2015/16年度の砂糖生産量はやや減少、輸出量はわずかに増加の見込み
英国の調査会社Agra CEAS Consulting(農産物の需給などを調査する英国の大手民間調査会社)の2016年7月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2015/16砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、900万ヘクタール(前年度比0.1%減)と前年度並みと見込まれ、単収の向上により、生産量は6億6559万トン(同4.9%増)と、やや増加が見込まれる(
表2)。しかし、エルニーニョ現象の影響とされる過度な降雨により産糖量が減少していることから、砂糖生産量は3519万トン(粗糖換算(以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算)、同5.7%減)とやや減少が見込まれる。一方、世界の主要生産国で減産が見込まれる中、砂糖需要は高まっていることから、輸出量は2512万トン(同1.9%増)とわずかな増加が見込まれる。これに伴い、期末在庫量は、76万トン(同70.0%減)と大幅な減少が見込まれる。
2016/17年度の砂糖生産量はかなり増加、輸出量は前年度並みの見込み
2016/17年度のサトウキビ収穫面積は、収穫期の天候不順などにより前年度に収穫しなかったサトウキビの収穫面積も含め、959万ヘクタール(前年度比6.6%増)とかなりの増加が見込まれるものの、単収の低下が見込まれることから、生産量は6億8195万トン(同2.5%増)と、わずかな増加にとどまると見込まれる。一方で、2015年末ごろから国内の含水エタノール
(注1)の価格が高騰しているため、製糖企業がエタノール需要の低下を見込んで、サトウキビの砂糖への仕向け割合を増やすとの予想から砂糖生産量は3750万トン(同6.6%増)とかなりの増加が見込まれる。世界の砂糖需要が引き続き高水準と見込まれることから、輸出量は2490万トン(同0.9%減)と前年度並みと見込まれる。
ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)
(注2)が発表した2016年4月〜6月の生産実績報告によると、同国中南部地域のサトウキビ圧搾量は、2億1462万トン(前年同期比9.6%増)とかなり増加した。砂糖生産量も1098万トン(同19.9%増)と大幅に増加した。これは、サトウキビ圧搾量の増加に加え、サトウキビ1トン当たりの産糖量が51.2キログラム(同9.4%増)とかなり増加していることや、企業が砂糖への仕向け割合を増やしているためとみられる。同報告によると、同期間のエタノール生産量も、884万キロリットル(同5.5%増)とやや増加した。
一方、同期間の輸出量も含めたエタノールの販売数量は、691万キロリットル(同0.8%減)となっている。このうち、含水エタノールの国内販売量は、388万キロリットル(同13.4%減)と、エタノールのガソリンに対する価格優位性が低下したことなどから、かなり減少した。
現地報道によると、連邦政府が税収の増加を目的に、ガソリンに対する国税の燃料税(CIDE)の増税を行うとの見方が強まっている。現行の1リットル当たり0.1レアル(3円(6月末日TTS:1レアル=32円))から引き上げられれば、エタノールのガソリンに対する価格優位性が高まり、エタノール需要が増加し、製糖企業がサトウキビのエタノールへの仕向け割合を増加させる可能性も考えられる。しかし、現在国際砂糖価格も上昇傾向にあることから、サトウキビの砂糖およびエタノールへの仕向け割合は企業判断とサトウキビの品質にも左右されるものと思われる。
また、7月14日にサントス港のルモ社の砂糖輸出ターミナルで火災が発生したとの報道もあった。同社によると、倉庫同士をつなぐベルトコンベアで火災が発生し、荷積みおよび荷下ろし作業が一時中断されたが、その後すぐに消し止められ、倉庫内の砂糖や穀物に被害はなく、1時間余りで復旧したとのことである。
(注1)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注2)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。