2015/16年度の砂糖生産量はかなり減少、輸出量は前年度並みの見込み
2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)は、コメからの転作が前年度ほど進まず、サトウキビ収穫面積は141万2000ヘクタール(前年度比0.6%増)となるものの、干ばつの影響による単収の低下のため、生産量は9405万トン(同10.9%減)と、かなりの減少が見込まれる(
表6)。
また、砂糖生産量も、サトウキビ生育時期の干ばつと成熟時期の過度な降雨によって産糖量の減少が見られることから、1003万トン(同13.4%減)とかなりの減少が見込まれる。
タイ製糖協会の5月時点の生産実績報告によると、2015/16年度のサトウキビ圧搾量は9405万トン(同11.2%減)、砂糖生産量は978万トン(同13.5%減)と、ともにかなり減少した。このため、サトウキビの圧搾は、前年度よりも約1カ月早い4月10日をもって終了した。
砂糖輸出量は、インドネシアへの粗糖の輸出が好調であるものの、ミャンマーなど一部の国への精製糖輸出の低迷などにより、808万トン(同0.1%増)と前年度並みにとどまると見込まれる。
ただし、サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)
(注1)によれば、国際砂糖価格の上昇につれ、カンボジアやラオス、ミャンマー、ベトナムなどへの砂糖の流出による国内供給不足が懸念されている。このため、OCSBは7月、今年2月に250万トンへの引き上げを承認した国内供給向け砂糖(A割当)の販売割当数量
(注2)を260万トンまでさらに10万トン引き上げることとした。
2016/17年度の砂糖生産量はやや減少、輸出量はかなり減少の見込み
2016/17年度は、キャッサバなどの他作物へ転換を図る生産者も見られることから、サトウキビ収穫面積は140万8000ヘクタール(前年度比0.2%減)、長引く干ばつの影響により特に新植サトウキビの生育不良が見られるものの単収が向上することから、生産量は1億436万トン(同11.0%増)とかなりの増加が予想されている。
砂糖生産量は、製糖歩留まりの低下が予想されるため、970万トン(同3.2%減)とやや減少が予想され、それに伴い、輸出量も748万トン(同7.4%減)とかなりの減少が予想されている。
一方、OCSBは、2016/17年度の生産見通しについて、2014年から続いている干ばつ被害のさらなる拡大や他作物への転換により、サトウキビ生産量は9000万トンまで減少し、これにより、砂糖生産量は940万トンと、2010/11年度以来の低水準になると予想している。
現地報道によると、OCSBは9月上旬、製糖能力の増強とともに、バイオプラスチックなどの生産の原料となる糖みつの供給拡大を目的に、新たに25の製糖工場の建設を承認した。
また、現地報道によると、OCSBは、ブラジル政府より世界貿易機関(WTO)に提訴されたこと
(注3)を受けて、現行の砂糖政策の改革案を策定し、数週間以内に閣議に提出する考えであることが9月中旬に報じられた。この改革案では、砂糖産業全体の収益をサトウキビ生産者と製糖業者で7:3の割合で分配する収益分配方式や販売割当、砂糖の国内販売価格の設定の廃止が検討されているという。
販売割当が廃止となれば、砂糖の国内の供給不足が懸念されることから、OCSBは国内供給確保のための代替案を検討しているとし、関係者らは販売割当廃止による流通への影響は限定的との見方をしている。
(注1)タイのサトウキビおよび砂糖関連政策の執行機関である3省(工業省(製糖関係)、農業協同組合省(原料作物関係)、商務省(砂糖の売買関係))とサトウキビ生産者および製糖企業の代表で構成され、工業省内に設置された「サトウキビ・砂糖委員会(TCSB)」の事務局。
(注2)タイ産砂糖は、A割当と呼ばれる国内供給向けとB割当およびC割当と呼ばれる輸出向けなどの販売割当制度が行われている。
(注3)ブラジル政府は、タイ政府が、国際砂糖価格の低迷時などに製糖企業を通じて生産者に支払われる補てん金や、砂糖の販売割当制度および国内販売価格の設定は、間接的な輸出補助金に当たり国際貿易協定に違反しているとして、4月初旬にWTOに提訴していた。