沖縄県における平成27年産さとうきびの生産状況について
最終更新日:2016年9月9日
沖縄県における平成27年産さとうきびの生産状況について
2016年9月
【要約】
沖縄県の平成27年産さとうきびは、収穫面積1万3212ヘクタール、生産量は75万4671トンと前年産を上回る実績となった。本土復帰以後の最低生産となった23年産以後、回復傾向となっているものの、先島地域への相次ぐ大型台風の襲来により生育が停滞し、単位収量、生産量ともに回復には至っていない。
1.さとうきびの位置付け
沖縄県におけるさとうきびは、県全体の農家数の約7割、耕地面積の約5割、農業産出額の約2割を占める基幹作物であり、特に多くの離島を抱える本県において製糖業とともに地域経済、社会を支える重要な作物となっている。また、さとうきびは他作物に比べて比較的台風や干ばつに強く、離島地域においては代替の効かない作物でもある。
沖縄県では、国の「さとうきび増産プロジェクト基本方針」に基づき、平成18年に策定した各島別および県段階における生産目標や取り組み方向を示した「さとうきび増産プロジェクト計画」を27年に改定するとともに、24年度から新たにスタートした「沖縄振興特別措置法」に基づき、「沖縄県21世紀ビジョン基本計画」を24年5月に策定し、生産基盤の整備、安定生産技術の開発および普及、機械化や地力増強、病害虫防除対策の推進、生産法人など担い手の育成、優良品種の開発・普及など総合的な施策展開による生産振興を推進している。
2.平成27年産さとうきびの生育状況
(1)沖縄地域(沖縄本島、伊平屋島、伊是名島、伊江島、粟国島、久米島、南大東島、北大東島)
生育初期は、梅雨入りまでの少雨傾向により生育は緩慢であったが、生育旺盛期、梅雨明け後の適度な降雨により順調に生育した。本島地域は、台風による被害も少なく、生育後期も適度な降雨により順調に生育した。久米島は、5月、7月、8月と3個の台風襲来により折損、葉片裂傷が見られ、前年産に比べ減産した。
大東地域では、4月までは干ばつの影響はあったものの、中旬以降は適度な降雨もあり順調に生育した。7月の台風襲来により折損や葉片裂傷、潮害などの被害をもたらし、その後の干ばつもあって生育は抑制されたが、8月以降の台風接近はなく、回復するまでに十分な期間があったことから前年産に比べ増産した。
(2)宮古地域(宮古島、伊良部島、多良間島)
初期生育はおおむね順調であったものの、生育旺盛期の6月、9月〜10月の降水量が平年を下回り生育の停滞が見られた。また、5月、7月、8月の台風襲来により折損、葉片裂傷などの被害による生育の遅れもあったが、生育後期の気象条件に恵まれたことから前年産に比べ増産した。
(3)八重山地域(石垣島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島)
夏植の初期生育期、生育旺盛期の6月、9月〜10月が少雨傾向で、さらに5月中旬〜9月末の相次ぐ5個の台風襲来により生育が停滞し、登熟も大幅に遅れ、12月〜収穫期には多雨寡日照のため、糖度が低下した。与那国島では、観測史上最大の最大瞬間風速81.1m/sを記録した台風21号の襲来があったが、風が一方向で通過後の降雨もあったことから、折損、潮害などの被害も比較的少なく、面積増加もあったことから前年産および平年産に比較しても増産した。
3.平成27年産さとうきびの生産状況
平成27年産さとうきびの収穫面積は1万3212ヘクタールとなり、26年産に比較して476ヘクタール増加した(対前年比103.7% )。生産量は6万6167トン増加し75万4671トン(同109.6 %)、 10アール当たり収量は5712キログラムと、前年に比較して10アール当たり306キログラム増加(同105.7%)した(
表1、
2、
3)。
沖縄地域では、収穫面積は84ヘクタール減少したものの、10アール当たり収量が前年に比較して768キログラム増加したことから、生産量も増加した。宮古地域では、10アール当たり収量は77キログラム減少したものの、収穫面積が401ヘクタール増加したことから、前年に比較して生産量は増加した。八重山地域では、収穫面積は161ヘクタール増加したものの、10アール当たり収量が前年に比較して418キログラム減少したことから、生産量はわずかながら増加した。
なお、各地域別生産量では、沖縄地域(周辺離島を含む)が全体の40.4%、宮古地域が45.7%、八重山地域が13.9%となっている。
作型別では、夏植栽培が69ヘクタール減少し4730ヘクタール(全収穫面積に占める割合35.8%)、春植栽培が90ヘクタール減少し1371ヘクタール(同10.4%)、株出し栽培が636ヘクタール増加し7111ヘクタール(同53.8%)となった(
図2)。
品種構成は、農林27号が全収穫面積の34.2%を占め、次いで農林21号が10.4%、農林25号が8.0%、農林8号が6.5%、農林15号が5.2%となった(
図3)。
(1)沖縄地域
収穫面積は6012ヘクタールで平成26年産に対して84ヘクタール減少したものの、10アール当たり収量は5066キログラム(対平年比117.9%)で前年に対して増加し、生産量は30万4541トンで4万2530トン(対前年比116.2%)増加した。
作型別では、夏植栽培770ヘクタールで269ヘクタール減少し、春植栽培930ヘクタールで25ヘクタール増加、収穫面積の約7割を占める株出栽培は、4311ヘクタールで160ヘクタール増加となった。生産量は夏植栽培で前年に比較して減少したものの、春植・株出栽培の収穫面積および10アール当たり収量の増加に伴い、全体として増収となった。
品種構成は、農林21号が15.3%、農林8号が12.3%、農林28号が12.0%を占めており、次いで農林15号、農林22号も普及している。
(2)宮古地域
収穫面積は5203ヘクタールで平成26年産に比較して401ヘクタール増加し、10アール当たり収量は6632キログラム(対前年比98.9%)、生産量は34万5072トンで2万2865トン(同107.1%)と増加した。
作型別では、近年、株出栽培が増加傾向にあり、 27年産は2037ヘクタール(同115.9%)、生産量は11万2719トン(同119.5%)と、昨年に引き続き増加した。
品種構成は、農林27号が69.6%と最も多く、次いで農林21号6.7%となっている。
(3)八重山地域
収穫面積は1998ヘクタールで平成26年産に対して161ヘクタール増加し、10アール当たり収量は5259キログラム(対前年比92.6%)、生産量は10万5058トンで772トン(同100.7%)増加した。
作型別では、春植栽培で58ヘクタール減少したものの、夏植栽培23ヘクタール、株出栽培196ヘクタール増加となり、夏植・株出栽培への移行が見られる。生産量は春植栽培で5726トン減少となった一方、夏植栽培で3810トン増加の7万214トン、株出栽培で2687トン増加の2万7700トンであった。
品種構成は、農林27号が30.1%を占め、次いで農林25号が24.3%と増加し、農林22号14.9%、農林15号14.2%と品種構成が入れ替わっている。
4.ハーベスタによる収穫状況
さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、これまで国庫補助事業などを活用したハーベスタの導入が推進されてきた。さらに、県では既存のハーベスタの導入に加え、刈り取り機、脱葉施設などの導入を進め、地域に応じた収穫体系を含む機械化一貫作業体系の確立を推進している。
平成27年産では、県内全域において大型、中型、小型の各機種合計362台のハーベスタが稼働し、機械収穫率は収穫面積の67.3%となっている。
5.製糖工場の操業状況
沖縄県の製糖工場は、分みつ糖工場が8社9工場(8島)、含みつ糖工場が4社8工場(8島)が操業している。
分みつ糖工場の平成27年産原料処理量は、26年産より5万9277トン増加し69万3557トン(対前年比109.3%)となり、買入糖度(以下「糖度」という)は、前年より0.48度低い13.64度となった。
含みつ糖工場の27年産原料処理量は、26年産より6890トン増加し6万1114トン(同112.7%)となった。
おわりに
沖縄県では平成27年産を目標とする「さとうきび増産プロジェクト」および33年を目標とする「沖縄21世紀ビジョン基本計画」に基づき、各種の生産振興施策・事業を展開しており、収穫面積および10アール当たり収量が前年に対して増加したことから、生産量は26年産に対して増産が図られた。
しかしながら、相次いで襲来した台風、一部地域における干ばつ被害の発生やメイチュウ類の被害などにより10アール当たり収量の回復が遅れており、全般的には23年産の大減産からの回復は途上にあり、一層の取り組み強化が求められている。
また、今期の糖度は長雨による日照不足・秋から冬にかけての高温などの影響で全体的に糖度が上がらず、特に八重山地方に関しては26年産と比較して約2度低い結果となった。
このようなことから、「さとうきび増産プロジェクト」を平成37年を目標とする新たな計画に見直し、25年度からの「さとうきび増産基金」の活用による生産対策に引き続き、27年度からは気象災害、病害虫被害などに対応したセーフティネットとして活用することによる生産回復を推進し、関係機関・団体と一体となった早期の生産回復、増産への取り組みを強化し、本県さとうきび生産農家と製糖企業の経営の安定化に向けて取り組んでいるところである。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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