(1)生産者が一体となって取り組む支部活動
今回紹介するあまみ農業協同組合知名地区さとうきび部会正名支部(以下「正名支部」という)は、知名町南西部の正名集落のさとうきび生産者で構成されている組織である。知名町のさとうきび生産者を管轄しているJAあまみ知名事業本部は、従来、町内の各集落に配置した推進員に生産者に対する経営・技術指導などを担ってもらってきた。しかし平成23年から、さとうきび増産を一層推進させることを目的として、集落ごとに支部組織を設立し、組織を構成する生産者自らに生産振興を主導してもらうこととなった。
同集落では82戸の農家のうち、さとうきびを生産する64戸全戸が正名支部に加入している。集落内ではハーベスタ7台(各生産組合所有4台、個人所有3台)、株揃え機10台、株出し管理機3台などが稼働している。
さとうきび生産者の多くは、ばれいしょや葉タバコ、花卉などとの複合経営であり、ばれいしょの作付け期間が11月〜翌3月、葉タバコは2月〜6月末となっていることから、ばれいしょ収穫後に春植えを行ったり葉タバコ収穫後に新植夏植えを行ったりと、さとうきびを軸とした作付け体系を実現させている。また、集落内の畜産農家は5戸と多くはないが、牧草の更新タイミングでさとうきび作付けに切り替えるケースも見られるという。
正名集落は、ほ場が全体的にほぼ平たんに立地し耕作が行いやすいなどの理由から、古くから黒糖生産が盛んであったといい、現在では島内有数のさとうきび生産地域となっている。昭和57年ごろから続けられてきた基盤整備が平成18年に完了し、ハーベスタの入りやすいほ場が増え、一層の増産を進めてきた。また、同集落の海岸の一部ではシャリンバイなどを用いて防風林を整備し、季節風などによる塩害防止にも努めている。
平成26年度の集落内におけるさとうきび作付面積は160ヘクタールで、これは集落内の全耕地面積200ヘクタールの80%を占める。1戸当たりの平均耕作面積も3.1ヘクタールと、町内平均である2.4ヘクタールを上回っている。集落内のさとうきび収穫面積は年々拡大している状況で、島全体の収穫面積の1割に届かんとする勢いである(
表3)。拡大の要因としては、集落内には規模拡大意欲の強い生産者が複数存在し、かつ収益性の低下などを理由に葉タバコからさとうきびに転換する生産者が近年増加していることが挙げられる。その結果、26年産では124ヘクタールという過去最大の収穫面積を達成したところである。