4. 日本の主要輸入先国の動向(2016年4月時点予測)
最終更新日:2016年5月10日
4. 日本の主要輸入先国の動向(2016年4月時点予測)
2016年5月
近年、日本の甘しゃ糖・分みつ糖(HSコード1701.14−110)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであるものの、2015年の主要輸入先国ごとの割合は、タイが71.8%(前年比13.9ポイント増)、豪州が21.8%(同8.5ポイント減)、グアテマラが6.3%(同4.6ポイント増)と、この3カ国でほぼ全量を占めている(財務省「貿易統計」)。
タイおよび豪州は毎月、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回は南アフリカを報告する。
2015/16年度の砂糖生産量はかなり減少、輸出量はかなり増加の見込み
2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)は、コメからの転作が前年度ほど進まず、サトウキビの収穫面積は141万ヘクタール(前年度比0.6%増)にとどまり、干ばつの影響もあり、生産量は1億607万トン(同1.5%減)と、わずかな減少が見込まれている(表6)。
また、砂糖生産量も、サトウキビ生育時期の干ばつおよび成熟時期の過度な降雨によって産糖量の低下が見られることから、1015万トン(同12.3%減)とかなりの減少が見込まれている。
現地報道によると、4月上旬までにサトウキビの圧搾はほぼ終了した。2015年10月からのサトウキビ圧搾量は9405万トン(前年同期比11.2%減)、砂糖生産量は1002万トン(同13.4%減)と、ともにかなり減少した。
砂糖輸出量は、インドネシアへの粗糖の輸出に加え、カンボジア、ミャンマーおよび中国への精製糖の輸出が好調なことから、876万トン(前年度比8.5%増)とかなりの増加が見込まれている。
一方で、サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)(注1)は1月、2016年の輸出量を、前年から2割下回る、710万トンと予測している。この要因として、2015/16年度の砂糖生産量が当初の見通しより下方修正されたことに加え、観光シーズンの盛り上がりなどにより国内需要がさらに高まっていることを挙げている。OCSBは2月末、この輸出見通しを踏まえ、国内供給向け砂糖(A割当)の販売割当数量(注2)について、245万トンから250万トンへの引き上げを承認した。
現地報道によると、エネルギー省は3月初旬、2015年から2035年までの新たな代替エネルギー開発計画の草案を発表した。これによると、2018年までにE10オクタン価91(エタノール混合率10%のレギュラーガソリン)を、2027年までにE10オクタン価95(同10%のハイオクガソリン)をそれぞれ廃止し、混合率の高いE20(同20%のハイオクガソリン)やE85(同85%のハイオクガソリン)の燃料に絞って、エタノールの消費拡大を図ることを計画している。
4月初旬、タイ政府は、生産者に支払われる補てん金や、販売割当制度および国内販売価格の設定は、間接的な輸出補助金に当たり、国際貿易協定に違反しているとして、ブラジル政府からWTOに提訴された。問題解決に向け、ブラジル政府との間で60日以内の協議が行われることとなるが、サトウキビ・砂糖委員会(TCSB)は、当該補てん金の財源は、「サトウキビ・砂糖基金」(注3)であり、販売割当制度および国内販売価格の設定に関しても政府による金銭的な支援は行っていないため、貿易協定を順守していると主張している。
(注1)タイのサトウキビおよび砂糖関連政策の執行機関である3省(工業省(製糖関係)、農業協同組合省(原料作物関係)、商務省(砂糖の売買関係))とサトウキビ生産者および製糖企業の代表で構成され、工業省内に設置された「サトウキビ・砂糖委員会(TCSB)」の事務局。
(注2)タイ産砂糖は、A割当と呼ばれる国内供給向けとB割当およびC割当と呼ばれる輸出向けなどの販売割当制度が行われている。
(注3)サトウキビ生産者と製糖企業からの拠出金や国内販売時に上乗せされる砂糖1キログラム当たり5バーツ(16円(3月末日TTS:1バーツ=3.27円))を基金へ拠出し、財源としている。
2015/16年度の砂糖生産量、輸出量ともにわずかに増加の見込み
2015/16砂糖年度(7月〜翌6月)は、特にアジアへの輸出需要の高まりから、サトウキビの収穫面積は39万ヘクタール(前年度比8.3%増)とかなりの増加が見込まれるものの、主産地であるクイーンズランド(QLD)州が一時干ばつに見舞われたため、生産量は3310万トン(同2.3%増)とわずかな増加にとどまるものと見込まれる(表7)。
また、砂糖生産量は486万トン(同2.0%増)、輸出量は376万トン(同1.9%増)と、ともにわずかな増加が見込まれている。
豪州農業資源経済科学局(ABARES)は3月上旬、2015/16年度および2016/17年度の生産予測を公表した。これによると、2015/16年度は、降雨不足などの影響によりサトウキビの単収は低下するものの、砂糖生産量は480万トン(同5.0%増)、輸出量は385万トン(同4.7%増)と、ともにやや増加が見込まれている。2016/17年度も、サトウキビ栽培面積の増加や単収の向上により、砂糖生産量は508万トン(同5.9%増)、輸出量は400万トン(同4.1%増)と、ともにやや増加が見込まれている。
現地報道によると、QLD州北部に、同州産のサトウキビを主な原料とし、年間最大2億リットルの燃料用エタノールを製造するプラントの建設が計画されている。連邦政府は、同州を「パリ協定」(注)に基づく地球温暖化対策の推進州と位置付けており、同プラントを豪州初の商業用バイオ燃料生産施設として期待している。
(注)2015年11月30日〜12月13日にフランスで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択された新たな法的枠組み。世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度未満に保つとともに、1.5度に抑える努力を追求することなどにより、気候変動の脅威への世界的な対応を強化することを目的としている。
2015/16年度の砂糖生産量、輸出量はともに大幅減の見込み
2015/16砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、30万ヘクタール(前年度比7.1%減)とかなり減少し、生産量は1707万トン(同1.0%減)とわずかな減少が見込まれている(表8)。
砂糖生産量は、100年に1度ともいわれる深刻な干ばつの影響により製糖歩留まりが低下していることから、173万トン(同22.6%減)と大幅な減少が見込まれている。これを受け、輸出量も29万トン(同62.4%減)と大幅な減少が予想されている。
なお、南アフリカ砂糖協会(SASA)は、砂糖生産量を163万トン(同22.7%減)と予測しており、国内供給量の確保が重要であるとの考えを示している。
一方で、南アフリカ政府は先ごろ、砂糖の過剰摂取の抑制を目的として、砂糖を含む飲料への課税を計画していることを明らかにした。現地報道によると、課税率は20%で、およそ70億ランド(633億円(3月末日TTS:1ランド=9.04円))の税収が見込まれるとのことである。
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