生産性格差の要因を整理するために、十勝地域で特に直播栽培の導入が進んでいるA町を対象に聞き取り調査を行った。調査内容は経営面とてん菜播種前年の秋期から翌年春に播種を行うまでのほ場作業内容、作業時期である。調査対象はA町の中から、X地区(単収が高く安定している)、Y地区(X地区と経営規模が同等で単収が低い)、Z地区(作付けが小麦に偏っている)の3地区から8戸を選定した。調査対象とした8経営(1〜8)のてん菜単収水準を、平成21〜23年の3カ年平均の単収が10アール当たり5トンより多い経営を高位、少ない経営を低位とし、3カ年平均の変動係数が10%より低い経営を安定、高い経営を不安定と位置付けた。加えて、同じ地区で比較できるほ場が近隣にある経営を選定して、ほ場の砕土率と土壌含水比の調査を行った。
調査の結果から抽出された経営面に関する生産性格差の要因を
表1に示した。高位安定経営では、農地の利用は自作地のみ、または、20年以上にわたる長期の賃貸借による借地で作付けしていた。てん菜作付けは直播栽培と移植栽培の併用を行う経営があった。労働力の保有状況は基幹労働力が多く、特に、男子の従事者とオペレータを複数確保していた。機械の所有状況はトラクタの台数が多く、最大馬力数および合計馬力数が大きかった。てん菜部門に対する評価はてん菜を安定部門として評価していた。
これに対して、低位不安定経営では、収入やコスト、手間などのてん菜作に対する問題点を多く指摘していた。
抽出されたほ場作業面に関する生産性格差の要因を
表2に示した。
高位安定経営では、安定的な堆肥の調達先を確保し、自家労働により散布していた。播種前年のほ場作業は心土破砕などの排水対策を毎年実施していた。播種当年のほ場作業は、プラウを用いた反転耕を実施しない簡易耕を春期に実施する経営も見られた。また、融雪剤を散布する経営が見られ、早期の播種を実現していた。
これに対し、低位不安定経営では、播種日が5月にずれ込むことがあった。
また、単収水準別に投入窒素量、肥料費、農薬使用成分回数ならびに農薬費を比べると、単収水準別に有意差が認められなかった。このことから、調査対象経営では、単収水準に違いが見られるものの、肥料・農薬の投入とその費用には差がないことが確認された(データ省略)。