1990年代までは、国内の砂糖・エタノール産業に対し、生産割当や価格支持といった補助的な政策が行われていたものの、現在は、主に以下の政策が実施されているのみである。
(1)ガソリンへの無水エタノール混合率の義務化
国内で販売するガソリンは現在、27%の無水エタノール混合が義務付けられている。この混合率は、2015年の3月に25%から引き上げられ、最も高い水準となった。MAPAによれば、技術的には30%までの混合が可能との試験結果もあるが、業界からの要望もないことなどから、さらなる引き上げは検討していないとしている。
(2)融資策「PRORENOVA」
BNDESの資金を財源として、主に以下の2つのタイプの融資策「PRORENOVA」が講じられている。具体的には、砂糖・アルコール委員会
(注)が毎砂糖年度の融資枠を決定し、民間銀行(主要銀行はitau BBA)が実際の審査を行い、BNDESの資金を使って融資する。国家財政の悪化により予算が限られ、BENDESおよび民間銀行がそれぞれ定める条件を満たす必要があるため、融資先は経営改善が見込まれる一部の企業に限定されている。
(注)MAPA(事務局)、鉱山エネルギー省(MME)、財務省(MDF)、運輸省(MDT)の4つの省で構成される委員会。
ア. サトウキビの新植に対する融資
サトウキビの新植に掛かるコスト(苗代や肥料代など)は1ヘクタール当たり6000〜7000レアル(19万2000円〜22万4000円)とされており、経営難の企業では苗の更新が滞る状況が続いている。そのため、株出し回数5回以上のほ場の割合が最も多くなっており、ほ場の単収は1ヘクタール当たり62トンと、新植ほ場の約4割まで低下している(
図14)。
政府は、サトウキビ収穫面積に占める新植の割合を20%(5年間で100%)とする目標を達成するため、2012年から5カ年の融資策を実施している。現在の新植率はおよそ10%であるものの、2015/16年度の株出し回数5回以上のほ場面積割合が前年度より減少したことは、融資策によるものとMAPAやCONABは分析している。
イ. エタノールの在庫保管経費に対する融資
エタノール供給量が減少しやすい収穫の端境期までのエタノールの在庫保管経費に対する融資が行われており、エタノールそのものを担保とし、在庫量に市場価格を乗じた額が融資額となる(
表3)。
しかし、2015/16年度は、経営難にある企業が短期間に資金を回収しようと、年度当初からエタノールの出荷量を増やしているため、収穫の端境期の供給不足が懸念されている(
図15)。また、エタノールの保管設備が不十分である企業も多く、政府自体も財政難にあるため、現地では、融資策が十分機能するかどうか疑問視する声もあった。