しかし1980年代半ば以降の縮小局面に関しては、昭和1桁生まれ以上の世代の高齢化・引退という事態との関係を見逃してはならない。
表1は、男子農業就業人口の年齢層別構成を10年ごとに見たものである。太枠が昭和1桁生まれに当たる。復帰後の沖縄県のさとうきび農業の動向を読み解く際には、生産者群を、 1)明治末〜昭和1桁生まれの第1世代、 2)昭和10年代〜30年代生まれの第2世代(第2次さとうきびブーム世代)、 3)昭和40年代〜昭和末/平成初生まれの第3世代に分けて考えてみると分かりやすい。これら3つの世代間には、そのボリューム(生産者数)に有意な差が見られる。
1985年という時点は、ボリュームの大きな第1世代が50代〜70代となり、高齢化・引退が本格化する時期に当たる。1980年代半ば以降の沖縄本島におけるさとうきび農業の劇的な縮小は、第1世代から第2世代へのさとうきび農業の継承が限定的にしかなされず、さとうきび作付地の都市的土地利用や園芸部門への転換、耕作放棄が進んだことを反映していると言えるだろう。一方離島部においてさとうきび農業が大幅な後退を免れてきたのは、肉用牛など他部門の台頭はあるにせよ、第1世代から第2世代への継承がそれなりに進んだ事実を反映している。しかし、1985年から30年が経過し、2015年には、今度は第2世代が1985年当時の第1世代と同じ年齢となった。その意味で、冒頭に述べたように、今日、沖縄県のさとうきび農業は、復帰後の第2の転換期にあると言えるのである。