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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2016年5月時点予測)

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最終更新日:2016年6月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2016年5月時点予測)

2016年6月

 
2015/16年度の砂糖生産量はやや減少、輸出量はわずかに増加の見込み
 Agra CEAS Consulting(農産物の需給などを調査する英国の大手民間調査会社)の2016年5月現在の予測によると(以下、特に断りがない限り同予測に基づく記述)、2015/16砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、900万ヘクタール(前年度比0.1%減)と前年度並みと見込まれ、単収の向上により、生産量は6億6559万トン(同4.9%増)と、やや増加が見込まれる(表2)。しかし、エルニーニョ現象の影響とされる過度な降雨により産糖量が減少していることから、砂糖の生産量は3519万トン(以下、特に断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算。同5.7%減)とやや減少するものの、世界の主要生産国で減産が見込まれ、砂糖需要が高まっていることから、輸出量は2512万トン(同1.9%増)とわずかな増加が見込まれる。

 一方、ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)(注1)が4月中旬に公表した2015/16年度サトウキビ生産状況等調査の最終報告によると、同年度のサトウキビの栽培面積は、865万ヘクタール(同4.0%減)とやや減少したものの、単収の向上により、生産量は6億6559万トン(同4.6%増)とやや増加した。砂糖生産量は3350万トン(同6.2%減)とかなり減少したのに対し、エタノール生産量は3046万キロリットル(同5.9%増)とやや増加した。これは、経営の悪化している企業が短期間で利益を回収するため、国内の含水エタノール(注2)の需要の高まりに対応して、サトウキビのエタノールへの仕向け量を増やしたことが要因と考えられる。

 CONABは、同報告で2016/17年度の第1回生産見通しも公表している。これによると、2016/17年度のサトウキビの栽培面積は907万ヘクタール(同4.6%増)、サトウキビ生産量も6億9098万トン(同3.7%増)と、ともにやや増加し過去最高と見込まれる。これは、収穫期の天候不順などにより前年度に収穫しなかったサトウキビを収穫する動きが見られることが要因と考えられる。砂糖生産量は3751万トン(同10.7%増)とかなりの増加が見込まれるのに対し、エタノール生産量は3034万キロリットル(同0.4%減)と前年度並みと見込まれる。これは、2015年末ごろから国内の含水エタノール価格が高騰しているため、企業がエタノール需要の低下を見込んで、サトウキビの砂糖への仕向け量を増やすとの予想が背景にあると考えられる。

 また、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注3)も、ブラジル中南部地域の2016/17年度の生産見通しを公表している。これによると、サトウキビ生産量は6億500万〜6億3000万トン、砂糖生産量は3350万〜3500万トンと見込まれ、砂糖生産量の予測は、企業の経営改善状況やサトウキビの品質などに左右されるとしている。また、エタノール生産量は、2750万〜2870万キロリットルと見込まれる。

 UNICAが発表した2016年4月の生産実績報告によると、ブラジル中南部地域のサトウキビ圧搾量は、6901万トン(前年同月比71.8%増)と大幅に増加した。これは、天候に恵まれ、前述のように前年度に収穫しなかったサトウキビを収穫する動きが加速していることによる。砂糖の生産量も324万トン(同123.9%増)と大幅に増加した。これは、サトウキビ圧搾量の増加に加え、サトウキビ1トン当たりの産糖量が47.0キログラム(同30.3%増)と増加していることや、企業が砂糖への仕向け量を増やしているためとみられる。同報告によると、エタノールの生産量は、278万キロリットル(同62.4%増)となっている一方、輸出量も含めたエタノールの販売数量は、203万キロリットル(同7.0%減)となっている。このうち、含水エタノールの国内販売量は、118万キロリットル(同19.1%減)と大幅に減少した。この要因は、これまでの旺盛な消費により在庫量が低下し、エタノール価格が高騰したことが挙げられる。石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)によると、4月の含水エタノール小売価格(サンパウロ州)が、1リットル当たり2.56レアル(82円(4月末日TTS:1レアル=32円))と、ガソリン小売価格の同3.54レアル(113円)の70%(注4)を上回っている。このため、含水エタノールのガソリンに対する優位性は低下していると考えられる。

(注1)ブラジル農務省直轄の公社であり、主要作物の生産状況報告や予測などを行っている機関。
(注2)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注3)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
(注4)一般的なフレックス車のエタノール燃料効率がガソリンの70%程度とされていることから、消費者の購入判断の基準となっている。


 










 

2015/16年度の砂糖生産量はかなり減少、輸出量は大幅増の見込み
 2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は506万ヘクタール(前年度比0.1%減)と前年度並みと見込まれるものの、生産量は3億5889万トン(同0.9%減)と、干ばつの影響によりわずかな減少が見込まれる(表3)。産糖量の低下も見られることから、砂糖生産量は2720万トン(同11.2%減)と、かなりの減少が見込まれる。

 インド砂糖製造協会(ISMA)が先ごろ発表した2015年10月〜2016年4月の生産実績によると、砂糖生産量は、精製糖換算で2460万トン(前年同期比10.9%減)とかなり減少した。このうち、最大生産地であるマハラシュトラ州では838万トン(同19.1%減)、カルナタカ州でも404万トン(同16.0%減)と、ともに大幅に減少した(図3)。なお、ISMAは、2015/16年度の砂糖生産量を2500万トン(前年度比11.7%減)と見込んでいる。

 現地報道によると、マハラシュトラ州政府は、同州の砂糖生産量の2割弱を占めるマラスワダ地区への工場新設を今後5年間承認しないことを決定した。これは、深刻な干ばつ被害を受けた同地区の水不足対策とされているが、ISMAは安直かつ性急な対応であるとして非難している。

 砂糖輸出量は、ブラジルなどから粗糖を輸入し、精製糖を輸出する動きが強まるとの予測から、350万トン(前年度比34.9%増)と大幅な増加が見込まれている。ただし、干ばつによる減産により、4月の国内白糖卸売価格が1トン当たり3万4749ルピー(6万2896円(4月末日TTS:1ルピー=1.81円)。前年同月比19.2%増)と高騰しているため、中央政府が2015/16年度に新設したばかりの輸出促進政策(注1)の廃止を検討しているという現地報道もあり、今後、輸出量の予測は下方修正され、純輸入国に転じるとの見方も出ている。

 なお、中央政府は、主に子どもの砂糖の過剰摂取を抑制する目的で、砂糖を含む飲料に対する課税およびこれらの商品の広告宣伝方法に関する制限を検討しているという報道や、2016年10月までにエタノール混合率5%のガソリンの普及がほぼ確実となったことを受けて、石油企業連合(OMCs)(注2)に対し、同10%のガソリンの販売を許可したとの報道もある。

(注1)中央政府が、負債に苦しむ国内製糖企業に対して新設した救済措置。輸出促進を図るため、2015/16年度の輸出割当数量を400万トンと設定し、過去3年の平均生産量を基に各工場に割り当てる。加えて、輸出割当数量の8割以上を輸出した企業に対し、生産者へ支払う原料代のうち、サトウキビ1トン当たり45ルピー(81円)を補てんすることを発表した。なお、この補てん金の財源は、国内販売される砂糖への課税額引き上げ(100キログラム当たり25ルピー(45円)から200ルピー(362円))により、拠出されるものとみられる。
(注2)インド石油公社をはじめとする石油販売会社の連合で、エタノール売買に係る入札を行う組織。


 












 


2015/16年度の砂糖生産量は大幅減、輸入量はかなり増加の見込み
 2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)は、サトウキビについては、砂糖の国際価格が低水準にあったこともあり、生産者が果物や野菜などの他作物へ転換する動きが見られたことや、労働費の上昇により新植が進まないことから、サトウキビ収穫面積は166万ヘクタール(前年度比5.7%減)とやや減少が見込まれ、生産量は1億1730万トン(同6.6%減)とかなりの減少が見込まれる(表4)。

 一方、てん菜については、最大生産地である新疆ウイグル自治区の減産により、収穫面積は14万ヘクタール(同2.6%減)、生産量は734万トン(同8.3%減)と、ともに減少が見込まれる。天候不順からサトウキビおよびてん菜からの産糖量も低下していることが響き、砂糖の生産量は、911万トン(同20.6%減)と大幅な減少が見込まれる。

 中国砂糖協会(CSA)が先ごろ発表した2015年10月〜2016年4月の生産実績によると、砂糖生産量は、精製糖換算で855万トン(前年同期比17.1%減)と大幅な減少となった(図4)。これは、てん菜糖は84万トン(同13.8%増)とかなり増加したものの、甘しゃ糖が771万トン(同19.4%減)と大幅に減少したことによる。特に、サトウキビの最大生産地である広西チワン族自治区は、1月に降霜、降雪に見舞われたため、収穫が遅れ、産糖量が低下していることから、511万トン(同19.1%減)と大幅に減少した。

 また、砂糖輸入量は、550万トン(前年度比12.9%増)とかなりの増加が見込まれる。これと併せて、ミャンマーやカンボジアなどからの「非公式な」砂糖の流入の急増が、国内生産量の減少を補っているものと想定される。


 













 

2015/16年度の砂糖生産量は大幅減、輸入量は大幅増の見込み
 2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)は、てん菜播種時の天候に恵まれたものの、前年度末の在庫量の増加による砂糖価格下落への懸念から、てん菜収穫面積は144万ヘクタール(前年度比12.0%減)とかなりの減少が見込まれる(表5)。また、夏の熱波の影響によるポーランドやドイツなどの減産見通しにより、てん菜生産量は9882万トン(同24.6%減)、砂糖生産量は1475万トン(同23.6%減)と、ともに大幅な減少が見込まれる。

 この減産を受け、砂糖輸入量は、402万トン(同16.4%増)と大幅な増加が見込まれる。

 減産により、EU域内の砂糖在庫量は過去10年で最低水準と見込まれ、欧州委員会は、食品メーカーなどの実需者から、需給のひっ迫に対して特別な対策を講じるよう強く迫られている。このような状況を受け、欧州委員会は4月末に検討会議を開催したが、まだその具体的な対策は起草されていない。5月末の会議で有力な対策を決定するものとみられており、その内容としては、追加輸入や生産割当外数量の食用への転換により30万〜40万トンを手当てすることなどが予想されている。

 
 








 

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