地域だより
最終更新日:2015年9月3日
第42回サトウキビ試験成績発表会が開催される
2015年9月
平成27年8月18日(火)、沖縄県農業研究センター(糸満市)において、「第42回サトウキビ試験成績発表会」(主催:沖縄蔗作研究協会)が開催され、沖縄県内外のサトウキビ研究者や業界関係者など約160名が参加した。同発表会では、県内の各研究機関などで実施されたサトウキビ関連の研究事例の一般発表と、シンポジウムが行われた。
1.研究事例の発表
今回の試験成績発表では、各研究機関から以下に示す12件の発表があった。
(1) 北大東島におけるサトウキビ収量と植物寄生性線虫の関係について
(2) 糖蜜施用がサトウキビ収量・品質、土壌化学性に及ぼす影響
(3) 土壌および搾汁液中Cl−がサトウキビの収量および糖度に与える影響
(4) サトウキビ系譜情報の閲覧システム
(5) 沖縄本島北部地域春植え・株出し栽培での「農林8号」「農林17号」「農林22号」「農林25号」「農林27号」の収量性
(6) 干ばつ期間の潅水・降雨がサトウキビ伸長に与える影響
(7) 側枝生産の増殖率向上に関する調査
(8) サトウキビほ場におけるヤブガラシ類の防除体系とマニュアルの作成
(9) イネヨトウの予察に必要な合成性フェロモントラップ数は?
(10) 機械化体系のダウンサイジングに関する研究
(11) サトウキビ機械化における省エネ・低炭素化技術
(12) 営農的な赤土流出防止対策―サトウキビほ場での対策と増収効果
2.シンポジウム
今回は「現実的で費用対効果の高いサトウキビへの灌水を実現するために」というテーマで開催された。島袋正樹座長(沖縄蔗作研究協会 副会長)が進行を行い、会場の参加者からも積極的に質問や意見が出され、全体を通して盛況なものとなった。
まず、比屋根真一氏(沖縄県農業研究センター)は、灌水による収量増加について発表を行った。具体的には、サトウキビ畑における蒸発散量の推定方法を解説し、月別降水量の平年値と蒸発散量の差から特に7月での灌水の必要性に触れた後、少雨傾向の年において実際に収量が増加した実績を報告した。また、深耕により畑地の耕盤を破砕するとサトウキビの根がより深くまで伸長するほか、雨季の排水性や通気性が高まり、収量増につながることにも言及した。
次に喜納信自氏(沖縄県農林水産部村づくり推進課)は、土地改良事業による農業用水源とかんがい施設の整備状況について発表を行った。26年度末時点での県内各地域の整備済み面積と目標に対しての進捗、農業用水源やかんがい施設の分類と特徴を整理した後、北大東村の点滴かんがいや宮古島市での塩害対策での散水を例に挙げ、地域の実情に応じた利用方法の工夫を紹介した。
川辺貢氏(中部農林土木事務所)は、中部管内でのかんがい施設の利用実態について発表を行った。管内17地区を調査対象とし、地域ごとのかんがい施設の利用率を明確にした後、年齢層の若い受益者の地区やサトウキビの作付率が低い地区で、利用率が高くなっている傾向を示した。
その後、県内各地域(宮古島、石垣島、南・北大東島、久米島、本島北部、本島中部、本島南部)の代表者が登壇し、各地域でのかんがい施設の利用状況における現状や課題および要望などを語った。
沖縄県のサトウキビ生産は、回復傾向ながらも依然厳しい状況にあることから、今回の一般発表で紹介されたさまざまな研究成果の活用や、シンポジウムのテーマとして取り上げられた費用対効果の高い灌水の実施により、単収の増加、ひいては生産者の経営安定化につながることが望まれる。
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