近年、栄養学の分野では、「栄養ケア・マネジメント」という概念が普及し、栄養状態の把握、つまり栄養アセスメントを行うことで、低栄養や過栄養などの原因を明らかにし、栄養改善に向けて目標を設定し、ケアを実行するシステムが導入されている
1)。そのアセスメントの際に、食事調査は重要な役割を果たしている
2)。
では、食事調査とは何か。「何をどれだけ食べたか」を示すもので、食品・栄養素の摂取量を数値で表したものである。食事調査の歴史は、1945年12月に第1回国民栄養調査が実施されたのが始まりとされる。当時は食糧不足で、欠乏症が大きな健康問題であったことから、世帯単位で実施される3日間の秤量記録法による食事調査が機能していた
3)。
しかし、生活習慣病が健康問題の主題となる現在においては、個人の栄養アセスメントが重要となる。飲食物を摂取した場合に起こる栄養素の消化・吸収、体内利用、貯蔵、さらには代謝の変化による必要量や排せつ量の変化を把握する必要があることから、食事内容だけでなく、身体計測、臨床検査などから、栄養状態を総合的に評価しなければならない。特に食事に関しては、摂取量の変動(個人内変動、個人間変動)を考慮に入れた調査方法が必要となる。
栄養素などの摂取量の個人内変動(日差)は、個人間変動(個人と個人間の差)に比較すると概して大きい。そのため平均的な栄養素の摂取量は、1日の食事調査では把握できないが、ある程度の日数を調査すると、個人の習慣的な摂取量が把握できる。連続3日間あるいは非連続2日間、最低限調査する必要があるが、摂取した食品をすべて記録しなければならない。あるいは食べるものをすべて秤で計量するなど被検者にとっても負担が大きい。さらに、対象者の心理状態も影響し、摂取量の過少申告や過大申告の問題も生じる。アセスメントや調査の目的、対象者(集団か、個人か)、期間、コストなどを考慮し、できるだけ負担の少ない調査方法を選択する必要がある。調査方法としては、「食事記録法」「24時間思い出し法」「食物摂取頻度調査法」「食事歴法」「陰膳法(分析法)」などがある。食事摂取状況の調査方法のまとめを
表1に示した。
現在、高齢社会が進むにつれ、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病およびこれに起因する認知症や寝たきりなどの要介護状態になる者の増加が深刻な社会問題となっている
4)。また、食品・栄養素の摂取状況と体型、栄養状態、生活習慣病との関連に関する報告も多くあることから、生活習慣病の予防には食事摂取状況を把握し、個々人に合わせた評価が必要となる。
そこで、本研究は、生活習慣病発症のリスクが高い中高年男性の日常的な食事摂取状況を、思い出しによる食事歴質問票を用いて調査した。本稿では食事摂取状況、特に砂糖類や穀類の摂取が空腹時の血糖値および血中脂質に影響を及ぼすかについて報告する。これまでに尾ら(
「砂糖類・でん粉情報」2013年10月号)、小川ら(
「砂糖類・でん粉情報」2014年11月号)が砂糖(スクロース)はブドウ糖(グルコース)に比べ、低GI(血糖指数:グリセミック・インデックス)で血糖値の下降が速やかであることを報告した続報である。