(1)サトウキビ生産支援
今回の調査では、世界第4位の製糖グループであるミトポン社(本社タイ)のスパンブリー工場を訪問した。同工場は、2014/15年度に2709戸(うち、出荷数量500トン以下が1895戸、501トン以上5000トン以下が635戸、5001トン以上が179戸)の生産者と契約し、今後は5000戸以上との契約を目標にしている。同社は、さらに事業を拡大させるため、サトウキビ生産者の支援に力を入れており、工場から50キロメートル以内に16カ所のサービスセンターを設け、合計50名の普及員を駐在させている。
同社による主な支援の内容は、以下の通りである。
ア.資材購入向け融資
肥料など資材購入に係る短期融資(利率4.25%)、トラクター・ハーベスタ導入に係る長期融資(同5.25%)。政府が講じるハーベスタ導入や干ばつ対応資材の購入に係る融資の利率(2%程度)よりも高い利率が設けられている。
イ.かんがい開発向け融資
地下水採掘や貯水池造成に対する融資。大規模な事業では、共同で行う複数の生産者に対して融資を実施。点滴かんがい用の資材購入に係る融資も行う。
ウ.収穫・輸送支援
小規模生産者が近隣の集荷センターへ搬入したサトウキビについて、工場までの輸送を工場側の負担で実施。
エ.機械収穫の推進
セミナーや研修の実施などにより、大型ハーベスタの導入やほ場の区画整理の重要性などを指導。現在、管内で66台の大型ハーベスタが稼働しており、1台当たり2万5000トンの収穫が目標。
オ.生産性向上の取り組み
土壌改善の取り組みとして、サトウキビ収穫後のほ場に、緑肥として大豆を植え付けることを生産者へ指導。また、製糖副産物であるフィルターケーキやヴィナス(vinasses)と呼ばれるエタノール製造副産物(発酵残さ)を、各生産者の生産状況に合わせてほ場へ散布。
(2)加糖調製品および加工品生産の増加
砂糖の国際価格の低迷を受け、製糖企業は、投機の対象となり価格が為替などにより変動しやすい粗糖ではなく、精製糖での輸出や、液糖での販売、グループ企業などで加糖調製品に加工するなど、高付加価値製品の販売に注力している。
国内需要量のおよそ4割は業務用であり、飲料、果物加工品、乳製品向けなどの業務用砂糖需要量は増加傾向にある(
表6)。
また、加糖調製品の輸出は堅調で、日本によるタイ産加糖調製品の輸入も、ここ数年増加傾向にあり、タイは日本にとって韓国やシンガポールに次ぐ輸入先国となっている(
図8)。主要加糖調整品全体の輸入量に占めるタイ産製品の割合も、2011年の16.5%から、2014年の19.2%に拡大している。
このように、タイ国内の製糖企業および食品企業では、砂糖そのものではなく、国内で製品に加工した上で輸出する「Re-Export体制」という動きが加速しており、高付加価値化や収益拡大への取り組みが積極的に行われている。