3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2016年11月時点予測)
最終更新日:2016年12月9日
3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2016年11月時点予測)
2016年12月
2015/16年度の砂糖生産量はやや減少、輸出量はわずかに増加の見込み
英国の調査会社Agra CEAS Consulting(農産物の需給などを調査する英国の大手民間調査会社)の2016年11月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2015/16砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、900万ヘクタール(前年度比0.1%減)と前年度並みと見込まれ、単収の向上により、生産量は6億6559万トン(同4.9%増)とやや増加が見込まれる(表2)。しかし、エルニーニョ現象の影響とされる過度な降雨により産糖量が減少していることから、砂糖生産量は3519万トン(粗糖換算(以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算)、同5.7%減)とやや減少が見込まれる。
世界の主要生産国で減産が見込まれる中、砂糖需要は高まっており、国際砂糖価格が上昇傾向にあることなどから、輸出量は2512万トン(同1.9%増)と、わずかな増加が見込まれる。
2016/17年度の砂糖生産量、輸出量はともにかなり増加の見込み
2016/17年度のサトウキビ収穫面積は、収穫期の天候不順などにより前年度に収穫しなかったものも含め、959万ヘクタール(前年度比6.6%増)とかなりの増加が見込まれるものの、単収の低下が見込まれることから、生産量は6億8195万トン(同2.5%増)と、わずかな増加にとどまると見込まれる。
一方、国際砂糖価格の上昇により、製糖企業がサトウキビの砂糖への仕向け割合を増やしていることや製糖歩留まりが向上していることなどから、砂糖生産量は、3960万トン(同12.5%増)とかなりの増加が見込まれている。さらに、連邦政府が、エタノール販売に係る社会負担税(エタノール1リットル当たり0.12レアル(4円(10月末日TTS:1レアル=33円)))を2017年1月より再導入する方針であることから、今後、製糖企業がサトウキビの砂糖への仕向け割合をさらに増加させると、砂糖生産量は、上方修正される可能性も考えられる。砂糖の増産に伴い、輸出量も、2760万トン(同9.9%増)とかなりの増加が見込まれる。
他方、ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)
(注1)が8月中旬に公表したサトウキビなどの2016/17年度生産見通しによると、サトウキビ栽培面積は897万ヘクタール(同3.7%増)とやや増加し、サトウキビ生産量も6億8477万トン(同2.9%増)と、わずかな増加が見込まれている。これには、収穫期の天候不順などにより前年度に収穫しなかった分も考慮されていると考えられる。また、砂糖生産量は3996万トン(同19.3%増)と大幅に増加し、過去最高と見込まれるのに対し、エタノール生産量は2787万キロリットル(同8.5%減)と、かなりの減少が見込まれる。
また、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)が発表した2016年4月〜10月の生産実績報告によると、同国中南部地域のサトウキビ圧搾量は、5億3731万トン(前年同期比4.2%増)とやや増加し、砂糖生産量も3207万トン(同16.6%増)と大幅に増加した。これは、サトウキビ圧搾量の増加に加え、サトウキビ1トン当たりの産糖量が59.7キログラム(同11.9%増)とかなり増加していることや、企業がサトウキビの砂糖への仕向け割合を増やしているためとみられる。なお、同報告によると、同期間のエタノール生産量は、2257万キロリットル(同4.2%減)とやや減少となった。
一方、同期間の輸出量も含めたエタノールの販売量は、1617万キロリットル(同9.4%減)となった。このうち、含水エタノール(注2)の国内販売量は、924万キロリットル(同16.2%減)と、エタノールのガソリンに対する価格優位性が低下したことなどから、大幅に減少した。
4月にブラジル政府が、タイの砂糖政策における間接的な補助金は国際協定に違反するとして、世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、ブラジルとタイの二国間協議が11月3日に行われ、タイ政府より砂糖政策の改革案が提出された。しかし、この改革案が施行され、当該補助金が廃止されるまでには時間を要することから、UNICAは、ブラジル政府に対し2016年内のWTOパネルの設置を要望している。
また、現地報道によると、中国政府が9月から実施しているブラジル産砂糖のダンピング輸出に係る事実確認調査に対し、UNICAは10月中旬、ブラジルから中国への砂糖輸出は適正に行われており、万が一、セーフガード関税が導入されるようなことがあれば不当であると主張する声明を発表した。
(注1)主要作物の生産状況報告や予測などを行っているブラジル農務省直轄の機関。
(注2)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
2015/16年度の砂糖生産量はかなり減少、輸出量は大幅増の見込み
2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は506万ヘクタール(前年度比0.1%減)と前年度並みと見込まれるものの、生産量は3億5889万トン(同0.9%減)と、干ばつの影響もありわずかな減少が見込まれる(表3)。産糖量の減少も見られることから、砂糖生産量は2728万トン(同10.9%減)と、かなりの減少が見込まれる。
砂糖輸出量は、400万トン(同53.4%増)と大幅な増加が見込まれている。この背景には、中央政府が6月中旬、国内供給の確保および高騰している国内砂糖価格の統制のため、砂糖の輸出関税(20%)の導入を決定したものの、7月上旬に、粗糖を輸入して6カ月以内に再輸出する精製糖を当該輸出関税の対象外とすると発表したことがある。なお、中央政府は同月下旬に、2500トンのオーガニックシュガーも対象外とすると発表した。
2016/17年度の砂糖生産量はかなり減少、輸出量は大幅減の見込み
2016/17年度は、サトウキビ収穫面積は474万ヘクタール(前年度比6.2%減)、生産量は3億3193万トン(同7.5%減)と、ともにかなりの減少が見込まれている。このため、砂糖生産量も、2450万トン(同10.2%減)とかなりの減少が見込まれている。
インド砂糖製造協会(ISMA)が9月中旬に公表した2016/17年度の生産予測によると、サトウキビ栽培面積は500万ヘクタール(同5.4%減)とやや減少し、砂糖生産量は精製糖換算で2337万トン(同6.9%減)とかなり減少する見込みである。これは、主要生産地であるウッタルプラデシュ州やタミルナド州でサトウキビ栽培面積が拡大し、砂糖生産量の増加が見込まれる一方、生育時期の降雨不足など昨年の干ばつの影響を受け、マハラシュトラ州の砂糖生産量が627万トン(同25.5%減)と大幅に減少すると見込まれるためである(図3)。この予測の通りとなれば、最大の生産州であったマハラシュトラ州は、ウッタルプラデシュ州に次ぐ第2位に転ずることとなる。
また、中央政府によって実施されていた製糖企業に対する砂糖在庫量の上限設定(注)は10月26日、閣議によって2017年4月まで延長されることが承認された。砂糖の減産により2015年末から国内の砂糖価格が高騰しており、中央政府は、国内市場での砂糖の流通量を増やし、価格の安定化を図ることとしている。そのため、砂糖輸出量は、130万トン(同67.5%減)と大幅な減少が見込まれている。
現地報道によると、中央政府は、砂糖の輸入関税の撤廃もしくは引き下げを検討している。ただし、砂糖の減産による国内供給の不足分を輸入砂糖で充当しつつも、輸入による国内価格への影響を最小限にとどめるよう慎重な検討がされている。
(注)中央政府は、貿易業者に限定していた砂糖在庫量の上限設定を製糖企業にも適用することとし、当初の適用期間は、砂糖の需要が高まるディワリ(ヒンズー教における新年を祝う最大のお祭り)の祭事前の9月から10月までとしていた。各製糖企業が保持できる在庫量は、9月末時点では2015/16年度の砂糖生産量の37%、10月末時点では同24%を上限と設定していた。
2015/16年度の砂糖生産量は大幅減、輸入量はかなり増加の見込み
2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)は、サトウキビについては、砂糖の国際価格が低水準にあったこともあり、生産者が果物や野菜などの他作物へ転換する動きが見られたことや、労働費の上昇により新植が進まなかったことから、収穫面積は166万ヘクタール(前年度比5.7%減)とやや減少が見込まれ、生産量は1億1730万トン(同6.6%減)と、かなりの減少が見込まれる(表4)。
また、てん菜についても、最大生産地である新疆ウイグル自治区の減産により、収穫面積は14万ヘクタール(同2.6%減)、生産量は734万トン(同8.3%減)と、ともに減少が見込まれる。天候不順からサトウキビおよびてん菜の産糖量も減少していることが響き、砂糖生産量は、946万トン(同17.6%減)と大幅な減少が見込まれる。
中国砂糖協会(CSA)によると、2015/16年度の製糖は6月で終了し、砂糖生産量は、精製糖換算で870万トン(同17.6%減)と前年度を大幅に下回った(図4)。これは、てん菜糖は85万トン(同15.2%増)とかなり増加したものの、甘しゃ糖が785万トン(同20.0%減)と大幅に減少したことによる。サトウキビの最大生産地である広西チワン族自治区は、1月に降霜、降雪に見舞われたため、収穫が遅れて産糖量が減少したことから、511万トン(同19.4%減)と大幅に減少した。
また、砂糖輸入量は、613万トン(同14.4%増)とかなりの増加が見込まれる。これと併せて、ミャンマーやカンボジアなどからの「非公式な」砂糖の流入の急増が、国内生産量の減少分を補っていると推測される。
2016/17年度の砂糖生産量はかなり増加、輸入量は大幅減の見込み
2016/17年度は、サトウキビ収穫面積が183万ヘクタール(前年度比10.0%増)、生産量が1億2652万トン(同7.9%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている。これは、広西チワン族自治区や海南省において栽培面積が増加する見込みに加えて、生育状況が良好なことが要因である。
また、てん菜収穫面積は、15万ヘクタール(同10.0%増)とかなり増加し、生産量は771万トン(同5.0%増)とやや増加と予想されている。これは、主要生産地である内モンゴル自治区の生産量が増加していることなどが要因である。これらにより、砂糖生産量は、1050万トン(同11.0%増)とかなりの増加が見込まれている。
他方、CSAが先ごろ発表した2016/17年度の砂糖生産量は、精製糖換算で、甘しゃ糖が896万トン(同14.1%増)、てん菜糖が104万トン(同22.4%増)と、ともに増加が見込まれており、全体で1000万トン(同15.1%増)とかなりの増加が見込まれている。特に、最大生産地域である広西チワン族自治区の甘しゃ糖生産量は600万トン(同17.4%増)、てん菜糖では、内モンゴル自治区の生産量が47万トン(同65.5%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。
砂糖の増産に加え、中国国家発展改革委員会(NDRC)(注)が9月、年内に備蓄砂糖35万トンの国内市場への放出を発表し、政府による備蓄在庫の国内企業への売り渡しが11月初旬に開始されたことなどから、砂糖輸入量は、390万トン(同36.3%減)と大幅な減少が見込まれている。
また、国外からの安価な砂糖の流入により、国内の砂糖産業に影響が生じていることから、政府は9月、砂糖の輸出国によるダンピングの疑いについて調査を開始した。輸入量が急増した2011年以降を対象とし、粗糖の上位輸入先国であるブラジルや豪州および精製糖の主な輸入先国である韓国などが対象国として挙げられている。
(注)財政金融政策の策定や公共事業の認可などを行う政府機関。砂糖産業においては、砂糖の国家備蓄計画の総合調整および備蓄放出の提言、輸出入総量計画の作成を行う。
2015/16年度の砂糖生産量、輸入量はともに大幅減の見込み
2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)のてん菜収穫面積は、播種時の天候に恵まれたものの、前年度末の在庫量の増加により砂糖価格の下落が懸念されたことから、144万ヘクタール(前年度比12.0%減)とかなりの減少が見込まれる(表5)。また、夏の熱波の影響によるポーランドやドイツなどの減産見通しにより、生産量は1億516万トン(同19.7%減)と見込まれる。この結果、砂糖生産量は1475万トン(同23.6%減)と大幅な減少が見込まれる。
前年度の増産による在庫量の増加から、砂糖輸入量は、285万トン(同17.7%減)と大幅な減少が見込まれる。
2016/17年度の砂糖生産量、輸入量はともに大幅増の見込み
2016/17年度は、てん菜収穫面積が159万ヘクタール(前年度比10.8%増)、生産量は1億1218万トン(同6.7%増)と、ともにかなりの増加が予想されている。2017年10月以降の生産割当制度の廃止を目前に、生産量上位国であるフランスやドイツでは、在庫増への懸念から栽培面積の拡大に慎重になっているとみられる一方、ポーランドやオランダなどではてん菜栽培面積を前年度から約2割増加させるなど、積極的に増産する国も見られている。また、てん菜の生育状況に恵まれ、産糖量の増加が見込まれることなどから、砂糖生産量は、1752万トン(同18.8%増)と大幅な増加が予想されている。
砂糖輸入量は、特恵関税で輸入した砂糖を再輸出する動きが見られることから、339万トン(同19.1%増)と大幅な増加が予想されている。
一方、欧州委員会が9月下旬に公表した2016/17年度の生産予測によると、てん菜作付面積は141万ヘクタール(同7.6%増)、砂糖生産量も1666万トン(同11.6%増)と、ともにかなりの増加が予想されている。
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