2015/16年度の砂糖生産量はやや減少、輸出量はわずかに増加の見込み
2015/16砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、900万ヘクタール(前年度比0.1%減)と前年度並みと見込まれ、単収の向上により、生産量は6億6559万トン(同4.9%増)と、やや増加が見込まれる(
表2)。しかし、エルニーニョ現象の影響とされる過度な降雨により産糖量が減少していることから、砂糖生産量は3519万トン(同5.7%減)とやや減少するものの、世界の主要生産国で減産が見込まれる一方、砂糖需要は高まっていることから、輸出量は2512万トン(同1.9%増)とわずかな増加が見込まれる。これに伴い、期末在庫量は、76万トン(同70.0%減)と大幅な減少が見込まれる。
また、ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)
(注1)が4月中旬に公表した2015/16年度サトウキビ生産状況等調査の最終報告によると、同年度のサトウキビ栽培面積は、865万ヘクタール(同3.9%減)とやや減少したものの、単収の向上により、生産量は6億6559万トン(同4.9%増)とやや増加した。砂糖生産量は3349万トン(同5.8%減)とやや減少したのに対し、エタノール生産量は3046万キロリットル(同6.3%増)とかなり増加した。これは、経営の悪化している企業が短期間で利益を回収するため、国内の含水エタノール
(注2)の需要の高まりに対応して、サトウキビのエタノールへの仕向け量を増やしたためと考えられる。
CONABは、同報告で2016/17年度の第1回生産見通しも公表している。これによると、同年度のサトウキビ栽培面積は907万ヘクタール(同4.8%増)、サトウキビ生産量も6億9098万トン(同3.8%増)と、ともにやや増加し過去最高と見込んでいる。これには、収穫期の天候不順などにより前年度に収穫しなかったサトウキビの収穫も考慮されていると考えられる。砂糖生産量は3751万トン(同12.0%増)とかなりの増加が見込まれるのに対し、エタノール生産量は3034万キロリットル(同0.4%減)と前年度並みと見込まれる。
ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)
(注3)が発表した2016年4月〜5月の生産実績報告によると、ブラジル中南部地域のサトウキビ圧搾量は、1億4097万トン(前年同期比28.9%増)と大幅に増加した。これは、天候に恵まれ、前述のように前年度に収穫しなかったサトウキビを収穫する動きが加速していることによる。砂糖生産量も699万トン(同50.3%増)と大幅に増加した。これは、サトウキビ圧搾量の増加に加え、サトウキビ1トン当たりの産糖量が49.6キログラム(同16.6%増)と大幅に増加していることや、企業が砂糖への仕向け量を増やしているためとみられる。同報告によると、同期間のエタノールの生産量も、584万キロリットル(同24.2%増)と大幅に増加した。
一方、同期間の輸出量も含めたエタノールの販売数量は、445万キロリットル(同0.2%減)となっている。このうち、含水エタノールの国内販売量は、262万キロリットル(同11.7%減)と、エタノールのガソリンに対する価格優位性が弱まったことなどから、かなり減少した。
現地報道によると、砂糖・エタノール業界は、ガソリンに係る国税の燃料税(CIDE)を現行の1リットル当たり0.1レアル(3円(5月末日TTS:1レアル=31円))から同0.6レアル(19円)へ引き上げを要請している。この引き上げが実行されれば、エタノールのガソリンに対する価格優位性が高まり、エタノール需要の増加が見込まれることから、製糖企業がサトウキビのエタノールへの仕向け割合を増加させる可能性も考えられる。しかし、現在国際砂糖価格も上昇傾向にあることから、サトウキビの砂糖およびエタノールへの仕向け割合は企業判断とサトウキビの品質にも左右されるものと思われる。
また、国立社会経済開発銀行(BNDES)は5月末に、2016年の融資策(Prorenova)
(注4)として、主にサトウキビの高単収品種の普及を目的に、15億レアル(465億円)の融資を承認した。
(注1)ブラジル農務省直轄の公社であり、主要作物の生産状況報告や予測などを行っている機関。
(注2)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注3)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
(注4)サトウキビの新植促進や新規ほ場拡大など、サトウキビおよび砂糖産業の振興を目的に、2012年1月より政府が講じている融資策。
2015/16年度の砂糖生産量はかなり減少、輸出量は大幅増の見込み
2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は506万ヘクタール(前年度比0.1%減)と前年度並みと見込まれるものの、生産量は3億5889万トン(同0.9%減)と、干ばつの影響によりわずかな減少が見込まれる(表3)。産糖量の減少も見られることから、砂糖生産量は2720万トン(同11.2%減)と、かなりの減少が見込まれる。
インド砂糖製造協会(ISMA)が先ごろ発表した2015年10月〜2016年4月の生産実績によると、砂糖生産量は、精製糖換算で2460万トン(前年同期比10.9%減)とかなり減少した。このうち、最大生産地であるマハラシュトラ州では838万トン(同19.1%減)、カルナタカ州でも404万トン(同16.0%減)と、ともに大幅に減少した(図4)。なお、ISMAは、2015/16年度の砂糖生産量を2500万トン(前年度比11.7%減)と見込んでいる。
砂糖輸出量は、中央政府が2015/16年度に新設した輸出促進政策(注)などに加え、ブラジルなどから粗糖を輸入し、精製糖を輸出する動きが強まるとの予測から、350万トン(同34.9%増)と大幅な増加が見込まれている。ただし、干ばつによる減産により、5月の国内白糖卸売価格が1トン当たり3万6472ルピー(6万6014円(5月末日TTS:1ルピー=1.81円)。前年同月比27.3%増)と高騰しているため、中央政府は先ごろ、この輸出促進政策の廃止を決定した。
さらに、中央政府は6月17日、国内供給の確保および高騰している国内砂糖価格の統制のため、砂糖の輸出関税(20%)の導入を発表した。これにより、今後輸出量予測は下方修正され、純輸入国に転じるとの見方も出ている。
(注)中央政府が、負債に苦しむ国内製糖企業に対して講じた救済措置。輸出促進を図るため、2015/16年度の輸出割当数量を400万トンと設定し、過去3年の平均生産量を基に各工場に割り当て、輸出割当数量の8割以上を輸出した企業に対し、生産者へ支払う原料代のうち、サトウキビ1トン当たり45ルピー(81円)を補てんすることを発表していた。