ホーム > 砂糖 > 各国の糖業事情報告 > インドネシアの砂糖事情
最終更新日:2016年9月9日
国内の砂糖産業を保護するため、通常の精製糖は加工食品および飲料業者にしか販売できず、家庭消費向けに小売りされる砂糖は白糖でなければならないと法律で定められている(写真3)。しかし、通常の精製糖の定義であるICUMSA色価45以下(R1)とは別に、同国特有の精製糖の規格(R2)が設けられており、この規格の小売りは合法となっている(表4)。このことから、インドネシア砂糖協会(AGI)によれば、同国の精製糖と白糖の用途別区分は実際には曖昧であるという。
(2)砂糖の輸入動向
砂糖の輸入量は、国内需要が増加し生産量を上回る状態が続いているため、300万トン台で推移している(表5)。
輸入量の9割以上は粗糖が占めており、そのほとんどが精製糖へ仕向けられるほか、1割程度はグルタミン酸ナトリウム製造用となる。
粗糖の輸入先国は、輸送コストの面で有利なタイが最も多く、次いで豪州、ブラジルなどが続く(図9)。また、タイは、インドネシア向けにICUMSA色価100以上の白糖を特別に製造、輸出している。
精製糖の輸入量は近年、精製糖工場の生産能力の向上と政府の輸入精製糖の使用用途に関する規制強化により、減少傾向にある。精製糖の輸入は、食品および飲料加工業者に限られており、加工食品、清涼飲料、調製粉乳などの原料に使用される。また、政府によって毎年初めに精製糖の輸入割当が設けられているが、Lebaran(断食明け大祭)に加工食品や清涼飲料の需要が特に高まるため、年の途中で輸入割当の調整が行われる。
(3)砂糖の価格動向
インドネシアでは、政府が基本的に年に一回、白糖の最低基準価格を公表する。この基準価格は、サトウキビ生産者の収入を確保し、サトウキビ生産を促進する手段として設けられており、政府系調査機関による生産コストなどのデータを基に決められている。前述の通り、サトウキビ取引価格を算出する式にも、白糖の最低基準価格が含まれるため、政府によって最低基準価格が引き上げられれば、基本的にはサトウキビの取引価格も上がる仕組みとなっている。ただし、白糖の最低基準価格はあくまで「基準価格」にすぎず、実際の白糖の売り渡し価格は、製糖企業が行う入札によって決まるため、白糖の落札価格が最低基準価格を下回ることもある(図10)。白糖の落札価格が最低基準価格を下回った場合、政府は、インドネシア精製糖協会(AGRI)や白糖の輸入許可を得ている製糖業者に差額分の負担を課している。
(2)エタノール
政府は2006年、同国のエネルギー消費のほぼ半分を占めている石油の輸入依存から脱却するため、「国家エネルギー政策」を打ち出した。本政策では、2025年までにエネルギー供給源に占める石油の割合を20%まで下げるとされた。また、再生可能エネルギーの使用を数パーセントから17%まで引き上げ、このうち5%はバイオ燃料によるものとしている。
生産されるエタノールの大半は、糖みつ由来であり、国内のエタノール工場は、燃料用エタノール2カ所、工業用エタノール18カ所で、全体の生産能力は約30万キロリットルと推定される。
近年、製糖企業の事業多角化の取り組みの一環として、エタノール生産が行われている。2007年から2015年にかけて、エタノール生産量は増加傾向にあったが(図12)、燃料用エタノールの割合は約1%と極めて低い。これは、2010年に国営石油会社PT Pertaminaと燃料用エタノール製造業者の間で取引決定方法について合意がなされなかったため、製造業者が燃料用エタノールの生産を中止し、工業用エタノールの生産などに転換したことが影響している。エネルギー鉱物資源省は、タイのエタノール価格計算式を基にPT Pertaminaの買取価格を算出していたが、インドネシアの燃料用エタノール生産コストに比べ低すぎたことが背景にある。
燃料用エタノールの生産は、2014年に再開され、生産量は4000〜5000キロリットルと極めて少量であるが、主にフィリピンと日本向けに輸出された。なお、エネルギー鉱物資源省は2025年までに、ガソリンへのバイオエタノール混合率を20%とする目標を掲げたが、燃料用エタノールの国内需要は低いため、砂糖産業への影響はさほどないものとされている。