また、サトウキビ生育時期の干ばつと成熟時期の過度な降雨によって産糖量の減少が見られることから、砂糖生産量も1003万トン(同13.4%減)と、かなりの減少が見込まれる。
タイ製糖協会の生産実績報告によると、2015/16年度のサトウキビ圧搾は前年度より約1カ月早い4月10日をもって終了し、圧搾量は9405万トン(同11.2%減)とかなり減少した。そのため、砂糖生産量も978万トン(同13.5%減)とかなり減少した。
砂糖輸出量は、インドネシアへの粗糖輸出が好調であるものの、ミャンマーなど一部の国への精製糖輸出の低迷などにより、781万トン(同3.3%減)とやや減少が見込まれる。
2016/17年度の砂糖生産量はやや減少、輸出量はかなり減少の見込み
2016/17年度は、キャッサバなどの他作物へ転換を図る生産者も見られることから、サトウキビ収穫面積は140万8000ヘクタール(前年度比0.2%減)と前年並みとなる一方、長引く干ばつの影響により特に新植サトウキビの生育不良が見られるものの前年度ほど単収は低下しないと見込まれることから、生産量は1億436万トン(同11.0%増)と、かなりの増加が見込まれる。
しかし、干ばつの影響によるサトウキビの生育不良のため、例年より約1カ月遅れの12月から収穫が開始されることから、製糖歩留まりの低下が予想され、砂糖生産量は、970万トン(同3.2%減)とやや減少が見込まれている。それに伴い、輸出量も729万トン(同6.6%減)と、かなりの減少が見込まれる。
一方、サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)(注1)は10月上旬、2014年から続いている干ばつの影響によりサトウキビの枯死が引き起こされていることなどから、2016/17年度のサトウキビ生産量は9100万トン、砂糖生産量は930万〜940万トンとの予測を発表した。
また、OCSBは9月、製糖能力の増強とともに、製糖副産物を利用したバイオプラスチック産業などの振興を図るため、環境影響評価の取得と5年以内の着工を条件に、25の製糖工場の新設と17の製糖工場の増設を承認した。
ブラジル政府により4月にWTOに提訴されている問題(注2)で、タイ政府は11月3日、ブラジルとの二国間協議の場に、10月中旬に閣議承認された砂糖政策の改革案を提出した。この改革案には、砂糖産業全体の収益をサトウキビ生産者と製糖業者で7:3の割合で分配する収益分配方式や販売割当(注3)を廃止するとともに、政府が設定している国内の砂糖価格を変動制に移行することが盛り込まれている。現地報道によると、現在、1キログラム当たり23.5バーツ(72円:10月末日TTS:1バーツ=3.07円)に固定されている砂糖の小売価格には、変動幅が同1バーツから2バーツ(3〜6円)となるよう天井価格が設けられるという。タイ政府は、この改革案の来年度からの施行を目指し調整を行っている。
(注1)タイのサトウキビおよび砂糖関連政策の執行機関である3省(工業省(製糖関係)、農業協同組合省(原料作物関係)、商務省(砂糖の売買関係))とサトウキビ生産者および製糖企業の代表で構成され、工業省内に設置された「サトウキビ・砂糖委員会(TCSB)」の事務局。
(注2)ブラジル政府は、タイ政府が、国際砂糖価格の低迷時などに製糖企業を通じて生産者に支払われる補てん金や、砂糖の販売割当制度および国内販売価格の設定は、間接的な輸出補助金に当たり国際貿易協定に違反しているとして、4月初旬にWTOに提訴していた。
(注3)タイ産砂糖は、A割当と呼ばれる国内供給向けとB割当およびC割当と呼ばれる輸出向けなどの販売割当制度が行われている。