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最終更新日:2016年10月11日
南大東島の農家1戸当たりのさとうきびの平均耕地面積は、県平均と比べ約6倍の約5ヘクタールと、圃場
が広大であることが特徴である。沖縄県全体で10ヘクタール以上の耕作面積を有するさとうきび農家42戸のうち、約半数の19戸が南大東島の農家である。
南大東島のさとうきび栽培は、早くから大規模経営に対応すべく機械化が進んでおり、現在ではハーベスタによる収穫率がほぼ100%と、県平均を大きく上回っている(表1)。
さらに、着実な単収の増加を図るため、補植にも力を入れている。バックホウで土壌に穴を開けなければ補植することができないほど島の土質は硬い粘土質であるが、その手間を惜しまず欠株の補植は必ず行っている。
また、苗の移植方法にも特徴があり、ビレットプランタでの植え付けが主流である南大東島において、サザンドリームでは、全茎式プランタにより植え付けを行っている。苗として利用できない梢頭部などがある程度混ざってしまうビレットプランタに対し、苗を適切な長さに裁断して植え付けできる全茎式プランタは、植え付け後の生育不良による苗のロスが減り、比較的発芽揃いも良いことから、単収向上に加え、品質向上、低コスト化の面でも効果を実感している。
サザンドリームでは、数年前から他の農家から作業を請け負うようになった。昨年からは、受託面積拡大の足掛かりとするため、常勤で従業員2名を雇っている。2名の従業員は、閑散期には補植などの管理作業、繁忙期には収穫したさとうきびの工場までの運搬作業に従事させることで、従業員の通年雇用が可能となり、地域の雇用にも貢献している。
今後、高齢化がさらに進み、遊休圃場の拡大も懸念されていることから、遊休圃場の活用と雇用の安定を図るという観点から、作業受託を増やしていきたいと考えている。
金川氏は、労働力不足に対応するためには、機械の導入というハード面の整備に加え、担い手確保に真剣に向き合わなければならないと考えており、「島では新たに農業を始めようと思っても親が畑を保有していなければ、農地を確保することは難しい。しかし、会社組織にすれば、就農希望者に対し、雇用を通じて営農に必要な技術やノウハウを習得させるための実践的な研修の場を提供することができる。やる気や興味・関心のある者が容易に農業に参入できる場所をつくりたい。外から新しい風を吹き込むことで、全く新しいアイデアも出てくるはず」と語る。
また、「島にはさとうきび以外の作物がほとんどない。裏を返せば、さとうきび生産によって私たちの生活・地域が守られ、維持されている。今があるのはさとうきびのおかげ」と語り、次はわれわれがさとうきび生産を守り、地域を支える番であるとし、ゼロから法人設立に携わってきた経験を生かし、島の内外で自身の体験談を踏まえた講演を行うなど、新たに法人設立を目指す農家を支援している。現在は外国人研修生の受け入れも積極的に行っており、「今後は、農業関係の大学などこれからの農業を支えていく若年層にも情報を発信し、気概のある人材を育成していきたい」と、意気込みを見せる。
さらに同氏は、平成27年度に沖縄県さとうきび生産法人連絡協議会(以下「協議会」という)の会長に就任するとともに、サザンドリームを含む南大東島の生産法人を会員とする南大東支部を立ち上げた。これには、島のさとうきび生産を強固にしていくため、島の風土や風習、事情などに合わせたきめ細かな活動を推進していかなければならないという決意がうかがわれる。
そして、島の大きな課題である担い手不足を解消するためには、これからのさとうきび生産は個々の経営を組織化する必要があるとし、今後も法人化や機械・農作業の共同化の推進に精力的に取り組む意向を示した。
南大東島の製糖工場である大東糖業株式会社も、サザンドリームの取り組みに期待を寄せている。同社の担当者は、「南大東島のさとうきび生産は圃場が広大で株出しが多く、単収が低いと指摘されることもあるが、サザンドリームは、10ヘクタール以上の圃場を経営していても、管理作業などの基本をしっかり行えば、単収は維持できるというお手本のような法人である。また、島の課題である高齢化による労働力不足を解消する受託組織としての役割にも多いに期待している」と話す。