本種は一世代に2年を要する
4)(
図1)。成虫は一番寒い時期である2月初旬から3月中旬にかけて、交尾のため夕方の薄暮時に地上に出現する
5)。成虫の出現は、夕方の気温が18℃以上の暖かい日だけに限られる。雄成虫は羽音を立てながら地面すれすれの低い高度で雌の探索を行う。雌の出現は雄より少し遅れ、すぐ近くのサトウキビの葉や茎に飛んで止まる。そこで腹部をリズミカルに伸縮させ、性フェロモンを放出する。すると、たちまち雄がやってきて交尾が成立する
5)(
写真2)。
交尾後の雌は土中に潜り、大部分が深さ30〜40センチメートルのサトウキビ根量が最も多い土層にとどまり、そこで産卵する
6)。交尾後、約2〜3週間後に産卵を開始する。4月中旬ごろに卵から幼虫がふ化する。そして6月中旬ごろに2齢になり、9月中旬ごろに3齢となる。10月ごろから12月にかけて3齢幼虫は摂食旺盛期となり、この頃にサトウキビの立ち枯れが現れる。サトウキビの収穫期は例年1月から3月までの3カ月間である。この期間中に地上部のサトウキビは収穫されるが、地下部にはまだ根茎が残っているので、越冬後の3齢幼虫はこれを食べ続けている。3月中旬までは浅い土層に分布しているが、3月下旬以降は深い土層(40〜50センチメートル)へ移動し
7)8)、そこで休眠に入る
9)。10月下旬から11月初旬にかけて蛹化(ようか)し、11月中旬ごろに成虫になる。成虫はそのまま深い土層にとどまって生殖休眠に入り
9)、翌年の2〜3月に交尾のため、地上に出現する。成虫になってからも摂食しないので、前年の3月末に幼虫休眠に入って以降、合計で約12カ月間も絶食状態で過ごす。
これまで本種の生息が確認されていなかった宮古島や伊良部島において、本種の生息が1997年に初めて確認された。その理由として次の二つの仮説が考えられる。 1)近年、本種の石垣島・西表島から宮古島・伊良部島への侵入、 2)生息していたが見逃されてきた。石垣島グループ、西表島グループと宮古島・伊良部島グループは色彩や体サイズなど形態的に多少違いがある点
2)や、遺伝的にも識別できるくらい離れている点
10)などで、後者の仮説が有力である。おそらく2月の一番寒い時期の夕方の薄暮時に成虫が出現するなどの習性のため、発見されにくく、これまで見逃されてきたのであろう。