(1)概要
中種子町の竹屋野集落のきりしまさとうきび生産組合(以下「組合」という)は、機械化による規模拡大を目的として、さとうきび生産者5人により平成16年に設立された。現在の構成員は、後継者に道を譲った一人を除き、設立当初と変わっていない。
構成員は、おのおのが手刈り収穫が規模拡大の障害になっていると早くから考えており、ハーベスタを共同で導入するために生産組合を立ち上げ、島内でも比較的早期の平成16年に1台を導入した。組合代表の鎌田保幸氏は、「手刈りではワンシーズンにどんなに頑張っても1ヘクタールしか収穫できない。しかし、ハーベスタなら30ヘクタールも収穫できる。ハーベスタなくしては、規模の拡大は難しい」と、ハーベスタの重要性を語る。
構成員5人はいずれも専業農家で、さとうきびのみを栽培する一人を除き、畜産、でん粉原料用かんしょ、青果用かんしょなどとの複合経営を行っている。さとうきびは、組合全体で20.6ヘクタール(平成26年産)を栽培している。種子島の1戸当たりの平均収穫面積は約1.2ヘクタールであることから、栽培面積と収穫面積の違いはあるものの、構成員一人当たりでは島平均の3倍以上の面積を確保していることになる。
(2)さとうきび生産の安定化に向けた取り組み
ア. 効率的な機械の利用
組合は、ハーベスタを利用して構成員のほ場の収穫作業(例年約20ヘクタール)の他、集落内の生産者を中心に、例年約5ヘクタールの収穫作業を受託しており、ハーベスタ1台で約25ヘクタールの収穫を行っている。構成員以外の生産者の収穫作業を受託することによって、ハーベスタの利用率を上げるとともに、これらの生産者の作業負担を軽減し、地域のさとうきび栽培の効率化に貢献している。
一般的に、作業の受託を行う場合、受託者は依頼された作業を優先し、自身のほ場の管理作業や収穫作業が遅れてしまうことが多い。しかし、組合では、各構成員が平均以上の収穫面積を有する中、作業の受託を行っているにもかかわらず、構成員のほ場の収穫作業が遅れて支障を来すようなことはないという。構成員一人一人が効率良く組合の作業を行えるよう常に考えているだけでなく、定期的に収穫作業のスケジュール調整を行うことなどを通じて活発にコミュニケーションを取り合うことが、スムーズな運営の秘訣だと考えているとのことだ。
また、構成員が平成15年に導入した株揃え機を、構成員全員で活用して収穫作業と併せて株揃え作業を実施している。株揃え作業を行うようになってから、機械導入以前と比較して萌芽数が2倍以上になることが判明したため、現在は収穫作業を受託するほぼ全ての生産者から株揃え作業も受託している。
イ. 地域資源の有効活用
組合は種子島がさとうきびと並んで肉用牛の繁殖が盛んな地域であることを生かし、平成21年に堆肥センターを整備し、牛ふんと製糖工場から出るバガスを原料とした堆肥を生産している。
もともと平成21年以前から、肉用牛農家でもある構成員3人は、化学肥料に加えて、土づくりのために堆肥をほ場に投入しており、その増収効果を実感していた。そこで、その効果を組合全体に波及させるために、堆肥センターの設立に踏み切った。
堆肥センターは現在、肉用牛農家でもある構成員3人から入手した牛ふんと製糖工場から入手したバガス(いずれも無償)を原料に堆肥を生産し、構成員のさとうきびほ場のうち、新植春植えほ場などに約150トンを散布している。平成21年に組合内で散布を開始して以降、構成員全員が増収効果を実感していることはもちろん、JAが運営する堆肥センターから堆肥を購入する場合(定価:1トン当たり1万2500円)と異なり、実質労働力のみで生産、散布できるため、費用の負担を感じることなく、継続的に実施できることも大きな利点となっている。
また、堆肥を使って育てられたさとうきびの梢頭部は、収穫後、牛の飼料として肉用牛農家に還元されており、組合の取り組みは耕畜連携による理想的な資源循環型農業を実現している。
堆肥の利用は、さとうきび品種の選定にも影響を与えている。種子島で栽培されるさとうきびの約8割を占める農林8号は、構成員の栽培面積全体の5割程度で、残りは農林22号を栽培している。
農林22号は、農林8号と比べて早期高糖性を備えており、12月に収穫することも十分可能な品種であるため、収穫期の初期からより高糖度のさとうきびを出荷することができる。一方、茎数が多くなることから、さとうきび全体に栄養を行き渡らせるために、多くの肥料を使う必要があり、肥料代がかさむ品種でもある。しかし、組合は、堆肥を用いた土づくりを行うことによって、肥料代を抑制しつつ農林22号を導入することに成功している。
こうした取り組みを推進したこともあり、組合は、中種子町内の営農集団のリーダー的な存在としての活躍や、栽培面積の拡大、地域への貢献などが評価され、公益社団法人鹿児島県糖業振興協会が主催する「平成25年度さとうきび生産改善共励会」において、独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞を受賞した。