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平成27年度甘味料の需要実態調査の概要

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最終更新日:2016年9月9日

平成27年度甘味料の需要実態調査の概要
〜果糖、ソルビトール〜

2016年9月

調査情報部

【要約】

 果糖は製品の特性を生かすために使用され、ソルビトールは製品の物性を調整・改良するために使用されている。仕入れ量、仕入れ価格ともに総じて安定的に推移している。なお、砂糖への切り替えの意向を示す企業はいなかった。

はじめに

 当機構では、甘味料の需要実態を把握するため、菓子類、飲料、乳製品、パン、調味料などを製造する食品製造企業52社に対して、平成27年(1〜12月、以下同じ)における甘味料(砂糖、液糖、黒糖(国内産)、異性化糖、加糖調製品、人工甘味料など)の使用状況について、選択回答式によるアンケート調査を実施した。

 調査項目は、使用している甘味料ごとに、「使用製品」「使用理由」「仕入れ量」「仕入れ量の動向」「今後の仕入れ見込み」「仕入れ価格」「仕入れ価格の動向」「品質面および調達面に関する評価」などとした。

 前月号までに、砂糖、液糖、黒糖(国内産)、異性化糖、加糖調製品、人工甘味料に係る調査結果を取り上げて報告してきた。本稿では、その最終回として、でん粉由来の甘味料「果糖」および糖アルコール類の甘味料「ソルビトール」の調査結果を報告する。

1. 果糖の需要実態

 果糖は、果物や蜂蜜の中に多く含まれる天然の糖の1つであるが、自然界には単体・単独では存在しない。そのため、異性化糖から果糖を分離・濃縮し、結晶化させるなどの方法により製造される。温度の変化によって甘味度が変わる特性があり、温度が低いほど甘みが強くなる(注)。加えて、低温条件下でも溶けやすく結晶化しにくい特性があることから、アイスクリームなどの冷菓、清涼飲料などの用途で使用されることが多い。

 財務省「貿易統計」によると、平成27年の輸入量は2万8981トン(前年比8.7%増)であった(図1)。国別に見ると、米国が圧倒的に多く、全体の約9割を占め、次いでフィンランド、イスラエルなどである。なお、中国産は、23年に初めて輸入され、その年の輸入量は20トンであったが、27年には約600トンと4年間で約30倍に増加している。

(注)ショ糖の甘味度を1とした場合、常温では約1.2倍、低温では1.5〜1.7倍、高温では約0.8倍の倍率。

図1 果糖の輸入量の推移

(1)使用状況
 果糖を使用していたのは52社のうち11社と、調査対象企業の21%を占めた。用途別の企業数(延べ数)は、「飲料向け」が6社と最も多く、次いで「乳製品向け」5社、「調味料向け」1社であった。なお、飲料向けは清涼飲料、酒類、乳飲料などに使用され、乳製品向けはアイスクリーム、ヨーグルトなどに使用されている。

 果糖を使用する理由として、回答した10社すべてが「甘みが製品の特性に合うため」であった(図2)。

図2 果糖の使用理由(複数回答)

(2)調達状況
ア.仕入れ量

 平成27年における仕入れ量は、「100トン未満」が5社と最も多く、次いで「100〜299トン」「500トン以上」がそれぞれ2社であった(図3)。「500トン以上」と回答した企業の用途は、飲料向けおよび乳製品向けであった。

 使用する果糖の原産国は、7社から回答が得られ、「国内産」が3社、「米国産」「イスラエル産」「国内産と米国産の併用」「米国産とイスラエル産の併用」がそれぞれ1社であった。

図3 果糖の使用料

イ.仕入れ量の動向
 平成26年(1〜12月、以下同じ)と比較した平成27年の仕入れ量の動向は、「横ばい」が6社と最も多く、次いで「やや減少」2社、「大幅に増加」1社であった(図4)。やや減少する理由としては「使用製品の製造量が減少したため」で、その製品はヨーグルトや清涼飲料であった。大幅に増加する理由としては「使用製品の製造量が増加したため」で、その製品は酒類であった。

図4 果糖の仕入れ量の動向

ウ.今後の仕入れ見込み
 
今後の仕入れ見込みは、「横ばい」が7社と最も多く、次いで「やや減少」「大幅に減少」がそれぞれ1社であった(図5)。なお、「やや減少」と回答した企業は上記イで「使用製品の製造量が減少したため」と回答した企業と同一であり、「大幅に減少」と回答した企業は年間500トン以上使用している企業であり、他の甘味料に切り替えることを検討していた。

図5 果糖の今後の仕入れ見込み

エ.仕入れ価格の動向
 1キログラム当たりの仕入れ価格(平成28年1月時点、以下同じ)は、6社から回答が得られ、「150〜199円」が2社、「200〜249円」が4社であった。

 また、平成26年と比較した平成27年の仕入れ価格の動向については、「横ばい」が9社、「やや上昇」が1社であった(図6)。「やや上昇」の理由としては、「為替が変動したため」であった。

図6 果糖の仕入れ価格の動向

(3)品質面および調達面に関する評価
 
「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価において、品質面については、「満足」が3社、「やや満足」が1社、「普通」が6社であった(無回答1社)。調達面については、「満足」が1社、「やや満足」が1社、「普通」が6社、「やや不満」が2社であった(無回答1社)。

 調達面でやや不満とする理由としては、「国内産は供給量が安定しないため」「製造量が少ない国内産は外国産の価格が値上がりすると品薄になりやすいため」であった。このことから、国内産は、実需者から安定供給が求められていることが分かる。

 また、調達面で「やや不満」と回答した企業の1社は、上記ウで他の甘味料への切り替えを検討していた企業と同一であり、供給の不安定さが切り替えの理由の1つになっていることがうかがえる。

(4)砂糖への切り替えの意向
 今後の砂糖への切り替えの意向は、回答が得られた8社すべてが「意向なし」であった。さらに、どのような条件であれば砂糖に切り替えるのか質問したところ、回答が得られた6社すべてが「製品の特性に合わないので切り替えは困難」であった。

 なお、これに回答した企業の中には、上記ウで他の甘味料への切り替えを検討していた企業も含まれており、砂糖以外の甘味料を代替品として調達しようとしていることがうかがえる。  

2. ソルビトールの需要実態

 ソルビトールは、バラ科に属する果物や海藻類に比較的多く含まれているが、一般的には、でん粉を加水分解して得られるブドウ糖を還元するなどして製造される。砂糖よりも甘味度は低い(注)ものの、砂糖と比較して分子が小さいため素材への浸透性に優れ、低温・低湿条件下でも優れた親水性・保湿性を持ち、また、香りの発散を防ぐ保香性などの特性を有していることから、食品のほか、化粧品などの日用品や医療品などの用途で幅広く使用されている。

 財務省「貿易統計」によると、平成27年の輸入量は4万3512トン(前年比0.9%減)で、主な輸入先国はインドネシア、中国、タイ、ドイツで、この4か国で全体の9割以上を占める(図7)。なお、インドネシア産ソルビトール(HSコード:2905.44-000)は、22年7月に発効したインドネシアとの経済連携協定により、2万5000トンの関税割当数量が設定されているため、同国産は総輸入量の過半を占めている。

(注)甘味度は、ショ糖の甘味度を1とした場合の60%程度。

図7 ソルビトールの輸入量の推移

(1)使用状況
 
ソルビトールを使用していたのは52社のうち10社で、調査対象企業の19%を占めた。用途別の企業数(延べ数)は、「菓子類向け」が7社と最も多く、次いで「その他食品向け」3社、「乳製品向け」「調味料向け」がそれぞれ1社であった。なお、菓子類向けはキャンディ、焼き菓子、グミ、チョコレートなど、その他食品向けは佃煮、水産加工品などであった。

 ソルビトールを使用する理由として、「その他の理由」の4社を除いて「甘みが製品の特性に合っているため」3社が最も多く、次いで「コスト削減のため」「カロリー低減のため」がそれぞれ2社であった(図8)。その他の理由と回答した企業は、「保湿性・保水性の調整のため」「食品の品質保持のため」などを理由として挙げた。

図8 ソルビトールの使用理由(複数回答)

(2)調達状況
ア.仕入れ量

 平成27年における仕入れ量は、「100トン未満」が6社と最も多く、次いで「100〜299トン」「500トン以上」がそれぞれ1社であった(図9)。「500トン以上」と回答した企業の用途は、調味料向けであった。

 使用するソルビトールの原産国は、6社から回答が得られ、「国内産」が5社、「タイ産」が1社であった。

図9 ソルビトールの仕入れ量

イ.仕入れ量の動向
 平成26年と比較した平成27年の仕入れ量の動向は、回答が得られた9社すべてが「横ばい」であった(図10)。

図10 ソルビトールの仕入れ量の動向

ウ.今後の仕入れ見込み
 
今後の仕入れ見込みは、回答が得られた7社すべてが「横ばい」であった(図11)。

図11 ソルビトールの今後の仕入れ見込み

エ.仕入れ価格の動向
 1キログラム当たりの仕入れ価格は、3社から回答が得られ、「100〜119円」が1社、「140〜159円」が1社、「160〜179円」が1社であった。なお、「100〜119円」と回答した企業の使用するソルビトールの原産国は「タイ産」、「160〜179円」と回答した企業の使用するソルビトールの原産国は「国内産」であった。「140〜159円」と回答した企業からは仕入先(原産国)に関する回答が得られなかった。

 また、平成26年と比較した平成27年の仕入れ価格の動向は、回答が得られた7社すべてが「横ばい」であった。

(3)品質面および調達面の評価
 「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価において、品質面については、「満足」が4社、「普通」が6社であった。調達面については、「満足」が3社、「普通」が7社であった。

 品質面、調達面ともに不満を持っている企業がいないことが分かる。

(4)砂糖への切り替えの意向
 今後の砂糖への切り替えの意向は、回答が得られた8社すべてが「意向なし」であった。さらに、どのような条件であれば砂糖に切り替えるのか質問したところ、「製品の特性に合わないので切り替えは困難」が5社、「砂糖価格の低下」が1社であった。

おわりに

 今回の調査では、果糖またはソルビトールを使用する企業は、砂糖の代替品というより、全く別物の素材として扱っており、製品の特性やコンセプトに応じて使用する傾向が強く見られた。

 個別に見ると、果糖については、国内産の供給力の不安定さに対する不満の声があり、その結果として、他の甘味料(砂糖を除く)への切り替えの意向を示す動きが見られた。国内産の供給が今後も不安定な状況が続くのであれば、果糖全体の需要に影響が及ぶ可能性も考えられる。加えて、この結果から、果糖の代替となり得る甘味料が存在することも示唆された。

 ソルビトールについては、品質面および調達面の不満はなく、仕入量の推移や見込みに特段の変化は見られないことから、安定的な需要が確保されていると言える。なお、ソルビトールは、前述の通り、食品以外にも幅広く使用されているものの、本調査については、食品製造企業のみを対象に集計を行った点につき留意されたい。

 最後にお忙しい中、本調査にご協力いただいた企業の皆さまに、改めて厚く御礼申し上げます。
【参考文献】
伊藤汎、小林幹彦、早川幸男「光琳選書(7) 食品と甘味料」褐琳
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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