.2%減)と前年度を大幅に下回る見込みである。

 なお、2015/16年度は、期首在庫の増加による砂糖価格下落への不安から生産者がてん菜栽培面積を縮小していることや、降雨により播種が遅れていることなどから、てん菜の生産量が減少し、砂糖の生産量も減少することが予想されている。
 
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