日本(ニッポン)のソース
「ウスターソース類」
最終更新日:2015年10月9日
日本(ニッポン)のソース
「ウスターソース類」
2015年10月
1. ソースとは
ソースとは本来、液体調味料の総称で、原料の違いや、製法、色などによりさまざまな種類が存在します。代表的なものとしては、ウスターソース類、トマトケチャップ、マヨネーズ、ドレッシング類、ホワイトソース、しょうゆなどがあります。
しかし、日本では洋食の普及とソースの国産化の努力により「ソースといえばウスターソース類」という認識が広がりました。ここでは「ウスターソース類」についてのお話をさせていただきます。
2. ソースの歴史
ウスターソースの誕生は、英国ウスター市のある家庭で起こった偶然の出来事がきっかけだったと言われています。19世紀の初め、市内に住む主婦が余った野菜や果実の切れ端を有効に利用しようと香辛料をふりかけて壺に入れ、腐敗しないように塩や酢を加えて貯蔵しておきました。それが長い時間をかけて熟成され、肉や魚、野菜にも合う液体ソースになりました。
3. ソースの主要原材料
ウスターソース類は、コクや甘み、酸味など各メーカーによって原材料の種類や量に多少の違いはありますが、主な材料は、とてもシンプルです。トマトやタマネギ、ニンジン、セロリなどの野菜と、リンゴ、プルーン、デーツ(ナツメヤシ)、ミカンなどの果実、砂糖や食塩、食酢、それにさまざまな香辛料から出来ています。
ソースと砂糖のかかわり
糖類の働きは、単に甘みを付けるだけでなく、ソースにつややコクを付けたり、野菜や果実類の甘味をまろやかな味にまとめるなど、ソースにとって重要な働きをしています。ソースに使われる糖類としては、砂糖、糖みつ、異性化糖、ぶどう糖、水あめなどであり、砂糖は、主に上白糖、三温糖、中双糖が用いられています。
4. ソースの種類
ウスターソース類のバリエーションとしては、ウスター、中濃、濃厚の3種類が基本です。日本農林規格(JAS規格)においては、ウスターソース類を粘度などによってウスターソース、中濃ソース、濃厚ソースの3つに分けています。
1) ウスターソース
野菜や果実のパルプ質を製造工程中でろ過しているため、粘度が低く、さらりとした辛口のソースです。しっかりとした味が特徴なので隠し味にも使え、料理に風味を加えることができます。
2) 中濃ソース
ウスターと濃厚の中間ぐらいの適度なとろみがあり、ピリッとした味と甘くソフトな味の両方を持ち合わせています。煮込み料理の味付けや肉の下味付けなどにも使うことができます。
3) 濃厚ソース
とんかつソースとも言われています。野菜はもちろん、たくさんの果実を使っているので、パルプ質が多く、かつてはフルーツソースと言われていました。トロリとして甘くソフトな風味があります。
また、近年の日本の食生活の多様化に伴い、「焼きそばソース」や「お好みソース」なども、ソースの種類として認知されるようになってきました。これらも性状から言えば上記ウスター、中濃、濃厚ソースのいずれかに属することになります。
○ 焼きそばソース
ソース焼きそばは、日本で生まれた独特のメニューですから、焼きそばソースこそ日本的なソースの典型かもしれません。ウスターソースの味を、さらに日本人好みのうま味成分を加えて、よりうま味を強くしたソースです。
○ お好みソース
お好み焼きが全国的なメニューになったことから、多くのメーカーが製品化しています。それらに共通するのは、従来のソースより酸味と塩味を控え、とろみを増していることです。
5. ソースが秘めたヘルシーパワー
1) 野菜と果実の栄養がいっぱい
原料となる野菜や果実には、私たちの健康に欠かせない“ビタミン”や“ミネラル”がたっぷり含まれています。なかでもトマトに含まれる“リコピン”やニンジンの“ベータカロテン”は、がんなどの生活習慣病や老化の原因となる活性酸素を抑制する成分として、話題になっています。また、タマネギやニンニクは肉や魚の臭みを消してくれるので、動物性食品を使ったメニューとの相性も抜群です。
2) スパイスでおいしく元気に
ソースの味の決め手となるのは、十数種類もの“スパイス”です。中国では『漢方』として古くから使われており、日本でも『薬味』というように、体の不調や病気などに効く薬として利用されていたものもたくさんあります。食卓では、絶妙なブレンドによって香りや風味を増すだけでなく、食欲を増進させたり、消化を助けたり、肉や魚の臭みを消すなどの優れた働きを持っています。
3) 1食分わずか“18キロカロリー”
1回の食事に使うソースの平均量を大さじ1杯とすると、エネルギー量は約18キロカロリー(ウスターソースの場合)。これは同量のフレンチドレッシングの約3分の1、マヨネーズの約6分の1とエネルギー量はかなり控えめです。ですので、ソースは、カロリーが気になる人にもうれしい調味料です。生野菜にそのままかけるだけでなく、他の調味料と合わせてカロリー控えめのオリジナルソースを作ることも可能です(
図1)。
4) 塩分控えめ
カロリーだけでなく、塩分が控えめなのもソースの魅力です。厚生労働省がすすめる食塩摂取量の目安は1日10グラム以下とされていますが、ソース大さじ1杯に含まれる塩分は、わずか1グラムほどです。この食塩量は、薄口しょうゆの約半分、減塩しょうゆとほぼ同じです。ソースは塩分を気にする人はもちろん、誰もが毎日使える安心の調味料です(
図2)。
5) うれしいノンオイル
ウスターソース類には油が含まれていません。肥満や生活習慣病を予防するためには、食生活への配慮が大切です。特に心掛けたいのは、油脂分を取り過ぎないこと。そんな時、“ノンオイル”のソースが大活躍してくれます。
6) 食酢の働きで健康増進
健康をもたらす調味料として注目されている“食酢”も、ソースの原料の1つです。その酸味が味のハーモニーのカギを握っています。健康面でも優れた働きがあり、防腐・殺菌効果だけでなく、食欲推進や疲労回復の効果もあります。さらに最近の研究では、カルシウムやマグネシウムなどの吸収を促したり、血糖値の急激な上昇を抑える効果も明らかになっています。
6. 11月7日は「ソースの日」
平成25年、日本ソース工業会は、11月7日を「ソースの日」と制定致しました。
制定理由の1つは、日本ソース工業会が任意団体として設立されたのが、昭和22年11月7日であったこと、もう1つは、日本に最初に伝来したソースであるウスターソースのエネルギー量が100グラム当たり117キロカロリーであることです。11月7日は、数字で言うと「117」で「イ・イ・ナ」とも読めますので、「ソースの日」にはぴったりの日と考えています。
日本ソース工業会は、昨年(平成26年)11月1日〜2日の2日間、農林水産省主催の「ジャパンフードフェスタ2014」に出展し、全国各地のソースの“展示”や“味くらべ”などを実施致しました。このように、日本ソース工業会は、皆さまに「ニッポンのソース」の理解を深め、消費拡大につながる活動を行っております。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713